映画 デッド ドント ダイ ネタバレあり
2020年6月9日 追記と訂正しました
はい、早速行きます。
まずは俺の感想
俺がわかってないだけかもしれないけど、物質文明に対する批判の先を見せてもらいたかったかな。っていう感じです。ネガティブに聞こえるかも知れないけど観ているあいだ引きつけられていたし、ほんとに間とか人々の表情がリアルな感じでよかった。ただ、テーマみたいなことを俺が求めすぎたんだと思っています。
それじゃ俺なりにこの映画を一言でまとめてみるよ。
悲しいことではありますが無差別に人を襲う抗いがたい欲望を満たすことに囚われて、大切な何かを見失ってはいませんか? という問いを観客に投げる物語。
円環構造
冒頭
警察署長と警察官がパトカーで森の中に入っていく。農場主から鶏泥棒の疑いをかけられた世捨て人のボブと呼ばれる森の中で昆虫やきのこなどを狩猟採集して生きる老人に事実確認を行う。ボブの銃撃や初老の警官のボブに対する信用から事実は明らかにされない。
終演
生き残った警察官二人が大量のゾンビ襲われて死んでいく様子を眺めるボブの独り言。独り言の内容は小説「白鯨」からの引用と思われる「人々を襲う無惨さについての話」(ごめん記憶がちょっとあやふやだから微妙に違うかも)や物質文明に心を支配されてゾンビみたいに自分自身をなくしてしまっている人々への批判。
ちなみに、終盤でボブが農場主がゾンビに襲われるところを観ながらチキンを食べるシーンがあるよ。だから、俺は結局ボブは鶏を盗んでいた、ってことだと思った。
世を捨てたと言ってもボブ自身も人から物を奪うという欲望を満たす行為を行っている、という表現だと思った。キノコを採ってる場面があったから、鶏を盗らなくても喰っていけてるのに・・・・・・っていう表現かと思った。
三幕構成
設定
冒頭から舞台は地域のダイナーと呼ばれる庶民的な食堂に移ってニュースが流れている。それは、政府がエネルギー獲得のために極地を工事しているために地軸が傾き異常気象が起きる恐れがある、というものだった。
そして、墓場の地面からゾンビが現れてダイナーの従業員を襲う。ゾンビが食堂に現れたのはコーヒーを飲むためだったことがわかる。
翌日、その遺体を発見した客から警察に連絡があり、冒頭の男性警察官二名と女性警官一名が事件を解決しようとするが、若い男性警察官がこれはゾンビの仕業だと残りの警察官に話すが相手にされない。ただ危険な野生動物がいるということで住民へ注意喚起のためにパトロールを始める。
葛藤
警察署で安置していた遺体が動き出したことでゾンビの存在を受け入れた3人の警察官。この先、どうするか決めかねていたところへ、最近、町に現れた変わり者とされている葬儀屋の女が現れる。警察官たちは警察署を女に任せ三人でパトロールに出かける。そこで、ゾンビが蠢く町の様子を見て回っていく。
また、他の住人たちとゾンビたちの戦いやたまたまモーテルに泊まっていた旅行者グループたちの様子が描かれていく。
決着
パトカーをゾンビたちに囲まれてなす統べなく立ち往生している三人。パニックを起こし始める中、女性警察官が取り囲むゾンビのなかに亡くなった祖母を見つける。そして、男性警察官たちの制止も聞かずに外へ飛び出してしまう。女性警察官はそこでゾンビたちの襲われてしまう。生き残った警察官二人はゾンビが集まっている場所(おそらくゴルフ場)までやってくると、多少迷った末に覚悟を決めて武器を取り死ぬまで戦う。
その姿を遠くから眺めていた世捨て人が人々を批判する。
登場人物
警察署長
男性警察官
女性警察官
初老の世捨て人
葬儀屋の女
農場主
金物屋(銃も販売している)
雑貨屋店主
都会から来た三人組の旅行者グループ
若い女一人
若い男二人
印象に残ったことの羅列
クリーピー(気持ち悪い)という言葉。
良く出てきた。最初ニュースで女性キャスターがうっかり使っちゃいけない言葉を使っちゃったみたいな場面があるんだけど、登場人物たちの会話の中で結構出てきた気がする。
葬儀屋の女
ゲームのゼルダの伝説のゼルダ姫に超寄せたビジュアル。年齢は中年以降って感じだけど、まじで制作者たちは意識してると思った。しかも、スコットランドから来たという設定らしくてさ。
俺のあやふや知識でゴメンだけど、スコットランドやアイルランドに伝わるケルト民族の神話がゼルダの伝説のベースだったような気がする。あと、この女が空手か柔道かわかんないけど道着きて仏像の前で日本刀の素振りをしてるんだけどスターウォーズへのオマージュかなって思ったよ。
あと、この女が「ファッション」って言葉を言う若いゾンビの女に話しかける場面でこう言うのね。「そのチェックのスカート似合っていないわよ」って。で、俺の勝手なイメージだけどタータンチェックっていうの? あれってスコットランドとかが発祥だよなとか思って、ここにも何か意図があるんだろうな、って思った。
まとめるとこの女は東洋思想とケルト民族の思想を融和させたキャラクターなのかなって思った。で、キリスト教を基本とした考え方を浮き彫りにさせる目的なのかなって思ったんだけどこれ以上は深く考えられないや。残念な俺の頭じゃ。しかも、この人、散々ゾンビを日本刀で斬った後に突如現れたUFOに乗ってどっか行っちゃうし。
メタ会話
警察官二人がお互いのジムからもらった脚本内容が違うという会話をしていてここから先は脚本をもらっていないっていう会話。なにか深い意味があるんだろうなって予感はしたけど俺には解けない謎でした。
キャラの対比
金物屋(紳士と評される黒人)と農場主(嫌な奴といわれる白人ファーストの白人)
雑貨屋(陰キャ)と旅行者グループ(陽キャ)
男性警官(車がスマート)と女性警官(車がプリウス)
ダイナーで働く二人の女性(教養のない白人女性)と(教養のある有色人種の女性)
で、それぞれのキャラを説明する場面を一つずつ。
金物屋 ダイナーの女性に紳士と呼ばれている
農場主 アメリカを白人の国に、と書かれた野球帽を被っている。
雑貨屋 子供たちとのオタクトーク
旅行者 手に入れた腕時計や雑貨屋に対するイジり
男性警官
女性警官に車で送ってあげると言った後に、自分の車で帰ると返答されて、車の調子を尋ねるも逆に「スマートって二人乗れる?」っていう軽めの煽りを受ける。
たぶんだけど少し前にプリウスの事故がアメリカで多発して欠陥があるんだかないんだか揉めてたことがあったと思うからそれのことかな、って思ったよ。
女性警官
警察署長の止めた方がいいという助言を無視して事件現場を見に行き、その凄惨さに嘔吐してしまう。
とりあえず、こんなところかな。キャラの説明とか参考になるって思ったよ。
それじゃ、またね。バイバイ。
追記と訂正
ダイナーの女性二人の対比
この二人は雇用主と労働者という関係に見えました。
それと違いが教養というのは言い過ぎな気がしました。本、あるいは映画を楽しむか否か、に訂正します。
二人の対比が表現されるのは、金物屋の主人の人物評として有色人種の女性がグレートギャッツビー「邦題華麗なるギャッツビー」という映画化された小説の登場人物のようだと説明していて、白人女性がそれを知らないという場面があります。
アメリカではそれを知らなくても不思議はないのか否かの判断ができないな、と思い直しました。あと白人女性はゾンビに噛みつかれただけに見えるのですが、有色人種の方は明らかに生きたまま内臓を食べられています。
考えすぎかも知れませんが、喰い物にされる労働者の暗喩かとも思いました。