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第1話〜SSF〜



ーフォルダム王国、ジークハルト領近郊ー




「ハッ、ハッ、ハァッー」


荒野に魔法が飛び交う小規模な乱戦の中、1人の青年が剣を片手に駆けて行く。


彼の名は“ユーリウス ベレスフォード”。


1年程前に“ジークハルト家”にて雇用された新米兵士だが、人並外れた才覚と並々ならぬ努力で頭角を表し、若くしてSSF(ジークハルト家直属特殊遊撃部隊)に抜擢された、期待の新兵だ。


その端正な顔立ちに似合わず勇猛な剣捌きで、敵兵を次々と切り伏せながら突き進む。


実力は味方兵も圧倒される程。


だが彼はまだ若い。やがて敵兵の1人に背後を取られてしまった。




直後、ユーリウスの背後の敵兵がドサリと崩れ落ちる。


「ユーリウス、1人で先走らないで下さい!」


蒼く美しい長髪を靡かせ、一閃。


颯爽と現れた女性の兵士が、敵兵を切り伏せていた。


彼女の名は“アリシア エゼルレッド”。


ユーリウスと同じくSSFに籍を置き、20歳という若さで副隊長を任される若きホープ。

彼女の身のこなし、剣捌きの素早さは王国内でも指折りで、周囲からは“疾風のエゼルレッド”と称されている。




「すみません、アリシア副隊長。けど俺っ……!」


「言い訳は後で聞きます。


とにかく今は他の隊員と合流して、体勢を立て直して下さい!」


アリシアはそう告げると、彼に背を向け敵兵の集団に向き直った。


背後は自分が守るから、さっさと退がれ。という事だろう。


ユーリウスは悔しそうに唇を噛み締めながら、彼女の指示に従う。


それに続いてアリシアも、敵兵に睨みを効かせながら後方に下がり始めた。




『避けたまえ』


と直接頭に響く声に、アリシアは咄嗟にユーリウスを突き飛ばし、自身も大きく後方へ向けて跳躍した。


直後、彼らの頭上を大きな火球が通り過ぎる。


火球はそのまま前線に飛んでゆき、敵の重装兵の真後ろに着弾。


大きな爆発を起こし、燃え上がる炎が敵の前線部隊を包み込んだ。




「トリスタン、どういうつもりですか!


私達まで巻き込まれる恐れがーーー」


「警告はしただろう。


その上で巻き込まれると言うのなら、キミ達がその程度の兵士だったと言うだけじゃないかね」


声を荒げるアリシアに、火球を放った男は全く悪びれる様子もなく、淡々と告げる。


彼の名は“トリスタン オードリッジ”。


長年ジークハルト家に仕え前線を支えてきた、歴戦の黒魔導士。

その類稀なる魔法の才能を買われ、SSFが組織される際に真っ先に呼び声がかかった程。

しかし魔導こそ至高と剣士を毛嫌いする傾向があり、アリシア含む前衛職と度々諍いを起こしている。




「あらあら、ケンカはだめよトリスタンちゃん〜


副隊長ちゃんが怒るのも無理ないわ〜」


彼の隣に立つ真っ白いローブを纏った女性の兵士が、トリスタンをたしなめる。


「ディアーナ、キミは些か情が過ぎる。


結果彼らは無事。敵前線も足止め出来たのだから、別に構わないーーー」


「ト・リ・ス・タ・ン・ちゃん?」


「ーーーぐっ」


普段温厚な彼女のドスの効いた声に、プライドの高いトリスタンがたじろぐ。




彼女の名は“ディアーナ ハインド”。


元は王都の教会に勤める神官だったが、ジークハルト領主直々に引き抜きの声を掛けて召集されたSSFの隊員。

配属後は白魔道士に転向し、回復だけでなく支援魔法にも長けた天才魔導士だ。


前衛職に対して高圧的なトリスタンだが、彼と同じ魔法職には仲間意識を持っている。


特に自分と同格か、それ以上とも言われるディアーナが相手となると、彼は弱かった。




危ない場面はあったものの、何とか無事ユーリウスを回収したアリシアが、トリスタンとディアーナのもとまで後退してきた。


「トリスタンさん!


まだアリシア副隊長も俺も、撤退中だったじゃないですか!


あんなに急に魔法を撃たれて、もし俺たちに当たっていたらどうするつもりだったんですか!」


彼女と一緒に戻ってきたユーリウスが、トリスタンに掴み掛かる。




「はぁ……この私がその様なミスをする訳が無かろう……


一体誰に向かって口をきいている。


その手を退けたまえ、新兵。」


ディアーナたしなめられて大人しくなっていたトリスタンも、忌々しそうに対抗する。




「あなた達、いい加減にして下さい!


トリスタン、貴方の行動は後で隊長に報告しておきます。


ユーリウス、今は戦争の最中です。これ以上問題を起こすなら、貴方も後で何か罰則を設けますよ。」


アリシアの一括に、ユーリウスがトリスタンの胸ぐらから手を離す。


トリスタンも、この場でこれ以上揉め事を起こす気は無いのか、苛立たしげな表情をしながらも引き下がる様だ。




「副隊長ちゃんもたいへんね〜」


ディアーナがそう言って、クスリと笑った。


まだ結成されて間もないSSFだが、日々絶えないいざこざに頭を悩ませるアリシア。


それを優しく見守る姉の様な微笑みだった。


アリシアもディアーナには良く助けられているため、多少他人事の様に笑われようとも、文句は無い。




「ところでディアーナ、隊長達は何処に?」


アリシアの問いかけに、ディアーナは微笑みながら答える。


「隊長ちゃんたちなら〜」

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