19 鹿山麻央
一度完結して肩の荷を下ろしたら、また少しずつ書けるようになったので投稿してみます。
中学、別のクラスにいた友人が酷いイジメに遭って引き籠った。
私は根気強く彼女の家へと通って、ようやく聞き出すことができた。
彼女は必死に私たちからもイジめられている事を隠していたのだ。
バラしたら、余計に酷い目にあわせると言われたのは勿論、友人や家族……私たちにも危害を与えると脅されたから。
実際に教室の外の、しかも大人にまで害を与えられるかと言われたら、話は別だが、その脅しは気が弱く優しい彼女には効果覿面だったのだろう。
結果、彼女は心を壊される寸前まで追い詰められた。
彼女の家族もその事実を知り怒り、学校に抗議した。
学校側は徹底して指導を行うと言ったものの、下手人はなんとクラス全員だった。
そこからの彼らの弁明は聞くに耐えない醜いものだった。
『あいつに言われたからやった。悪いのは全部あいつだ』
『やらなきゃ今度は私がやられてた。仕方なかった』
『嘘だ。あいつが嬉々として率先してた。だから俺は悪くない』
クラスメイト一人一人に話を聞いても、全員が全員、支離滅裂な言い訳、もしくは責任のなすりつけ合いを始める。
クラス中のあっちこっちで行われる泥の掛け合い。
学校側も半ば匙を投げてしまい、家族の人たちも次第に娘である彼女の心を癒す方に専念し始める。
そんな中で私はいまだに怒りで腸が煮えくり返っていた。
――ふざけるな。
――こんなくだらない奴らにあの子はあそこまで傷付けられたのか?
――あの子はずっとずっと苦しんでいたのに。
――それなのに私はあの子の苦しみに気づかず、のんびりと隣のクラスで過ごしていた。
――それが一番腹が立つ!
ドス黒い感情が身の内から溢れてくる。
このままなあなあで終わらせてたまるものか。
私は行動を開始した。
地元の不良連中をけしかけて、もしくは自分自身でそいつをリンチにした。
無害で可愛らしい女子を装って近付いて、自分を巡ってそいつら同士を争わせた。
そいつやそいつの家を調べ、万引きや浮気といった後ろめたい事をしてる証拠写真を家や警察に送った。
そうやって一人また一人と、時には狡猾に、時には暴力で、そいつらの学校生活や交友関係を一年近くかけて滅茶苦茶にしてやった。
だが、私はその途中で一つの違和感に気付いた。
痛めつける際に出てきた連中の言葉……いつも通りのくだらない言い訳の中で、責任転嫁したり、助けを求めたり……、言っている事こそバラバラだったが、皆同じ人間の名前が出てきたのだ。
たしか一つ上の先輩の名前だっだ。
既にこの時点ではもう卒業しておりこの学校にはもういない。
調べると、その男は当時、クラスメイトの何人かと部活や近所付き合いで親しく、よくこいつらのクラスにも頻繁に出入りしていたらしい。
それを聞いて、私は確信した。
他に黒幕がいたことに。そして、その黒幕がこの連中を面白半分で扇動して私の友人を傷つけた事を。
しかし、そいつはもうこの中学を卒業しており、もういない。
住所も調べて、強引に押し入ってやろうとも思ったが、それではつまらない。
やはり仕掛けるなら学校だろう。
私はそいつを潰すためにこの高校へ入学したといっても良かった。
今度は私がそいつの遊び場を壊してやる、そう誓って――。
しかし、もうそいつは既に学校から姿を消していた。
なんでも休み時間に突然クラスメイトにしこたま殴られて、あっさり退学してしまったらしい。
一人で暮らしていたという自宅のマンションもご丁寧に引っ越しまでしていた。
一応はそのクラスメイトが起こした暴力事件だという話になっていたが、私はその人がアレの本性を知ってそうしたのだと理解した。
――何よそれ……。
別に感謝とかいう気持ちは沸かなかった。
むしろ獲物を奪われたような感覚で、理不尽な怒りすら向けていた。
だが、それでも気にはなる。
私が当時できなかった事をやってのけた男、一体どんな奴だろうか?
一目見ようと、彼がいるという屋上へと私は向かう。
そこには眠たげに欠伸をしながら、週刊漫画雑誌を読んでいる一つ上の先輩の男子生徒がいた。
「あれ。どちら様?」
しばらくして、彼はやっとこちらに気付く。鈍そうな人だ。
私は本心を悟らせぬようにで自己紹介をする。
それなりに男たちを見て、……そして惑わせてきたので、その相手の好みのタイプは一目見ただけで大体わかる。
こいつは……ふむ、ひたすらに媚びてそれでいて憎めないお調子者の後輩女子を演じよう。
「初めまして先輩。私は鹿山麻央と申す者です。親しみを込めて麻央タンとお呼びしても良いですよ!」
「えっ、何この子。出会って早々にいきなりグイグイ来るんだけど。怖っ!」
あれ、ドン引きされた!?
ちょっとショックだ。
……まあいい。こうなったら、こちらも全力で道化をやるだけ。
事と次第によっては目の前のこの男で憂さを晴らそうとも思った。
それこそ最低な八つ当たりだと自覚しながらも、中学で復讐を繰り返し、歪みきっていた私はもう止まれなかったのだ。
これが私……鹿山麻央はその先輩……園部達彦と出会い。
……でもまあその後、私はこの先輩と過ごしていく内に次第に毒気を抜かれていき、今の破天荒で可愛らしい後輩キャラが板についていっちゃうわけですが――それは別の話ですねっ!




