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詐欺師と令嬢  作者: 和将
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誘拐?日目

どうもはじめまして。精々失踪しないようガンバって書いて行きます。


「どうしてこうなった。」


男はもう何度目になるのかわからない自問を行なった。


男は、詐欺師だった。否、だったという表現をするのはおかしいだろう。男は詐欺師から足を洗った訳でも、今まで行なった悪事がバレて捕まってしまった訳でも無いのだから。そして、今現在も幸運にも男は追われてはいるが、捕まっているわけではなかった。


男は自分が小悪党であることは充分に理解していた。正直、今まで捕まる事なく逃げて来れたのは自分がルパンや五右衛門のような大犯罪者だからでは無く、ただ行なってきた悪事が被害者にも気づかれない程小規模、分かりやすく言えばショボいことだから問題なかったのだ。そこらの安物の茶器やらをちょっと高く売りつけてきただけで、頭おかしい値段を盗ろうとしなかったから誰も怪しまなかった、気づいたとしても誰もがもう良いかと感じるほどちゃっちかったからあまり問題にならなかったのだ。


男はそうやって稼いだ子金を賭け事や株でちまちま増やしたり減らしたりする小悪党、駄目人間であった。


そんな自分が何故こんな事になっているのか。



今まで捕まらずにいて慢心でもしていたのか、最近金が心許なくなりすぎて自暴自棄にでもなっていたのか、いやどうせ上手くいかないからすぐにでも諦めて逃げようと思っていたのかもしれない。


男は人生の中でも最も壮大な悪事を、それも身代金誘拐を行おうとした。

ある名家の令嬢を攫い、その家の親から金を騙し盗ろうとしたのだ。



名家のお嬢様といってもただの小娘、やった悪事がちゃっちいとはいえ今まで多くの人を騙してきた男の口八丁なら簡単に丸め込んで連れて行くことはできるだろう。あとは何時ものように親が惜しまない程度の金を要求して、金を受け取り次第この女を置いていけば良かったのだいや今からでも遅くはない今すぐそうしようつーか金ももう要らないからさっさと逃げさせてくれ俺はもうこれに懲りて誘拐なんかしない否もう詐欺師も辞めてどっかで漁師にでもなるから実家に帰らせてもらいますもう嫌だなんでどうしてこうなった‼︎


「すみません。」


あの女の声が聞こえる。自分に話し掛けているのだろう。今は車に2人で乗っているのだから自分以外に話しかけるとしたらイマジナリーフレンドぐらいしかいない。無視だ、絶対に無視しよう。否、帰してくださいって言ってくるのならそうしよう今すぐそう言ってくれ。


「次は何処に連れて行ってくれるのですか?」


突っ込みたくなるのを寸前で堪える。言ってることが既におかしい。連れて行ってくれるのですか?だと、普通そんな言い方しないだろ。まあ口が強いヤツなら皮肉げに言うこともあるかもしれないが、この女の言い方はそんなものとは全然違うのだ。

普通攫われた人が攫った人に対してする反応は怯えるなり、犯行的になるなりマイナスの反応であるはずだ。それが普通だよな?俺がおかしい訳じゃないよな?


そのはずがこんな…



「やはりここは教会にでも行きましょうか?いえ、逃避行だとすると質素なアパートでも良いかもしれませんね。」


満面の笑顔を浮かべ、周りにお花畑でも見えそうな嬉しさを隠そうともしない態度をするはずが無いのだ。


つーか教会ってなんだよ。質素なアパートだとか逃避行だとか俺らは駆け落ちしてるような関係じゃなかったはずだ。加害者被害者の関係の筈だ。


「2人でお父様から逃げましょうね。ア ナ タ ♩」

「お前と結婚した覚えは無えよ⁉︎」



…マジでどうしてこうなった。




この不運な詐欺師の今の状況を簡潔に説明するとこうなるだろう。


身代金目当てで攫ったご令嬢がヤバイ奴だった。

自分で書いといてアレだけど、この女の人怖いよ…。

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