零時の時報から始まる恐怖
大学生の俺は、コンビニのバイトを終えると夜道を歩いて家のほうへ帰ろうとしていた。いつものようにイヤホンを耳に掛けると、スマホのラジオアプリで好きな番組を聴くのが俺のルーティーンである。
ところが、番組を聴こうとすると不気味で奇妙な声が俺の耳に入ってきた。その声を聴いた瞬間、おれは顔面蒼白になったままて立ち尽くしている。
「もうすぐ夜更けです。真夜中に出歩く者を襲う殺人鬼が零時をお知らせします。ブスッ、ブスッ、ギャアアアッ!」
そんな俺の背後からは、街灯に照らされた黒い影が近づいていることに気づいた。恐る恐ると振り向くと、そこには鬼のようなマスクをした黒ずくめの姿をした男が立っていた。
「は、早く帰らないと……」
相手の姿を見て、俺はその場から急ぎ足で去ろうと走り出した。すると、鬼マスクの男は右手からバタフライナイフを出して追いかけてきた。
俺は、鬼マスクの男から逃れようとすぐに左へ曲がって細い道のほうへ入った。後ろのほうからは、鬼マスクの男が相変わらず俺を狙おうと迫ってきた。
その後も、俺は真っ暗闇の細い路地を無我夢中になりながら逃げ回り続けた。そんな時、路地の先には行き止まりがあってここから向こうへ進むことができない。
他の場所へ行こうとしても、目の前には鬼マスクの男がナイフを持ちながら近づいてきた。もうこれ以上逃げることができない。
「こ、こっちにこないで!」
「フ~ハッハッハ! フ~ハッハッハ!」
不気味な笑い声とともに、鬼マスクの男の握りしめたバタフライナイフが俺の体を貫いて……。
「うわあああっ!」
悪夢から目覚めると、俺はベッドの上でそのまま眠っていたことに気づいた。どうやら、バイトから帰ってから疲れた体を休ませようとベッドで寝転がっていたようである。
「シャワーを浴びてから着替えてすぐに寝よう」
俺は、自分の体をシャワーで洗おうと部屋から出て風呂場へ向かった。ベッドのそばでは、ラジオの受信機からあの声が聞こえている。
「もうすぐ夜更けです。真夜中に出歩く者を襲う殺人鬼が零時をお知らせします。ブスッ、ブスッ、ギャアアアッ!」