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第六話 事情調査

※追記 2023/5/12

イーサンとテッド先生のやりとりの一部を削除しました。

「テッド先生!」

「おお、来よったな」

「獣人の子は? 」

「呼吸も脈も正常に戻っとるが、栄養失調と出血で衰弱しておる。長時間の話はやめたほうがいい」

「手短に済ませます」


 ドアを開け、テッド先生と共に病室の中へと入る。

 病室の中に入ると、パックの中身は栄養輸液だろうか? 点滴を打たれている猫の獣人がいた。


「ノウ先生、この方は......」


 猫耳を伏せ、不安げな瞳で猫の獣人はこちらを見る。

 それはそうだ。彼女の立場からすれば、突然見知らぬ体格の良い男が目の前に現れたら、マフィアの連中が自分を探しに来たかもしれないと思うだろう。


「こいつの名前はイーサンじゃ。先刻話した、君を助けた男だよ」

「! あなた様が、ご迷惑おかけして......」


猫の獣人は立ってお礼を言いたいのだろう。ベットの縁に手を置き、立ち上がろうとする


「ああ、大丈夫大丈夫。そのままでいいよ。君はまだ動かない方が良い」

「すみません」

「謝る事じゃないさ。悪いのは君を撃ったマフィアだよ。俺が今日此処に来たのはそのマフィアについて知りたいからさ。もし良かったら、話を聞かせてくれないかな? 」


 俺の言葉を聞いた瞬間、目には一瞬驚きと喜びが見えたが、すぐに俯き暗い顔になってしまった。


「それはいけません......あなたに話してしまえば......巻き込んでしまいます」

「巻き込むもなにも、マフィアを三人ぶっ飛ばしたし、俺はもう完全に巻き込まれているよ」

「えええ!? 三人も!? 」

「そうそう。だから話してくれないかな? 」

「しかし、相手は一組織なんですよ? いくらなんでも......」


 うーむ、困ったな。どうやって説得しようか。

 この子の言っている事は間違っていない。一人でヤバい組織に立ち向かうのは、普通は死にたがり屋がすることだ。自分を助けてくれた恩人を巻き込みたくないと思うのは当たり前だ。

 さて、どうするか。


「......君、イーサン・ディガーという男は知っているかね? 」


 テッド先生が、そうボソッと呟いた。

 猫耳の獣人は俺の名前を聞くと目をまん丸くした。


「もしかしてあなた様はイーサン、イーサン・ディガー様なのですか!」

「そうだが......何故俺の名を知っているんだ? 」


 この子とは初対面のはずだ。どこかで関わった覚えもないが、俺が忘れているだけか?


「北の傲慢な勇者を決闘で倒したんですよね?」

「ちょっと待て、その話の事実をいろいろと否定をしたいところだが、その前に何故その事を......」


 その疑問に答えたのは猫耳の獣人ではなく、テッド先生だった。


「吟遊詩人の間でお前さんの歌は有名じゃ」

「俺の歌......?」

「イーサンという巨体の持ち主が、横暴していた北の勇者を決闘で懲らしめる話じゃ。君も吟遊詩人から聞いたのではないか? 」

「そうです。数年前に」

「なんじゃそりゃ」


 そんな歌が流行っていたとは。


 北の勇者と俺は確かに決闘した。最初は断ろうとしたが、北の勇者の言動からして断ったら余計に面倒くさいことになると考え、決闘することにしたのだ。


 吟遊詩人の歌の内容をテッド先生から聞いたところ、事実と異なる点があった。


 まず俺は巨体じゃない。次に俺は勇者には勝っていない。ギリギリの引き分けのようなものだっだ。観客からしてみれば俺が勝ったように見えたかもしれないが。


 当時絶大な権力を持っていた北教会の神父のおっさんが、その場にいた野次馬に対して「この決闘は他言無用」といったはずなんだけどなー。


 相当やつれた顔をしてたが、心労で神の御許とやらに行ってないか心配だ。

 逆恨みされて、北教会とは関わり合いになるのはまっぴらごめんだ。


 目の前にいる猫の獣人の間違いを正そうと一瞬考えたが、今は悪手か。

 今回の件が終わった後にでも、間違いを正そう。


「という訳で、俺が死にたがり屋じゃなくて強いヤツっていう事は分かってもらえたか? 」

「はい」

「話を聞かせてもらってもいいかい? 」


 そういうと猫耳の獣人はポツリポツリと話し出した。


 父が病気になり、借金を背負ってしまったこと。

 借金はどんどん膨らみ、母や兄の仕事の給料だけでは返すのが間に合わなくなったこと。

 ある日、良い服を着た男が家にやってきて、家族に対して「私をくれたら借金を全額肩代わりする」と言ったこと。

 家族の反対を押し切って自分を自分で売り、ある研究所で働いていたが、突然解雇されたこと

 解雇された日に人攫いにあい、劣悪な環境な牢屋にいれられたこと。

 隙をついて牢屋から逃げ出し、逃げている時に右肩を撃たれたこと。


「なるほど、それで店のゴミ捨て場に倒れていたと」

「はい......」

「本当に胸糞悪い話じゃの」

「他に捕まっている人たちはいるのかい?」

「はい。何人かは分かりませんが、私が見た限りだと10人以上は......」

「そうか......他の捕まっている人たちを助けることを約束しよう」

「ありがとうございます。」


 そう言うと、猫耳の獣人は深々と礼をした。


「そう言えば名前を聞いていなかった。名前は? 」

「ラウ。ラウ・ハートです」

「ラウか、良い名前だ。改めてイーサン・ディガーだ、以後よろしく」


 ラウの話通りなら、劣悪な環境に10人以上......それも怪我人が複数。

 回復のポーションを創造空間に入れて携帯しているが、必要になる数が予想以上になりそうだ。

 薬局で品質のいいポーションを買い足した方が良さそうだ。


 ジリリリリリリリリ......

 ジリリリリリリリリ......


 話し終わるのを待ってたように、テッド医院の通信魔導具が鳴った


「イーサン! 自警団団長からだ」

「自警団団長から? 」


 自警団はこの街の治安を守っている自治体組織だ。

 三つの部隊に分かれており、街の犯罪を取り締まる【警備隊】街の災害に対処する【災害隊】住民が負傷などした場合病院へと搬送する【救急隊】が存在する


「もしもし? 」

『イーサンか? 無事だったか!』

「なにがあったんです? 」

『お前さんの店で火事だ! 急いで来てくれ!』

「なんだって!? 」


自警団団長の報せを受け、俺は空間転移で店の近くへ移動した



【最強の死神と黒猫の救世譚】を読んでいただきありがとうございます!

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