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にいと☆プリンセス  作者: 青梅次郎
3/5

第三章 探れ!暴け!彼女の楽園(エデン)を!

「僕も行っていい!?ね!!いいでしょ!!?」


「嫌だよ」


「なんでさー!!!」


 俺の前の席で椅子にまたがった状態で座って、背広の上に腕を組んでふて腐れるこいつは、黄坂勝おうさか しょう


 高校に入ってからつるんでるダチ公だ。

 

 …しかし、根っからのサボリ魔で週に一回しか学校に来ない。


 ……まあ不登校のあいつ、絹織よりはまだマシな方ではあるが……。


 彼はその絹織に会いたいとせがんで来たのだ。


 ………正直あまり乗り気ではない。


 今は宿題の届け係として彼女の家に訪問しているのだが、実際のところは俺の彼女に対する好意による行動であり、下心が全くない訳ではない。


 そんな片思いの彼女を他の異性に会わせるのは少し抵抗感がある。


 彼女程「美少女」という言葉にふさわしい美貌を持った女性はいないと言っていい。


 それほどの彼女に会わせてみろ。俺のように一瞬でコロッと堕ちるだろう。


 ……中身がアレだけども。


「やなもんはやなの。あっちいけ。シッシッ」


「んなっ!!まるで野良猫のような扱われよう…ぬぬぬぬ~!!!」


 俺より三十センチ低い黄坂は俺を下から睨みつける。…威嚇のつもりだろうが全く怖くない。


「会ってどうすんだよ。今日の宿題渡して昨日の宿題を貰って、ハイ終わり。こんなことの為についていっても何も得にならねーぞ」


「美少女に会える!!」


「…………」


 俺は呆れて声も出なかった。


「……相変わらずだな、おまえの女好き」


「え?そう?」


 キョトンとそう答える黄坂を見てさらに呆れて思わずため息をつく。


 そう。彼女にこいつを会わせたくない理由はもう一つ。


 こいつが大の女好きだからである。


 別名、女泣かせの勝ちゃん。童顔な幼い受け身な見た目の割には気になった異性は片っ端から狩っていく肉食っ子なのである。


 俺は一年の頃からこいつの女狩りを見て来たが、その凄まじい内容はここでは語れない。


 しかもかなりの浮気性で付き合った期間最高三週間。そしてすぐ女を作るもんだからこんな別名、というか名称がつけられてしまうんだよ…。


 本人も気にしてないみたいだし、すぐ女が出来てることから女もこいつがそういう奴だってのは分かって付き合ってるんだろう…。


 だよな……?


 黄坂が誰と付き合おうと関係ないが、絹織がその対象となったというなら話は別だ。


 しかも俺の想い人だ。そう簡単にあいつに渡すもんか。


「……なんか長々と僕の失態を語られたような気がするんだけど…」


「気のせいだ」





「あー伝説の天才美少女に会える~!」


「はー……」


 結局、俺はこいつを追い払うことが出来ず、黄坂を連れて彼女の元へ行くことになった。


「ささっ!」


「………」


「ささっ!さささっ!」


「………………」


 俺は咄嗟に後ろを振り返る。


 すると、黒尽くめの何者かが道の端を歩いていたが、俺の視線に気付き、サッと電柱の後ろに隠れる。


「今から紫小里さんのところへ参られるご様子ですわ…。ふふふふ…。和白、昨日はまんまと逃げられてしまいましたが、今回はそうはいかなくってよ!」


 ……小声、のつもりだろうか。話しの隅々まで聞こえる音量でしゃべる紅。


 俺はあえて気付いていないフリをして絹織家へずんずん進んでいく。





 学校から歩いて三十分弱。ようやく絹織のアパートに到着した。


「……優等生の住処にしちゃあ、…意外というか……」


 お前、漫画の読み過ぎだっての。


「なんだ、文句あるなら帰ってもいいぞ」


「んなっ!!ここまで来たのにそう簡単に引き下がれるかっての!!」


「……こういうところは頑固なんだから…」


呆れて俺はそのまま彼女の住居に向かって歩いていく。


そして彼女のネームプレートが付いた扉、二一〇号室まで来て、インターフォンを押した。


ピンポーン


「……返事がないね」


 留守なのかな?と黄坂は呟くが俺は再度インターフォンを鳴らす。


 ピンポーンピンポーンピンポーン


「おいおいおい和白ぉ……ちょっとやりすぎじゃない?近所迷惑だよ」


 オロオロ俺を心配そうに見つめてくる黄坂だったが構わずインターフォンを鳴らしまくる。


 ピンポーンピンポーンピピピピピンポーンピピピンポーン


「こらこら!インターフォンで遊ばないの!いい加減にしないと通報されるよ!」


 次に俺はノックを付け足しインターフォンをさらに鳴らしまくる。


ドンドンピンポーンドンドンピンポーンドンピンドンピピンポードドンドンピンポピポピポピンポー


ドンッ!!!!


「だあああああああああうるさあああああああああい!!!!」


 後ろに一つ結びした彼女、絹織紫小里がすごい面相で出て来た。


「お!出て来たな」


「出て来たな、じゃないわい!!てめぇふざけてんのか!!ピンポン連打しやがって…近所迷惑もいいとこじゃんどりゃああああ!!!」


 むしろお前の声が近所迷惑なんじゃないのか、とつっこみたくなる程怒鳴って来た彼女だったが、一方……


「………」


 隣にいた黄坂は初めて出て来た彼女にびっくりしているようで呆然としている。


 へっ、ざまあみやがれ。


 さらに彼女の真の姿を知らしめそうと部屋の中に入っていった。


「んご!!お主!!勝手に吾が領地に入るではない!!」


「ちゃんと宿題やったか確認するだけだ」


 ずかずかと彼女の部屋へ足を進める俺とそんな俺を追いかける絹織。


「…………あれが……しおり……ちゃん…?」


 驚きのあまり微動だに出来ない彼の背後からひょっこりあの黒尽くめの彼女、紅が忍び込んで来た。


「ちょっと失礼しますわ!」


「うわっ!」


 そのまま彼女は「おじゃましますわ」と一言断ると靴を脱いで、その脱いだ靴を揃えて端に置くとこそこそ彼らの後を追う。


「……僕も行かなきゃ…いけないパターンだね…」


 ようやく硬直が解けた彼は開いた扉のドアノブを掴んで中に入っていった。


中は明かりを付けていないため、外から入ってくる夕日の斜光が当たりを照らし、そのおかげで部屋の中の様子が分かる。


奥に進むと彼らの声が聞こえて来たので近づいていく。


すると扉に張り付いて聞き耳を立てている先程の彼女がいた。


彼女は黄坂に気付き、しーっ、と人差し指を唇に付けて静かにしてもらうようお願いする。


彼は承知したのかにっこり笑いドアノブに手をかけ、思いっきり開けた。


「きゃー!!」


扉に張り付いていた彼女は当たり前だが、そのまま部屋の中に飛び込むように倒れ込んだ。


「あ、来たのか紅」


「おおおおおおお!!!紗利菜殿ではないか!!!」


その紅を見る俺と絹織は争い合って所々が乱れていた。


…まあ一方的に絹織が先程の怒りを俺にぶつけて来ただけなのだが、今は両頬を引っ張られて地味に痛い。


そして紅に気付いた彼女はその引っ張っていた手を離し、バチンと音を立てる。


「いたっ」


「なんとここまで参られたのか!!そこまでしてワイに会いに来てくれたのでござるか!!?」


「どうしてそうなるのですの!!?」


うつ伏せに倒れ込んだ姿勢のまま絹織にツッコむ彼女。


「それよりも!!説明してくださる!?和白!!」


「ん?何を?」


俺は彼女にこれでもか、というぐらい引っ張られて赤くなった両頬を押さえながら彼女の問いの意味を待つ。


「今の状況ですわ!!なぜ宿題を渡すのに部屋にまで入らなければならないのですか!!」


「ああ確かに。ポストにでも入れておけば済む話しだよね」


紗利菜ちゃん冴えてる~!と茶化す黄坂。


チッ、まだいたのかよ…。


彼女を見て懲りて帰ったのかと思ったのに…。


「…それじゃ宿題出さねーだろ」


「だからってそこまでしなくてもよいのではなくって!?」


いつの間にか起き上がった紅が腕を組んで俺を睨みながら怒鳴るように話す。


「理屈なんてどうでもいいだろ。俺は俺自身の正義の為に…」


「あー!僕このゲーム知ってるー!」


 紅の方に加戦したかと思いきや突如絹織のゲームソフトに反応し、それを手にする。


「おう!それは桃太郎●鉄でござる!通称「桃鉄」!」


「何それ?」


 俺と紅が首を傾げていると、えっ、お前らこんな巷では有名なゲームを知らないの…?みたいな、時代遅れを哀れむかのような視線を二人が送って来た。


「……なんだその目は」


「ねえねえ聞きましたぁ?奥様ぁ。あの方達、桃鉄を知らないんですって!!」


「んまあ!!信じられないざますわね!!あの桃鉄を知らない人が存在してる、いや、存在しちゃってるなんて!!」


 んまー!!と二人は口に手を当ててどこぞの婦人の物まねをして俺達を馬鹿にしている。


「てめえら…」


「それはそうと!早速桃鉄プレイしましょうよ!!私、先程からしてみたくてうずうずのドッキドキ状態でやばいんですの!!」


「あらあらあら!そんなに急かさなくてもプレイしますわよ、桃鉄!」


「楽しみだわあ!桃鉄!」


「桃鉄ザマス!!桃鉄!」


「桃鉄ザマスわ!!桃鉄!」


「桃鉄ザマスよ!!桃鉄!」


「桃鉄ザマスわね!!桃鉄!」


「桃鉄ザマス!桃鉄!」


「ううううううるせええええ!!!」


二人のしつこいやり取りにいらだちが募り、二人を鎮めようとするも俺の声は二人には届かず。


「キューブ版しかないザマスが、よろしいザマスか?」


「ザマス!ザマス!」


「いいよ!いいよ!って言ってるつもりなのかそれ!?」


ザマスが、語尾でもなくなってしまった…。なんだこれ。





「ぎゃああああああ!!貧乏神に取り付かれてしまったでござるうううう!!」


「しおりちゃんどんまーい☆」


「ぐぬぬぬぬぬ…一番近いヤツは誰でござるか…」


「あ、やべ」


「ほう…でゅふふふふふ…さいとうさんですか…でゅふふふふふ…」


「さ…さん付け…」


「こらっ紫小里さん!和白に手を出したら私がただじゃ置きませんから!」


「ぎゃふ!」


…まあ、今の会話を聞いてくれたらわかるように、結局俺達含め4人で桃鉄というゲームをプレイすることになった。


宿題の方はというと、さすが優等生。


一週間分の数教科の宿題を渡して翌日にすべてお終わらせていた。


…まあそれをやるだけの時間があるから当たり前なのかもしれないけども。


「うぉっしゃああああ!!うまい具合に斉藤に擦り付けたどー!!」


「…あ」


「しっ、紫小里さんめ…よくも和白を…!!待っててください!!和白!!今私が助け行きますわ!!」


「紗利菜ちゃんそうゆうゲームじゃないからねこれ」


「桃鉄」。それは簡単に言うと人生ゲームのようなもの。


目的地を決め、それぞれ社長として千万円を所持する。そして電車に乗りサイコロを降って各地をまわり株を買ったり資金を増やしたりするもの。


まあ気になったら実際にゲームをやってみたらいいんじゃないのかな、うん。


「ああっ!!(いち)!!残念ですわ…」


「十二マス分あるから全然届かなかったね……」


「つーか紅、お前さっきから一マス分しか進んでなくね?」


「うぐぐ……」


「そんなドジっ子な紗利菜殿がとてもキュートでござる!」


「うううっ!!うるさいっ!!」


となんやかんやにぎやかにゲームを楽しんでいた俺達だったが、黄坂のとある一言で空気が一変することになる。


「あーもうこんな時間かあ…そういやしおりちゃんのお母さんは?今仕事なの?」


と六時半を指す時計を見た後彼女を伺う。


「…………」


突然静まり返った紫小里に一同は少し不安になる。


「…え~っと…アレかな?聞いちゃいけない感じだった?」


嫌な空気が漂う中、すう、と彼女、絹織の口が薄く開かれた。



「…それは遥か昔のこと」



「………えっ?」


あーあ…始まっちゃったよ…。


俺は大きくため息をつく。


「えっなにあれ。和白、何が始まるの?」


「………まあ…見とけば分かる…」


「?」


黄坂と紅は顔を合わせてお互い首を傾げている。


「…ワイはとある女神のもとに生誕した」


「えっなんかカッコいい」


「…しかしその女神はワイを創った後すぐに虚空の彼方へ消えてしまった…ワイに使命を残して」


「なになに?」


珍しくあの紅も彼女のーおそらく創作話だろうー話しにのめり込んでいる。


お…お前ら…!!なんで聞き入ってんだよ…!!


「その使命…とは…」


「「その使命とは?」」


「………」


「………」


しばらく再び、だが先程の空気とは違う、息をのむー俺以外がー雰囲気が漂っている。


ごくり、と生唾を飲み込む音が部屋に響いた。



「……詳細はWEBで!!チェケラ!!」


ズコーーッ!!!


……なんだそりゃ。



~*~


その後も彼女の親について訊ねると似たような創作話ではぐらかしてしまい、切りがないので俺達は渋々彼女の家をお暇することに。


「けーっきょく、しおりちゃん情報あまり収穫できなかったなー。ゲームが得意なことくらいしか分からなかったし…。」


先頭を歩く黄坂はふて腐れながら後頭部に両手を組んでだらけている。


「何だ彼んだ彼女は謎に包まれてますわよね…。不登校になった噂もほとんど聞きませんし…」


紅は考え込みながら難しそうな顔をしてテトテト歩いている。


確かに絹織は色々と不透明な部分が多すぎる。


不登校の訳。家族構成。


そして、あの二次元に対する執着心。


いつか聞こうとして結局聞けずじまいになってしまい…、もしかしたら聞いても今日みたいにはぐらかされるかもしれない。


結構ハードルが高いかもしれないな…。 と、俺も二人のように考え込んでいると、 ドン と誰かにぶつかってしまったようで、その衝動音とともにドサッと俺にぶつかった人が倒れ込んだ。


「あっ!すいません!大丈夫ですか?」


「さすが鉄板の胸板の持ち主と呼ばれてる和白!ビクともしませんでしたわ!」


「初耳だしまずは被害者の方心配しようよ紗利菜ちゃん」


俺は慌てて、倒れた人に手を伸ばす。


か細い容姿にサーモンピンクのロングヘアーの…レディーススーツからおそらく女性かと思われるが、彼女の手を取りを起こそうとすると



「や、やめて…!!」



バッと手を払われてしまった…。


… なんかこうも潔く拒まれると虚しくなるな…。



………ん?



「って!!ちょっと!!これやばいよ和白!!」


わずかだが違和感に戸惑ってると、黄坂が急に声を上げて冷や汗をかいて少し血の気が引いた顔で俺を心配そうに見つめる。



「この人…けがしてる…」





~*~



「やっぱりな」


「………」


「………」


片手、片腕等所々に湿布が貼られた先程の彼女と向かい合うよう座っていたのは、絹織紫小里。


そして、けが人は彼女の母親だった。


怪我を発生させてしまった俺達はあの後慌てふためき病院に連れて行こうと提案すると突然その女性は猛ダッシュで駈けだしたので慌てて俺達は彼女を追いかけた結果、絹織の住む団地にたどり着いてしまった、ということになった。


彼女は昔からか弱く、重いものを持つと骨折したりぎっくり腰になってしまうという。


それで周りに気を使わせる羽目になり、それが裏目となって怪我をしたら自力で治療する癖がついてしまった模様。


「お、驚かせてごめんなさいね…」


「いえいえ、俺の方こそすいませんでした…」


「も~しおりちゃんもお母さんいることくらい教えてくれたっていいのに~」


「………」


母親が来てから絹織の様子が大分変だ。


先程から俯いてスマホをずっといじってこちらを見向きもしない。


その目も冷たく、まるで嫌なヤツと同じグループになって不機嫌になってるヤツみたいな、そんな感じ。


「…絹織?」


「用は済んだであろう?さっさとお暇していただけないだろうか」


ギロっとこちらを睨みつけるように見る彼女。


あんな能天気にゲームしている彼女から想像できない、冷たい態度に俺達は一瞬固まってしまう。


「そ、そうですわね。お父様もお母様も心配なさっていることだろうし…」


「だ、だな!俺も帰ろっと!!」


二人は彼女のいつもとは違う一面に恐れをなしたのか、「おじゃましましたー!!」とそそくさと絹織家を後にする。


俺は初めはびっくりしたけども、今は落ち着いて今の彼女を受け入れられている。


「…お前も帰れ」


「嫌だ」


と即座に拒否するとチッと舌打ちをする彼女。


まるで別人じゃないか…。


いや、これが真の彼女の姿なのかもしれない…。


「…このままいると学校内のボス猿のいい餌になる。私はもううんざりなんだ。そいつらのおもちゃにされるのは」


「………」


俺は黙って彼女の話しを聞き続ける。


このままいけば彼女の過去の話しを聞けるかもしれないというのと、それからインドアからアウトドアにするキッカケになるようなものが見つかるかもしれないと思ったからだ。

しかし、事はうまく進むものでもないようで、はーっ、と深い深いため息をこぼすと


「…寝る」


と低く呟くように話すと立ち上がり、そのままリビングから姿を消してしまった。


「……っあーーーーっ!!上手くいかねえなあー!!」


この胸の中のもやが残ってる感じ!


俺これがすっごく嫌いなんだよ!!


よくドラマでもある「…これ結局何が言いたかったの?」って終わり方みたいな、はっきりしないヤツーー!!


…まあこの後俺が彼女を追いかけて追求するのもよかったのかもしれないけども、そこまで彼女のプライベートにズガズガ土足で入り込んでもいいものなのだろうか?と思い踏みとどまったのだった。


俺がリビングで髪をグッシャグシャにして葛藤していると、そっと母親が俺の肩にそっと触れる。



~*~


『高校一年の時にいじめを受けていたらしくって…。私たち夫婦は気付けず…そしたら急に部屋に閉じこもって…もしかしたら、って思って学校側に連絡取り入れて、なんとか対応してくれたみたいなのですが、それでも出てこなくって…。心配して最悪な事態を覚悟して部屋を覗いたら…。想像つかない状態がそこにあって…オタクっていうんですかね。それになった娘を見て旦那は撃沈して…。そのままどこかに行ってしまいました…。でも、娘がああなってしまったのは私たちのせいかも知れません…。』



細々と話す絹織の母親、絹織千恵子ちえこさんの瞳からはうっすら涙が浮かんでいた。


あんなオタクでも複雑な事情を抱えていることを知ってしまった俺だが、だからといって彼女にやってやれることがあるのか、と聞かれても何も答えられない。


そのいじめ問題も起こっている最中ならなんとか庇えたかもしれないけども、それも過去の話になってしまった。




「…俺は…絹織の何になりたいんだ?」




星が瞬く夜空を見上げて小さく呟いた。

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