第十八話 イーサンvs爆裂野郎②
キーーーーーーン。世界の音が遠のく。
脳髄が揺れ、視界が霞む。熱風は即席バリアでいなせたが、衝撃波をもろに食らった。
五臓六腑が悲鳴を上げる。態勢を立て直さなければ......
「爆裂~~~!!!」
「!!」
顔を上げると、フェニックスが目の前にいた。
こいつ、どうやって空中に!?
黄金の鎧の足元を見ると、足元では絶え間なく小さな爆発が起こっていた。
そうかこいつ、爆風を操って飛んできたのか!!
「スラッシュ!!!」
空間魔法で、防御用の魔導具を創造空間から取り出す余裕はない。
爆裂魔法によって加速した戦斧が、爆裂の火を纏って迫る。
受け身を取った次の瞬間――
五体投地で、倒れていた。
「ッ!!」
口からの血の大きな塊が溢れた。
脳髄が一瞬で何が起こったのか認識し、痛みが全身を襲う。
俺はフェニックスに戦斧で思いっきりかっ飛ばされ、大広間にある中庭の窓から、向こう側にあった窓まで吹き飛ばされたらしい。
背中にはガラス片が刺さり、戦斧の斬撃を受けた左手には感覚がない。
数本の肋骨が折れている気がする。奇跡的に折れた肋骨は内臓に突き刺さっていないようだ。
創造空間から回復ポーションを取り出し、痙攣する右手で持ち、一気に飲み干す。
左手と背中がパーッと輝き、痛みが消え、感覚が戻ってくる。
「くそっ! 何かあの爆裂野郎を倒す秘策はないか!? 」
こうなったらホークの野郎をなんとしてもぶっ飛ばさないといけない!
この状況を打破する秘策を、頭をフル回転して考えようとした時。
カラン、と後ろで何かが落ちる音がする。
何だ? ......槍?
後ろに顔を向けると、一本の槍が落ちていた。どうやら衝撃で戸棚から落ちたらしい。
部屋を見渡してみると、どうやら武器庫らしい。防具立てには、装備一式が立て掛けてある。
「管理が大雑把すぎる......これアダマンタイト製の槍だぞ」
槍を手に取って見ると、槍はアダマンタイトで出来ていた。
今の時価に換算すると一本数十万かくらいか。品質によって上下するが。
その希少な槍が、無防備にも十数本も置いてある。
「これ落ちて傷がついたらどうするんだ? ......待てよ? 落ちて、傷がつく? 」
自分が発した言葉によって、一つの閃きが脳髄を駆け巡る。
あった......あった!
起死回生の一手が! あの爆裂野郎を倒すとんでもない秘策が!!
思いついたこの秘策を実行するには、魔力と時間稼ぎが必要だ。ギリギリまで攻撃を避けなくてはいけない。それも空間転移をできるだけ使わずに。
魔導士相手に魔法を使って勝負しないのは、自殺行為に等しい。
しかし、こんなところで何もしないで犬死にはごめんだ!やるしかない!
【最強の死神と黒猫の救世譚】を読んでいただきありがとうございます!
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