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8 テストの打ち上げ

「それでは先輩方、テストお疲れさまでしたー!」

「おう」

「うぇーい」

「……うん」


「うわー、先輩方テンションひっくーい!」


 テストの結果も一通り出て、ようやく一息つくことができたため、俺たち屋上組はファミレスで打ち上げに来ていた。


 鹿山はノリの悪い俺たちに一人だけ絶望している。

 とりあえず店内で騒ぐのは迷惑だからやめろ。


「ところで、こんなに頼んじゃって大丈夫なの? 持ち合わせとか」


 当同席している瀬川がメニュー片手に不安そうに尋ねてくる。

 今回ばかりは俺が無理やり引っ張ってきた。

 俺にとっては此度の赤点回避の恩人だからな。

 こいつじゃないが、俺も借りは出来る限り早く返しておきたい派だ。


「ヘーキヘーキ。園部先輩のオゴリですし」

「おい待てコラ」


 ヘラヘラと笑いながら、鹿山が聞き捨てならない事を言いやがった。

 俺のオゴリとかそれ初耳なんだけど。


「今回の打ち上げの主役は赤点もとい補習を回避した園部先輩が主役。ならば主役である先輩が全額支払うのは当然では?」

「どんな理屈だ!」


 俺はむしろ労ってもらう側だろうが。


「労ってもらう? 我々があなたを労ってあげてるんですよ?」


 わざとらしく不思議そうに小首を傾げる鹿山。

 うわー殴りたい。


「私は最初に聞いてたよ。だからじゃあ遠慮しないでいいのかなって思って来たんだけど。……あんた持ち合わせ大丈夫?」

「だな。他人の金で喰うメシは美味い。ってどこぞの奴も言ってたからな」


 見た目通り、食う事に人生の比重を置いてる松村はともかく、瀬川貴様もか。

 心配してた財布の中身、自分のじゃなくて俺のかよ!

 ふざけるな、特に松村とかめっちゃ食うじゃん!


「そうだ割り勘だ! 今からでも遅くはない。ワリカンにしよう!」

「随分と心が狭いね。この前、あんたの家で私の作った料理食べたくせに。たまにはあんたが払ってよ」

「ちょっ……馬鹿っ!」


(ガタッ!)


 それ、今ここで言う事じゃねえだろ。

 見ろよ。好奇心の怪物が目覚めちまったじゃねえか!


「ちょっとちょっとぉ! 先輩酷いじゃないですかぁ。私というものがありながら、そんな格好のネタを黙ってるなんてぇ! ――で、どこまで行ったんですか?」

「お前もお前で誤解を招く物言いはやめろ」


 このクズが……!

 適度に人聞きの悪いワードを混ぜ込みながら追及してくるな。


「おい。期間限定パフェってなんだ⁉ ここのメニュー全制覇したつもりなんだが。まさかこんな新メニューが……!」


 松村、お前も少し黙ってろ。

 いや、やっぱ喋ってていいや。

 そのまま場を紛らわせてくれ。


 しかし、俺の願いも虚しく一度解き放たれたハイエナ女は止まらなかった。


「さっきから失礼ですね。皆で共有してアレコレ考察するネタと胸に秘めておくネタの区別ぐらい判別できますよ。全ては私が判別する事ですがね」


 それ結局お前の裁量次第じゃねえか。

 信用出来るか。

 これで学校生活がさらに面倒になったらどうしてくれるんだ。


「大丈夫ですって。噂自体は大分落ち着いた……というか皆飽きてますからねえ。似たような話題ぶち込まれてもみんな『もういいよ』って感じですし」


 そういえばクラスでも好奇の視線そのものはだいぶ減った気がする。

 このまま沈静化してくれればありがたい。


「――ただ、一部の連中の方はどうでしょうかね?」


 鹿山は意味深に呟く。

 そういや瀬川に例の落書き以前から嫌がらせしていた奴ってどうなったんだっけ。

 桜沢はちゃんと仕事をしてくれているのだろうか?


「……一応聞くが、それってウチのクラスの連中か? 林田とかじゃなくて」

「ありゃご存知でしたか」


 俺のカマかけに鹿島はどこか残念そうに呟く。やっぱ例の犯人もそこら辺か。

 もったいぶらずに教えろってんだよ。


「もったいぶってたつもりはないんですけど。それって瀬川先輩的にはどうですかねえ?」

「どういうこと?」


 当然だが、隣の席の瀬川も聞いており、鹿山はいかにも彼女にも聞こえるように大仰に言っていた。

 本当に意地が悪い。

 まあ、当の瀬川の方も相変わらず意に介さずって感じだが。


「だって顔見知りの連中が以前から自分に嫌がらせしていたって普通は結構傷付くと思うんですけど」

「全然。そこまで親しくもなかったし」


 試すような鹿山の言葉に瀬川は取り付くしまもなくズバッと斬り捨てる。

 だが、鹿山も負けてはいない。

 煽るように言葉の刃を斬り込んでいく。


「えー。傷付くのは無くても、逆にムカつく、逆襲、ざまぁしてやるってなったりしません?」

「しないよ。エネルギーの無駄」

「うーん。つまらないっすねー。もう少し他人に関心持った方がいいですよ。そんなんだから幼馴染君とも仲が拗れちゃったんじゃないですかぁ?」

「……なんでアタシがあんたにそこまで言われなきゃいけないの?」


 ケラケラと笑う鹿山の笑みが段々と底知れないものに変わっていく気がした。

 それに対し、瀬川はその氷のような鉄面皮に不快の感情を滲ませていく。


 二人の間に剣呑な空気が漂う。

 あれ、もしかしてこいつら相性悪い?


「お、おい。お前ら、そこまでにしておけよ」


 制止を呼び掛けるも、二人の間には火花すら幻視してくる始末だ。

 

 流石に女子の喧嘩を止めるとかどうしたらいいかわからないんですけど……。


「なあ園部、日替わりスープお代わりしたいんだが、ちょっと席どいてくれないか?」


 そしてオメーは本当にマイペースだな松村!

 この空気ぶち壊してくれるのは、正直ありがたいけども!


 こうして打ち上げは雰囲気微妙のまま終わりを迎えた。

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