第五話 準備
カチャリカチャリと、銃のパーツを組み立てていく。
銃を組み立てをやるのは数年ぶりだが、銃のパーツを触った途端に記憶が蘇ってくるおかげで、手間取ることなく組み立てが終わる。
俺は今【ラグナロク】と壮大な喧嘩をするために、必要な武器の準備をしている。
店の地下室は武器庫になっており、現役の時に愛用していた武器一式がショーケースに飾られている。
傷が無いか確認し、銃弾を一発一発丁寧に装填していく。
それぞれの銃に異常が無いか、簡単に作った的に狙いを定め、引き金を引く。
パシュン、パシュン、パシュン
マズルフラッシュと共に火花が散った。
店の地下室には薬莢の音が響き、火薬の匂いが充満する。マガジンにすぐさま弾を入れ、リロードし再び的を狙う。
「ふぅ、ハンドガンも異常はなさそうだな」
魔導具の修理の依頼が多く、メンテナンスをしばらく怠っていたが銃に問題はなさそうだ。
しかし変わってしまったものがあった。自分の一番信頼しているモノが。
「落ちたな......認めたくはないが」
的の中心に命中した弾は十六発中十二発。残りの四発は的には当たっているが、中心から1cmから2cmほどずれてしまっている。
このズレは致命的だ。戦場においてはこのズレが、自分の命や仲間の命を晒すことになる。
「定期的に練習しないと、駄目だなこりゃ」
筋トレは引退してからも継続していたが、射撃訓練はほとんどしていない。
過信とまではいかないが、自分の腕には多少自信があった。その分ショックだ。
ハンドガンの銃口とグリップをタオルで拭き、床に散らばった弾丸と薬莢を片付ける。
お手製の換気扇を回し、室内に充満した火薬の匂いを一気に外を出す。
「空間収納」
テーブルに置いたハンドガンを創造空間へと入れる。
空間魔法、空間収納。自分の空間を創り、その空間に物を出し入れできる超便利魔法だ。
空間に物を入れるので、重量なく物を持ち運ぶことができ、出し入れの際に使う魔力も微量なのでコスパも良い。
空間収納を「神級魔法に分類しても良いのでは?」と思っていた時期もあったが、この魔法には決定的な弱点がある
それは、魔法を封じられたら使えないことだ。
魔法の中には魔法を封じる魔法もある訳で、魔法を封じられたらこの魔法は使えなくなってしまう。
まだこの魔法を覚えたての頃を思い出す......懐かしいなぁ......敵陣のど真ん中で魔法を封じられて丸腰になったのは良い思い出だ。
昔を思い出し、感傷的な気分に浸っているとそれを打ち消すように店の電話が鳴る。
階段を急いで駆け上がり、俺は電話に出る。
「もしもし? 」
「わしじゃ」
「テッド先生!」
「獣人の子が目を覚ました。すぐ来てくれ!」
「! 分かった」
二階の自室へと空間転移し、外出用のジャケットを羽織る。
さて、実りのある話は聞けると良いんだがな
【最強の死神と黒猫の救世譚】を読んでいただきありがとうございます!
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