24.捜索
ギルドの診療所で、シーアは泣きじゃくっていた。
ハニュとリマが居なくなってしまったのだ。狙われていたのは自分ではなくハニュ達だったと理解した時、シーアの目の前は真っ暗になった。
「従魔だけを狙ってくるとは、考えていなかったな。大丈夫だ、シーアちゃんきっとハニュ達は無事だ」
ゴードンがシーアを慰めるが、シーアの涙は止まらない。
スカーレットの面々は困惑していた。何故従魔だけが攫われたのか。従魔を奪っても聖女本人が居なければ意味がない。シーア以外はハニュが治癒魔法を使えることを知らないので、犯人の目的がわからなかった。
従魔を人質に取ってシーアを脅迫するつもりなのかとも考えたが、その割には犯人から接触がない。
だとしたら従魔を殺して、シーアの聖女としての価値を無くするつもりかと、最悪の展開を考える。しかし、そんなことをする理由がわからない。シーア本人か冒険所ギルドに恨みがある者の犯行だろうかと首をかしげていた。
「シーアちゃん、落ち着いて。ハニュとリマを探そう。従魔契約していればどれだけ遠くに居ようと大体の場所がわかるはずだ。心を落ち着けて、探るんだ」
リンデルの言葉にシーアは希望を見出した。従魔契約とはそういうものだ。ただシーアは普段意識して二匹の気配を探ろうとしたことは無いので忘れていた。
涙を拭ってハニュとリマを探すことに集中する。するとかすかにハニュとリマの気配が感じられた。
「生きてる……!よかった……」
それを聞いてみんな安心した。ひとまず最悪の事態は免れた。
「後は場所を特定して乗り込もう。ギルド長に応援を要請してくる!」
ゴードンがギルド長の元に駆けてゆく。シーアの従魔が誘拐されたとなれば、協力してくれる冒険者は多いだろう。シーアに助けられた冒険者は多くいるのだから。
シーアはさらに集中して気配を探る。するとハニュの方から、応答があったように感じた。大丈夫と語り掛けてくれているような、そんな気配だ。
やがてゴードンがギルド長と複数の冒険者を引き連れて戻ってくる。ギルド長はシーアの頭を撫でながら言った。
「誘拐犯の元に乗り込む前に、街の衛兵に協力を要請して。私の名前で書状を認めておくわ。こうしなければこちらが悪者にされてしまう可能性があるから、絶対ね」
ゴードンが書状を入れた胸元をとんと叩くと、もちろんと返す。
シーアと十数人の冒険者達が連れ立って冒険者ギルドを出ると、みんなの視線を浴びた。中には声をかけてくる人もいて、従魔が誘拐されたと聞くと慌てて他の住民にそれを伝える。
誘拐事件はこうして民衆にあっという間に伝わった。
まず街の衛兵の本拠地にたどり着くと、ゴードンは門番にギルド長からの書状を出して協力を要請した。
門番は慌てて上官を呼ぶと、こちらでお待ちくださいと声をかける。
しかし何十分経っても上官はやってこないし、中に通す許可も下りない。次第に不機嫌になってゆく冒険者達に、門番の顔は蒼白になっていった。
衛兵の詰所の前に立ち尽くす殺気立った冒険者という様子に、近くに住む民衆もだんだんと集まって来た。
民衆は好き勝手噂する。
「なんでもギルドの聖女様の従魔が誘拐されたんだって」
「ここに居るってことは、もしかして犯人は衛兵なのかしら?」
「見ろよ、可哀そうに、聖女様泣いてるじゃないか」
「まさか衛兵が協力しないなんてないよな」
民衆の不穏な囁きに、門番の顔がさらに蒼白になった。衛兵は民衆に疑念を抱かれたらやっていけない。実際衛兵のミスで事件が起きた際には見回りの時に民衆にぐちぐちと言われたり、悪ければ石を投げられたりするのである。衛兵でも特に実際街の見回りをする下のものが被害を受ける。
門番は賢明だった。速やかに他の上官を呼ぶようにと仲間に伝える。
二時間は待っただろうか。シーアは不安で胸が張り裂けそうだった。
慌ててやって来たのは衛兵団の中でも上の下くらいの位置にいる兵だった。一応部隊長らしい。
冒険者ギルド長直々の依頼状を持った相手に、散々待たせた上に団長クラスではなくそれ以外の兵を寄こしたのだ。団長が建物の中にいるのにもかかわらずである。
完全に舐められている。
幸い話を聞きに来た兵は誠実だった。シーアの従魔を救うために隊を動かしてくれるという。
はっきり言って冒険者達は怒り心頭だったが、民衆の噂に関してはもう手遅れなので、今は責めたてるよりハニュ達の救助を優先することにした。
衛兵達を連れて、シーアはハニュ達の気配を探った。たどり着いたのは貴族街の中の大きな屋敷だった。




