第十九話 イーサンvs爆裂野郎③
秘策を実行すべく、槍をすべてある場所へと空間転移させる―――のと同時だった。
「爆裂~~散弾砲!!!」
武器庫は、一瞬で跡形もなく無くなる。
巨大な瓦礫たちが、隕石のように武器庫に降り注いだからだ。
「これでお終いか!? イーサン!!!」
「まだ終わってねぇよ!!」
「!!!」
空中にいるフェニックスの後ろに空間転移して、鉄製のナイフを投擲し、頭を狙う。
無論ナイフは戦斧によって弾かれる。
だが、作戦通り。隙が少しでも生まれれば充分だ。
一気に距離を詰めて、フェニックスの腕を掴み、さらに上空へと転移する
「馬鹿めっ!!爆裂魔法で、なぬ!? 」
俺は城の尖塔の上へと空間転移した。
フェニックスの頭部に、尖塔の先が突き刺さるように。
チッという舌打ちをしながら、フェニックスは爆裂魔法で尖塔の先を破壊する。
その隙に空間魔法で、庭園へと空間転移する。
フェニックスは尖塔の先を破壊すると、爆裂魔法で一直線にこちらへと向かってくる。
その間、およそ2秒
後方へとジャンプし、ギリギリで戦斧を回避する。
ドゴォという轟音とともに地面はえぐれ、土煙が舞う。
息を整える暇はない。
「ぬぅん!!」
フェニックスは戦斧を爆裂魔法で加速させながら、戦斧を横薙ぎに振ってくる
その斬撃は容赦なく、急所を狙っている。
その重い斬撃を後ろに下がりながら避け、回避できない斬撃はオリハルコンのナイフで受け流す。
右手に持ったナイフで受け流す度に、電流のような痛みがはしる。
「うおらぁ!!」
戦斧を横薙ぎに振るうと見せかけ、フェニックスは両手で戦斧を振り下ろす!
その一段と速い斬撃を頭を下げながら、横っ飛びし、避ける。
戦斧はザクッ!という音とともに、俺の後ろにあった庭園の大木に深く刺さった。
好機かと思いきや――
「ふん!!」
フェニックスは戦斧を持ち上げた。大木ごと。
なんつー馬鹿力してんだ!? くそったれ!!
フェニックスは大木を振り回し、俺に向かって投げつける。
上体を後ろにのけ反らし、なんとか大木を躱す。
額面を大木の樹皮がかすってゆく
ガシッ
態勢を直し足元を見やると、フェニックスが俺の足を太い腕で掴んでいた
「ようやく捕まえたぞ、イーサン!!」
こいつ樹木を投げると同時に――
「しまっ」
地面へと俺は思いっきり叩きつけられる
装着していた防魔法チョッキの装甲が完全に砕け散り、ミシミシと肩甲骨のあたりから悲痛な音が鳴る。
思考が突発的な痛みによって、中断されかける。
「まだまだ!!まだくたばるなよ~!? 」
フェニックスが太い腕で俺の首を掴み、走り出した。
爆裂魔法の爆風により、一気に加速する。
ドガァン!!!
フェニックスは俺の首を掴みながら城壁へと突っ込んだ。
遠のいていた意識が、衝撃によって戻ってくる。
「ぬおおおぉぉぉぉ!!!」
「ぐあぁ!」
城壁を破壊した勢いをそのままに、フェニックスは森の中を爆走する
生い茂った草葉にぶつかる度擦り傷が生まれ、折れた木の枝が脇腹に突き刺さる。
「この......離しやがれっ!!」
「ぬぅ!? 」
純オリハルコン製のナイフを、鎧の繋ぎ目の部分へ渾身の力を込め突き刺す!
フェニックスは突き刺されたナイフに気を取られたのだろう、目の前の大木に気付かず激突した。
バァァン!!という音が森林に響き渡り、木の枝に留まっていた鳥たちが驚き一斉に羽ばたく
魔導自動車並みの速度を出していたせいで、フェニックスの剛腕から解放された俺は地面を転がる。
「ッ!!」
運悪く木の根っこの部分にあった岩石に足がぶつかり、両膝に激痛が走る。
また意識を失いそうになるが、舌を噛み、それを防ぐ。
背中からは流血が止まらず、足元もおぼつかないが気合で踏ん張ってゆっくりと立ち上がる
周りを見渡したが、景色は見覚えがない。だいぶ山の奥まできたようだ。
「はぁ...はぁ...はぁ...此処は山のど、おっ、とッ!? 危ねぇ!」
先ほど言った「運悪く岩石にぶつかった」という言葉を訂正だ。
後ろは深い深い崖だった。
ふらつき後ろに倒れそうになるのを、身体の重心を横にずらし、横へと身体を倒す。
岩石にぶつからないか、崖があるのを気づかなかったら最悪死んでいたかもしれない
「フェニックスは......死んだか? 」
あの速度で樹齢数百年もありそうな大木にぶつかったんだ。真正面から。
大抵は首の骨が折れて死ぬか、死ななくても打撲や骨折で瀕死だ。
フェニックスの死体を確認しようと、再び立ち上がろうとした時――
ドガアアァァァン!!という爆音が響き、大木が木端微塵となった。
爆裂魔法の火炎で、大木の周りに生えていた草花が一気に燃え上がる。
その光景は、地獄の悪魔が光臨したかのようだった。
「我はこれしきの事で死なん!!」
爆裂魔法の爆炎を纏いながら、フェニックスはこちらへと歩いてきた。その足取りはゆっくりだが、しっかりとしている。
額面の皮膚が擦り剝け白い色が見えているが、顔に悲痛さはなく、狂気の笑顔を浮かべていた。
なんていう奴だ。なんつータフネスをしているんだ!?
「ガハハハッ!!楽しのませてもらったぞ!!」
「......」
「ここまで我の猛攻を受け切ったのは、貴様ただ一人だけだ、イーサン!!」
「......それは光栄だな」
「その誉によって、我が貴様の言葉を直々に家族や友人に伝えてやろう!!さあ、最後の言葉を言うといい!!!!」
ビシっとフェニックスが俺を指さす。
「......そうか、じゃあ伝えてもらおうか、但し地獄にいやがる俺が殺した悪党どもにだ!地獄に堕ちたらたくさん遊んでやるってな!」
「ほざけ!!この戦いに勝ったのは我だ!!さらばだ、イーサン・ディガー!!!!!!」
鋭利な戦斧が、断頭台の刃のように真上から振り下ろされる。
絶体絶命。九死。万事休すの言葉らが最高に似合う状況だ。
――けれど、待っていた、俺はこれを待っていた!!
「死ねええぇぇぇい!!」
「空間魔法、空間創造・接続門!!」
空間魔法で空間を繋ぐ門を、瞬時に創り出す。
それはあるところに繋がっていた、それは――
接続門から......一本のアダマンタイトの槍が射出され、フェニックスの黄金の鎧を貫いた。
「なあああにににぃぃぃぃッッッ!? 」
フェニックスは絶叫しながら錐揉み状に、後ろへと吹っ飛んだ
【最強の死神と黒猫の救世譚】を読んでいただきありがとうございます!
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