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落ちこぼれ聖女と転生スライムさん  作者: はにか えむ


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13/35

13.大聖女の再来

 冒険者に背負われて運ばれてきた怪我人は若い男の様だった。簡単な止血だけがなされた左腕は、肩からだらりと垂れ下がっていた。よほど強い衝撃を受けたのだろう左腕の上部からは折れた骨が突き出していた。

「一番腕のいい聖女は誰だ!助けてくれ!」

 周囲の聖女や補佐役は一斉にシーアを見た。それで察したのだろう冒険者はシーアの前に怪我人を寝かせる。シーアは突然の出来事に狼狽した。

「ぷぴぃ!」

 しかしハニュは落ち着いている。シーアはハニュの声に我に返ると治療を開始した。

 補佐役は腕を切り落とすための鉈を持ってこようとした。助かるには左腕を犠牲にするしかないと考えたのだろう。しかしハニュはそんなものいらないと治療を開始しようとする。

 

 ハニュは止痛と止血の魔法をシーアに使わせると、患者の肩に魔力を流して折れた骨の一つ一つを確かめていた。シーアはハニュの望んだとおり魔法を発動する。風魔法で患部を切り裂いたときは、さすがのシーアもハニュの正気を疑った。周囲で見ていた面々も驚いているようだったが、みんな真剣なシーアの表情に口を挟めずにいた。

 シーアはハニュの望むがままに、切り裂いた患部から折れた骨を元の位置に戻す。そして骨に治癒魔法を発動した。すると折れていた骨は何とかくっついた。後は傷口を塞ぐだけだ。シーアは魔法を発動する度、神経がどっと磨り減るのを感じていた。ハニュはどれだけ繊細な魔法を構築しているのか。

 傷口を塞いで一息つくと、シーアはハニュがずっと患者の体に魔力を流し続けていたことに気が付いた。それが失われた血液の代わりだと気づくのには長い時間がかかった。魔力が一時的とはいえ血液の代わりになるなんて思っていなかったのだ。

 傷口を塞いだ後も、ハニュはしばらく患者に治癒魔法をかけ続けるようシーアに要求した。恐らく血を流しすぎたからだろう。顔色がよくなるまでは治療を続けなければならないようだ。完全に元通りに動けるまでは、数回の追加治療が必要だろうが、ひとまず危機は脱した。シーアはホッとした。

 

 集中して治癒魔法を使うシーアの周りには、治癒魔法を使った時特有の光が舞っていた。

 スライムと狼を従えて治療を行うシーアの姿は伝説の大聖女『シーラ様』を彷彿とさせる。治療に夢中だったシーアは気づかなかったが、いつのまにかその場にいた冒険者達は皆シーアを見ていた。

 シーアに助けられた冒険者は、シーアの治癒魔法が他とは一線を画すものであることがわかっていた。

 なんせ重症だったはずなのに、完治はしないまでも動けているし思考もはっきりしているのだ。普通はこんなに早く治らない。

 なぜ今までこんなに優れた聖女が噂にならなかったのか、そしてなぜ冒険者ギルドに就職したのか。皆疑問に思った。

 

 何時間かかっただろう。次第に患者の顔色がよくなって、シーアは魔法の発動をやめた。すると、患者を運んできた冒険者がシーアに声をかけてくる。

「リンデルは大丈夫なのか?」

 リンデルというのは患者の名前だろう。

「完全に治るにはあと数回治療が必要だと思います。ひとまず今は眠っているだけですので大丈夫ですよ」

「良かった。左腕はどうなる?動かせるようになるだろうか?」

 ハニュが大丈夫だというように震える。

「はい、元通りになるかはわかりませんが、動かせると思います」

「そうか、リンデルは自分の左腕を犠牲にして狂化したオーガを倒し、スタンピードを止めた英雄だ。腕を切り落とす羽目にならなくて良かったよ。君のおかげだ」

 シーアはそこで気が付いた。いつの間にか防壁の外は静かになっている。新しい患者も来ていないようだ。狂化したオーガにあてられていた魔物達は、討伐されたか森に帰ったのだろう。

「そっか、スタンピードは終わったんですね。良かった」

 シーアが笑うと冒険者は右手を差し出してきた。

「俺はゴードンという。リンデルと『スカーレット』という冒険者パーティーを組んでいるBランク冒険者だ。聖女殿の名前を教えてもらえるか?」

 シーアは慌てて血にまみれた手を洗うと、握手をした。

「私はシーアです。今日から冒険者ギルドの専属聖女になりました。こっちはハニュとリマ、私の従魔です。昨日見習いを卒業したばかりの新米ですが、よろしくお願いします」

 新米聖女と聞いてゴードンが目を見開いた。

「では昨日まで教会に居たのか!?噂を聞いたことが無かったが……」

「噂ですか?教会では治療をさせてもらえなかったので、噂になるようなことは無いと思いますが……」

 シーアの発言を聞いて周囲はざわついた。シーアは驚いて周りを見る。みんな何やら奇妙なものを見る目でシーアを見ていた。シーアは困惑して思わずハニュを抱きしめる。


「はいはい、シーアちゃんが驚いてるでしょ。事情は後で説明するから散った散った」

 そこにギルド長がやって来て、みんなを諫める。みんなギルド長の言うことはよく聞いて、シーア達の側から離れていった。

「シーアちゃん、着任早々よく頑張ったわね。報奨金が出るわよ。楽しみにしてなさい」

 ギルド長の言葉にシーアは喜んだ。頑張ったのは主にハニュだから、美味しいものを買ってあげようと決める。慌ただしい一日だったが、シーアは今まで感じたことのない達成感と満足感を覚えていた。

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