第二話 猫の獣人とマフィア
「おい、大丈夫か!? 」
駆け寄って息と脈を確認する。息はかろうじてしているが、脈が速く弱い。
右肩口からドクドクと、血が流れている。傷からして魔導銃で撃たれたのだろう。
何があったかは分からないが、病院へ連れて行かなければ。
「おじさ~ん、その子をどこに連れていくつもりぃ~」
猫の獣人を抱きかかえ、空間魔法で病院へ転移しようとしたが、男の声に止められた。
振り返ると人相の悪い男たちが、下衆染みた笑顔を浮かべて立っていた。
「お前らは、この子の知り合いなのか? 」
「それはうちの商品なんだ。返してくれないかなぁ? 」
俺は即座に男たちを洞察する。
全員が屈強な体の持ち主であり、首、手首、足のどれかにタトゥーを入れている。
他にこの男たちに共通するのは青色の瞳だ。北大陸の出身といったところか。
魔法を少し使えるものが一人で、残りの四人は近接戦闘スタイルか。
「商品? おかしいなぁ、獣人の人身売買はこの国では禁止されているはずだったような」
「あんたには関係ないだろー。さっさとそいつを返してくれないかなー、おじさん」
「出血がひどいから病院へ俺が連れてい......
バァン!
頬に一本の線の痕ができ、痛みが走った。
魔法弾の魔導銃か。高価なものを......
「おじさ~ん、俺たちは忙しくてね。悠々とおしゃべりしている暇はないんだぁ。死にたくなきゃ......そいつを渡せ」
「......」
「おいおいwwビビッて声が出ないかぁ? 」
「誓約は、どうなっている」
「? 何言ってんだ」
「そうか......それがおまえらの意思か。悪いが、断る。」
リーダー格と思われる男は一瞬目を見開いたが、すぐ呆れ顔になった。
「はぁー、手間は取りたくないんだけどね。ジョージ、眉間だ。もう一発ぶっ放せ!!」
「あいよ」
ジョージと呼ばれた男は魔導銃をもう一度構えると、引き金を引いた。
面倒ごとはこっちもごめんなんだが。でもここでこの子を見捨てるのは、俺の主義に反する。
助けられるのに助けないのは、今までを否定するのと同義だ。
火属性の魔力の塊が目前に迫ってくる。
「空間魔法、|空間転移」
「ぎゃあああぁぁ、あ、足がぁ!!!」
「ジョージ!? てめえ、何しやがった!!」
「なに、空間魔法で火球をその男の足元へ転移させたのさ」
「! 魔法使いか!」
ジョージの右足は真っ黒だ。魔法での怪我は、その魔法の質によって治りやすさが違うが、見たところ回復魔法をはやくかけないとまずそうな具合だ。
「すぐ終わらすから、耐えていてくれ」
息の浅い猫の獣人を、壁に寄り掛けさせる
「速水刃!!」
「おっと」
右横に跳び、水の刃を回避する。後ろで轟音が鳴り、民家の壁の一部が吹き飛ばされる
下手に回避するとこれか。後で事情を説明しなければな。
「空間移動。はいはい、こっち見て」
魔法を使った男の後ろに魔法で移動し、声をかける
男が降り向くのと同時に、男の顔の位置に手を伸ばし、物体移動で家の中にあるライトを手の中に出現させる。
「スイッチ、オン。最大」
「ああああぁぁぁぁ!!??目が、目がぁ!!!」
男は目を押さえ、地面を転げまわる
「ゴードン!!」
「軍隊用のライトの光を喰わらせた。闇医者に早く見せないと失明するぞ? まだ遊ぶか? 」
「てめぇ...!」
猫の獣人を横目に見ると、さっきよりも息の音が小さくなっている。急がないと。
「おらぁ!!!」
「くどい」
「ぶへぇ!!」
ロングソードで斬りかかってきた男の顔面に、速攻で左フックを喰わらす
鼻の骨が折れたのだろう。男は地面に座り込み、男の鼻からは血がドバドバと溢れている。
「まだ、、、遊ぶか? 」
「ちっ......ただじゃおかねえぞ」
リーダー格の男はそう吐き捨てると、銃の男を引きずりながら、仲間とともに逃げて行った。
「さてと、病院へと行かないと。空間移動」
ひゅんっ、という音ともに俺は病院へと瞬間移動した。
【最強の死神と黒猫の救世譚】を読んでいただきありがとうございます!
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