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落ちこぼれ聖女と転生スライムさん  作者: はにか えむ


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15.後片付け

 食事が終わると、急ごしらえで作られた救護場の後片付けに参加した。

「シーアちゃん、もっと休んでても良かったのに」

 ロキシーさんがそう言ってくれたが、シーアは手伝いたかった。シーアはまだ新米だ。覚えなければいけない仕事が沢山ある。

「ギルド長はどうしたんですか?」

 シーアが問うと、ロキシーさんが何とも言えない顔をする。

「軍の高官に会いに行ったわ。来るのが遅いってクレームつけにね。今回、軍が本格的に参戦する前にギルドの冒険者が狂化したオーガを倒したから強気の抗議ができるって喜んでたわね。損害を補填させる気でしょう」

 そんなものなのかと、シーアはよくわからないまま頷いた。

 

 ギルドは何かあった時のために軍と細かな契約を結んでいる。スタンピード発生時、軍の出動が遅れることは契約違反となるのだ。本来ならスタンピードの対処は国の仕事だからだ。冒険者ギルドは協力しているだけに過ぎない。だからギルド側に発生した分の損害を補填させることができる。

 昔どこかの国が軍の損害をおさえるため、わざと遅れて出動して冒険者に対処させようとしたことが問題となり交わすことになった契約である。

 ギルド長は女性ながらやり手だった。難癖をつけて国から搾り取る気満々であった。

 

 そんな小難しいことは知らないシーアは、救護場の片づけに奔走していた。冒険者ギルドと救護場を何往復かして持ってきた資材を戻してゆく。ハニュはリマの上でお休みモードだ。魔力を使いすぎて相当眠いらしい。大きさはまだ戻らなかった。

 シーアがだいぶ片付いた救護場に戻ると、リンデルが目を覚ましていた。

「あ、目が覚めましたか?体の具合はどうです?」

「君は……聖女様ですか。少しだるいですが大丈夫です」

「左腕は動きますか?」

 リンデルは左腕を動かす。まだ痛みがあるのか少し顔をしかめたが、動かせはするようだ。

「完治にはあと数回治療が必要だと思いますので、治るまでギルド内の診療所に居てくださいね。あと、ゴードンさんとエステラさんが心配してましたよ。呼んできましょうか?」

「……頼めますか?」

 シーアはゴードン達を探した。まだ炊き出しの手伝いをしていたので連れて来る。

「リンデル!良かった。目が覚めたな」

「全く!無茶をするんだから、あまり心配させないで!」

 三人の掛け合いにシーアはそっとその場を離れようとしたが、その前にゴードンに捕まってしまう。

「シーアちゃんが居なかったら左腕が無くなってたんだぞ、反省しろ」

「え?……ありがとう。君が治してくれたのか」

 リンデルは気を失っていてシーアの治療風景を覚えていない。左腕が無くなっていたというのはゴードンの誇張だと思った。だって、それにしては左腕が動いているからだ。

 それでも治してくれた人物が誰なのかわかって礼を言う。

「どういたしまして、動けるようになって良かったです」

「リンデル、お前信じてないだろう。本当にシーアちゃんが居なかったら左腕は切り落とすしかなかったんだ。あとで他の冒険者にも聞いてみろ。シーアちゃんはお前と並んで今回のスタンピードの英雄だ」

 リンデルは真っ赤な髪を右腕でかきあげて半信半疑な顔をした。そりゃあどう見ても十二歳くらいの子供が英雄と言われてもピンとこないだろう。

 シーアは苦笑いだ。

 

「ぷぴぃ……」

「あ、ハニュ、起きた?ちょっとだけ手伝ってもらってもいい?もう一度この人の診察がしたいの」

 シーアはやはり少し心配だった。あれだけ大怪我だったのだ。今日の内にもう一度治癒魔法をかけておきたかった。

 ハニュに嫌がるそぶりは無い。むしろリンデルが目覚めて嬉しそうだ。シーアはハニュを抱き上げるとリンデルの腕に触れた。

「ちょっと状態を見ますからじっとしててくださいね」

 リンデルは触れられたことに驚いていたが、言われた通りじっとしていた。シーアはハニュに促されるまま魔力を流して状態を確かめる。そしてハニュに促されるまま治癒魔法をかけた。

 強めにかけたのだろう。ハニュの魔力がごっそり減るのを感じた。今日一日はずっと省魔力で命をつなぐためだけの治療が多かったので、シーアは少し驚いた。でも治療法によってここまで消費魔力が変わるのかと感心していた。

「痛みが、消えた?」

 リンデルは目を見開いて驚いていた。ゴードンがリンデルの頭を乱暴に撫でる。

「だから言っただろう。シーアちゃんは最上級の聖女だ。感謝しろよ。本当なら今頃痛みでのたうち回ってる頃だぞ」

 リンデルはゴードンの言うことがあながち嘘でもないのかもしれないと思い始めた。そもそもスライムを従魔にしている時点でその魔力量は規格外だろう。スライムが内包する魔力は人間など足元にも及ばないくらい膨大だ。魔力生物と呼ばれているくらいなのだから。

 

「これ、お礼にやるよ。ハニュに飲ませてやんな」

 ゴードンがシーアに小瓶を差し出す。魔力回復薬だ。とても高価な代物である。

「いいんですか?」

「そのかわり、明日も治療の続きを頼むよ。それがあればハニュの魔力も明日までに回復するだろう」

「ありがとうございます!」

 シーアはハニュに魔力回復薬を飲ませる。美味しくないのだろう、少々不満そうな顔をされた。シーアは懐に忍ばせていたお菓子をハニュの口に入れてやる。すると嬉しそうに食べたのち、また眠ってしまった。小さくなっていた体が、さっきより心なしか大きくなった気がする。

 シーアはゴードン達にもう一度お礼を言って仕事に戻った。

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