映画 it ジ エンド ネタバレあり
はい、勢い余ってネタバレありも書いちゃった。
あと、映画の中で宗教の儀式とか同性愛のこととかが描かれていたのでその辺にも少し言及してます。
苦手な方はブラバしてね。
はい、じゃあ始めるよ。
最初に俺なりにこの作品がホラー映画という形で何を伝えたかったか考えてみるね。きっとこんな感じ。
「世界は残酷で不公平で理不尽な暴力に満ちあふれている。そんな世界で暴力に恐れおののき、心に深い傷を負わされて、ついには見失ってしまった大切な自分自身。取り戻しに行こうぜ。それ(it)を」
まずは登場人物の円環構造について書くよ。名前を覚えてらんないから職業で書いちゃうね。
まずは彼らの行動についてまとめてみるよ。それから彼らの心理や背景についてね。
脚本家
騒がしい撮影スタジオで脚本の執筆に煮詰まって女優である妻や映画監督から攻められている
↓
一人で緑に囲まれた書斎で静かに作品を書いている
建築家
部下や取引相手が会議室に集まっているのに自宅の高級マンションに居ながらテレビ会議で参加
↓
ルーザーズのメンバーでもあり初恋の相手である主婦とクルーザーでいちゃつく
主婦
実業家として成功している夫に浮気を疑われて暴力を振われている
↓
建築家とクルーザーでいちゃつく
it研究家
(ごめん、職業わかんなかった)itが現れたときに備えて故郷の町で暮らしている
↓
町から出る
コメディアン
it研究家から呼び出しを受けて動揺しステージでオチが言えない
↓
恋人たちが記念に名前を掘ることでお馴染みの思い出スポットに自分と誰か(恐らくリスクコンサルタント)のイニシャルを掘る
リスクコンサルト
車の運転中に妻と電話をしていたところにit研究家からの呼び出しを受けて動揺し交通事故
↓
itからコメディアンを救う奮闘をするも戦いの最中に死亡。お母さんは助けられなかったけどコメディアンはたすけることができたんだね。
ちなみにコメディアンと軽口叩き合ってコメディアンによく「お前の母親としたぜ」っていうネタでいじられてたんだけど最期のは逆に同じ言葉でいじり返すんだけどさ。
何気にここ胸熱だと思った。
リスクコンサルタントにとってみれ心の聖域である母親という存在。それをいじりのネタにすることで過剰な期待も失望もなく、欲望や欲求を持つ一人の人間であるという風に考えられるようになったんだろうね。
母親への想いに囚われていたところから解放されたってことなんだろうなっ思ったよ。
ちなみにこの人の奥さんは母親に雰囲気が似ている。心配性なところも。配偶者を決めるときに自分の親と似ている人を選びがちという説があるらしいんだけども、
それもある意味でトラウマなんだね。
あと、儀式の中で喘息の薬を火にくべてい自分の心配性からの解放でもあるんだろうね。
職業不明
嬉しそうにバカンスの計画を立てている妻を背にしてジグソーパズルをしている
↓
呼び出しを受けて、バスルームでリストカットして自殺するもその前に仲間たちに出した手紙がラストで彼らに届く。itと戦うのに自分は足手まといになるし、自殺したとのこと。
そして、どうやらそれが彼が彼らしくいるための戦いであったみたい。
思春期の頃に宗教の儀式中(おそらくユダヤ教の洗礼とか大人になる儀式)に自分の考えを宣言して会場をあとにしたことがコメディアンの回想で出てくるから、それくらい強烈に自分らしくあろうとした結果の選択だったかもしれない、という印象。
かつてルーザーズをいじめていた少年
父親殺害で逮捕され精神病院をかねた刑務所で暮らしている
↓
itの手引きで脱獄。ルーザーズに暴力を振るうもリスクコンサルタントに撃退される(生死不明)
今さらだけどルーザーズって七人なんだね。映画で七人の侍とかであるけど、七人って物語的に丁度良い人数なのかもね。
それじゃ、次はルーザーズたちが、itと対峙していく中で向き合ってきた心の傷についてまとめてみるね。
あと、この作品の背景には人種差別や宗教的な差別もあったのかもしれない。
その辺の知識がないから軽々しく語れないけど、原作は一九六〇年代のアメリカの田舎町の話らしいんだ。恐らくだろうけどプロテスタント系のキリスト教徒の人が多いであろう地域で、黒人やユダヤ人はリラックスはしにくかっただろうね。
脚本家
弟に遊んでとせがまれたが面倒で仮病を使って断る。それが、弟がitに殺された原因として自責の念に悩まされていた。
建築家
かつては肥満児でいじめられていた。想い人であった主婦に詩を書いたラブレターを送るも主婦が脚本家を想っていたことを察して正体を明かせていなかった。
主婦
母を亡くしており、母の代わりとして父を慰撫することを強制されており、父から自分自身を愛されなかったこと
it研究家(黒人)
両親が薬物中毒者であり両親の火の不始末から火事で家を失ったこと
コメディアン(恐らくユダヤ人)
恋する相手が同性であること
リスクコンサルタント
母を病気で亡くしていることと自分も喘息持ちで病弱であること
職業不明(恐らくユダヤ人)
ちょっと俺にはよくわからなかったけど臆病だとルーザーズのみんなからは言われていた。
自身も最期の手紙で臆病だと告白している。あと、建築家が一人で作った秘密基地で蜘蛛の巣から頭を守るためにみんなにナイトキャップを配るシーンがあったんだけど、何かアメリカの文化的な背景があったのかも。
三幕構成のついては
設定
it再び登場からのルーザーズ召集。そして、忘れていた恐怖を思い出し混乱し、揉めていくメンバー。
なんとか気を取り直して作戦会議。そこでit研究家が、かつてitを封印したというアメリカ先住民の儀式を説明する。それはメンバーぞれぞれが記憶の底に封印してしまった苦い記憶と向き合い、向き合った上でそれを捨てるというもの。
それでまた、一緒にいた方が安全だとかなんとか一悶着あるんだけど脚本家の「ルーザーズだっていつも一緒ってわけじゃなかった」という言葉に、各自が独りで不承不承故郷の想いでの場所の赴き自分とむきあう。
葛藤
かつてのメンバーが故郷の町でそれぞれ向き合う。
はい、ここ! ここです!
感情移入タイム。
先にルーザーズのトラウマを書いて置いたけど、観客もみんなどっかしら登場人物に共感できるところがあるんじゃないかな?
人と関わることの喜びと裏表の孤独や恐怖というものが、それこそ回転するコインみたいにくるくると見せられます。
まんまと乗せられて泣いたわ。
ちょっとした嘘が取り返しのつかないことになったり、自分の気持ちを抑えて親の期待に応えようとしたり。
身近な人が病気になるとその人を守れなかった自分を攻めるし、自分も過剰に病気を恐れるし。
自分に自信がなくて好きな子に積極的になれなかったり、親が下手こいたせいで自分が地域の共同体に馴染みにくかったりと程度の差こそあれ、みんな何かしらあるんじゃないかな。
こういう、エピソードの取捨選択が俺には見事にハマったんだろうね。
あと、メンバーそれぞれの見せ場があって、それが上手いと想ったよ。
俺は建築家に感情移入して自分のコンプレックスを克服して、惚れた女をトラウマから救い出せるか? っていう視点で観てたんだけどね。
だって、自分が送ったラブレターを「きっと脚本家からだわ」とか言ってときめいている主婦に何も言えない、みたいな感じとかね。
コメディアンへの感情移入への仕掛けもすごいなと想った。アメリカの田舎町での同性愛に対する圧力が冒頭から見せつけられるのね。お祭り会場で仲むつまじくしているゲイカップルを地元の悪ガキがボコる。しかも、そカップルの一人をナイフで刺して橋の上から川へ投げ捨てるってさ。無茶苦茶じゃん?
そこで、俺は冒頭から引き込まれていったし、そして、それがあったからこそ、コメディアンが自分の恋愛傾向を誰にも言えなかったという重みを強く感じたよ。
それに職業不明が宗教上の成人の儀式中に僕は僕だっていう宣言をして、儀式会場から出て行ったときに、その場にいたコメディアンが拍手喝采していた。まあ、代弁してもらえたっていうことなんだろうって思った。
主婦は主婦で母親代わりに父親にさせられてることがエグい!
まず、「お前は母親の足下にも及ばない」って恫喝されながら母親が使ってた香水を振りかけられてハグを自分からするように追い込まれんの。しかも、その香水の所為で学校じゃ臭いとか言われてるし。
脚本家は子供の頃についたたったひとつの嘘で弟を失ってるけどさ。脚本家っていう物語って言う嘘を就く仕事についてるんだよね。嘘を嘘で塗り潰していかざるおえないのかな?
あと前半で妻と言い争うときに妻に「お前は嘘を付いてたんだな!」って怒っててさ。
ああ、人は自分が罪の意識を感じていることに囚われて他人を観ているんだなっていうことを考えさせられたよ。
ちなみに、この脚本家は、ハッピーエンドにしないことを批判されてて「いや、現実はそううまくいかない」って反論してて、脚本家になっても嘘をつききれないってこともトラウマなのかな?
解決
ついに正体を表したitと物理でバトルしつつ、このままじゃ負けるから逃げよう、か~ら~の、いや、逆にあいつに自分自身が弱いって思いこませることができれば勝てんじゃね? ってことで逃げ回っていたルーザーズが逆に言葉でitを追いつめていく。
そして、弱小化したitから心臓を抜き出し心臓を破壊。そして、itの最期の言葉がこれ。
「大人になったな、お前たち」
語りつくせていない気はするんだけど、気づけばもう三〇〇〇文字超えてたよ。この辺でお開きするのが丁度良さそうだね。
それじゃ、今日はこの辺で。
またねー。
追記
ちょっと迷ったけど書くよ。
色々モンスター襲ってくるんだけどさ。
俺は、漫 画太郎が描く老婆を思い出して笑っちゃった。
じゃあ、またね。
読んでくれてありがとうございます。
今回の作品は登場人物たちと世代が近いからか、いろいろ考えさせてもらいました。
では、また。