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9.短イ御噺

本日(5/13)投稿2話目となります。

最初その部屋に集められたのは性別も種族も年齢もバラバラな四十人の子ども達だった。



全員ここに連れて来られる以前の記憶が無い。



あるのは身の内に渦巻く膨大な魔力だけ。



表情も乏しく、まるで人形のようだった。



大人達は皆を“白の子ども達”と呼び、刺激を最小限にする為それまであったはずの名前さえ取り上げ、子ども達を数字で管理した。



── 意思など要らぬ。


── お前達は器なのだ。


── 時が来たら身を捧げよ。


── 人の身に龍を宿す誉れを。



白の子ども達は常に大人達に観察されていた。

個というものを徹底的に排し、ただ魔力の扱い方と戦う術を黙々と叩き込まれた。



時が経つにつれ一人また一人と外の世界へ還っていくのを見送る事が増えていった。

還される理由はわからない。

顔、身長、性別、管理される数字は違えど魔力の扱いの練度や身のこなし、中身の方に差があるようには思えなかった。


誰かが外へ還った日は必ず晩ご飯がご馳走だったので淋しいという気持ちもすぐに和らいだ。

普段はそんな事言わないのに、この日ばかりは大人達がご飯を残す事を絶対に許さなかった。言われなくてもちゃんと食べるし、その気になればおかわりだってできちゃうと思う。

ご馳走をお腹いっぱい食べた後は体の中の魔力がすごい速さでグルグルしてるのがわかる。

寝ちゃえば次の日には治っちゃうから平気。


でも何だろう。


昨日とは何か違う。


私の中に私じゃない誰かを感じる。



── アナタはだあれ?



四十人いた子ども達はその数を減らしていった。


最終的に残ったのは三十四番と呼ばれた個体ただ一人。



無垢で膨大な魔力を持つ器を必要としていた大人達は皆、三十四番の出来に満足した。

最後の仕上げとして次の工程の邪魔となる三十四番の人格を完全にすり潰し、来るべき日に備える。


それこそがリリィの前身、施設を襲撃したユリウスによって青き魔石に封じられた少女だった。


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