裏の顔
王子達は、魔法使いの住む古い城に招かれた。
古いが、きれいに掃除されていて
食堂には、たくさんの料理が並べられていた。
『戦士の方々、王子様、おくちに合うか分かりませんが、どうぞ』
魔法使いが言った。
『戦士の方々のお部屋は、2階に上がり、右に用意させて頂きました。
王子様のお部屋は、左です。
馬と馬車は、屋敷のとなりです』
『これは、何から何まで、申し訳ない』
王子が頭を下げた。
戦士たちは、もう、座り込んで食べ始めている。
一番の戦士が叱ったが
『まあまあ、お疲れでしょうから』
と、魔法使いが笑って言った。
『明日から、王子様に、竜使いの呪文を教えます。
2日程ですが、その間は、王子様とはお会いになれません』
『何?』
一番の戦士の手が、剣を掴んだ。
『大丈夫です。
私は、昔はお城にいた身。
王子様をお守りいたします』
『城にいたと?
では、伝説の大魔法使い殿か?』
瞬間、魔法使いの目が憎しみを帯びたように見えた。
『それは…戦士様が知らなくて良い事です』
この時、一番の戦士は、魔法使いをうたがった。
(あいつらにも、城の事を話さないように教えておかなければ)
美味しそうに、食事をしている戦士2人を見て、一番の戦士は思った。
次の朝早く、王子は、魔法使いに起こされた。
『魔法の修行でございます』
魔法使いが運んできた朝食を食べ終えると、魔法使いと王子は、城の塔へと向かった。
そこには、バルコニーのような部屋だった。
魔法使いが、呪文を唱えると、王子と同じくらいの竜が飛んできた。
燃えるような赤い目。
岩のような背中。
鋭い爪。
翼にも爪がある。
『私の竜です。
この竜を自在に操る事が出来れば、王子様は必ず、城の竜に選ばれるでしょう』
王子は、魔法使いから呪文を教わり、何度も練習した。
夕方には少しずつ操れる様になってきていた。
深夜、魔法使いは、鏡の前にいた。
『どうじゃ、我が息子の力は』
鏡の中の女性が、魔法使いに聞いた。
『申し訳ありません。
王子様には、お力が無いようです』
『それでは、我々の願いはどうなるのじゃ!』
女性が声を荒げて、辺りを見回した。
『王子様が竜に選ばれるまで、私がつきましょう。
王子様が、ご自分の力だと思うよう、私が魔法を使います。
その後は…』
女性は、魔法使いが言いにくそうにしているのを察した。
『分かっておる。
王子が竜に選ばれたなら、そなたを、城の大魔法使いとして扱おう』
『ありがとうございます』
魔法使いは、床に頭をつけて礼を言った。