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龍運  作者: 星凪 怜
7/13

竜の首

王子と戦士達は、竜の首に入っていたが、前進に悪戦苦闘していた。


毎日のように降る雪。

時には吹雪となり、前後ろ、上下の分からないホワイトアウト状態になる。

このような時は進めない。


だから、つかの間の晴れには、休まずに進む。


町で買った、大きな馬車と、2頭の馬。

王子や戦士達はもちろんの事、馬も、毛皮のマントを着て、完全防備。

馬車の両側と屋根には、扉のような物が付いていて、それを前に広げると、馬の風避けとなる。


戦士達は、数時間毎に交代して、手綱を握る。

交代しなければ、いくら防寒していても、凍えてしまう。


その証拠に、時々、凍えて亡くなってる人の、手足が雪から出ている事がある。


馬車の中では、火鉢で暖をとっている。


『王子様、あまり外を見ない方がよいですよ』

『そうですよ。死体が転がっていて、気味が悪い』

戦士達が王子に話すと、一番の戦士が

『死体を怖がる戦士か。お前達は、城に帰ったら、馬の番にでもなるか?』

と、戦士達に言う。


『あ、いや、王子様が、怖がるかと』

戦士達は、馬の番にはなりたくないようだ。


『吹雪いてきたな。また、しばらく休憩だ』

手綱を握っていた、一番の戦士が言う。

小さな窓から、王子が外を見る。

雪が窓に当たる。


一番の戦士は、馬の風避けで、簡易な馬小屋を作り、馬に食事をさせ、馬車の中に入った。


竜の首に入って5日目。

半分は来たのだろうか?

王子と、一番の戦士は同じ事を考えていた。


魔法使いはどこにいるのだろう?

それより、いつ、竜の首を出られるのだろう。


竜の首に入ってすぐ、雪で前進出来ずに、戻る男たちを何人も見た。

頑張って進んでも、凍えて死んでしまう。


竜の首を、馬車で通れるのは、貴族。

馬車は、庶民には手が出ない程の値段。

たまに、何人かのグループで、馬車を買う事もあるようだが。

しかし、グループの人数が増えると、馬車も大きくなり、馬も2頭では済まなくなる。


結局、毛皮に身を包み、竜の首に少しだけ入り、戻るという修行も生まれたらしい。


『早く晴れるのを祈ろう』

王子は、目を閉じて祈り始めた。





『サヤ、食事が済んだら、これを着なさい』

『はい』

老人は、熊の毛皮のマントにブーツ。

後ろから見たら、熊と間違えそうだ。


老人がサヤに手渡したのは、鹿の毛皮のマントと、厚いフェルトのブーツ。

『暖かい‼』

サヤは、宿を飛び出した。


宿の前には、小さな馬車。

『これに乗るの?』

サヤは目をキラキラさせている。

旅を楽しんでいるかのように。


『竜の首は、歩いていては、凍えて死んでしまうからの』

『馬もマント着てる』

『馬も人と同じじゃ』


サヤと老人が馬車に乗り込むと、馬は歩き出した。

『手綱!』

サヤが馬車から出る。

『手綱はいらんよ。こ奴は、何度も竜の首に入っている。道は知っている』

老人は、火鉢に火をおこしながら言った。

『賢いんだね』

『ワシの相棒じゃからな』


サヤが馬車の中に戻ると、老人は、火鉢で手を暖めていた。


馬は、馬車を竜の首に連れていった。

『雪‼』

小さな窓から、外を見ていたサヤが叫ぶ。

『すごい‼あっちも、ずっと真っ白‼』

『今日は晴れていていいのう』

『外に出てもいい?』

サヤが聞いた。

『晴れてるから、大丈夫じゃ』


サヤは、馬車を飛び降りると、雪の感触を楽しんだ。

サヤの村の方は、雪は舞うことがあっても積もらない。


30分程遊んで、サヤが馬車に入ってきた。

『向こうから、馬に乗った人が来る』

サヤの言葉に、老人は馬車から顔を出す。

『ああ、あの男は、竜の首を進めなくなり、引き返す者じゃ』

『引き返す?』

『今日は晴れているが、竜の首は気まぐれで、世界を真っ白に変える。そうしたら動けない』


世界が真っ白になるという事は、サヤには分からない言葉だった。


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