第七話 火事
「団長!」
「! 来たかイーサン」
家屋に目を向けると、ごうごうと火の手があがっていた。
一階の店は完全に焼失しており、寝室のある二階に燃え広がった火を止めるべく、災害隊が水魔法で必死に消火活動を行っていた。
「イーサン、店の一階に魔導具とかは置いていたのか? 」
「修理中の魔道具は全てアダマンタイト製の金庫に入れてあるから大丈夫だ。ま、修理用の道具は全部全焼してるかもしれないが、買えばいいことだ。」
「二階の方は」
「貴重品は空間魔法で持ち歩いていて、その他の物は倉庫に預けている。ああでも、ベットが焼けちまったのは痛いな。こだわって選んだ一品物だからだ」
「家が燃えた以外あまり問題はないという訳だな」
俺は生活必需品しか買わない。二階にあった少しの娯楽品は、かつての同僚からの贈り物がほとんどだ。
何故娯楽品を買わないのかと聞かれれば、部屋を散らかしたくないからだ。
そもそも娯楽品を買っても、遊ぶ時間はあまりない。
「団長、俺の家に火を放ったのはどういう外見をしていた? 」
「それならジョーズが聞き込みをやっていたな。おい、ジョーズ! 」
自警団団長は威厳のある声で、住民と話していたジョーズを呼んだ
「あっ、ディガーさん! お久しぶりです!!」
「やあジョーズ」
そう元気に挨拶する好青年は、災害隊に入ったばかりの新人、ジョーズ・キーコだ。
自警団に助けられたのできっかけで災害隊に入隊した、頑張り屋の少年だ。
「キーコ。イーサンが放火したヤツの特徴を知りたいようだ。教えてやれ」
「はい! 近隣住民の目撃証言によると放火したのは複数人のようで、マフィアの連中らしいですね。一人が足を引き摺っていて、一人はサングラスをしていたようです。連中は一階の店を魔法銃で撃った後、魔法で放火したらしいです。」
「やっぱりね」
「! 何か心当たりがあるんですか? 」
「ああ」
これは本気でいかなければな。施しを受けたらそれ以上の施しを、だ。
「団長、一つお願いがある」
「なんだ? 」
「救急隊の魔導救急車両を用意しておいてくれ。10台くらい」
「......必要なのは霊柩車じゃないのか? 」
「確かにそうだな。」
「頼むから派手にやりすぎないでくれよ」
「気をつけるよ」
「気を付ける......ね」
団長はそう呟くと、苦笑いを浮かべた。
何故俺が「気を付ける」と言うと、皆微妙な反応をするんだ?
まあとにかく、薬局に寄って救急キッドを買ったら、喧嘩開始と行こうじゃないか?
【最強の死神と黒猫の救世譚】を読んでいただきありがとうございます!
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