4話
王様達との謁見が行われたその日の夜、勇者を迎える為の晩餐会が開かれた。机の上には魚、肉、野菜様々な種類の食べ物が所狭しと置かれていた。どうやらバイキング形式のようで、皿を片手に好きな物を取っていく。どうやら食文化の分からない異世界に対する配慮だそうだ。そして食べ物を取りそろえた俺達は指定された座席へと向かうのであった。自分の席に辿り着くと俺の横には当然のように香織が座っている。その満面の笑みには城の兵士達もニッコリだ。それは当然だろう城全体を揺るがす程の人物が荒れ狂うとどうなるかなんて兵士をやってるんだ簡単に想像出来るだろう。そして視線を山田、草薙の方に向けると僅かに愛想笑いを浮かべている。彼らの妬みの心なんてものはさっきの惨劇をみて失ってしまったようだ。そりゃそうだろう、俺だってあんな姿みたら百年の恋も冷めるわ。
「はい、あーん。何か夫婦みたいだね」
「お、おぅ」
「ほら、次これ食べようよ」
仲睦まじい姿だ。そう周りの全員がガタガタと震えてなければな。食べ物がよく床に落ちる晩餐会だと思いながら俺は口を開いて言われるがまま食事をする。うん美味いと感心しながらも周囲の反応を見るとなんだこの晩餐は? と思わざる得ない。
「勇者達どのそれではお部屋にご案内させて貰います」
大臣と呼ばれていた男のこのセリフで晩餐会は終了したのであった。俺達はゾロゾロと大臣についていったが、俺は「ちょっとトイレ」と言ってその場を離れたのであった。
トイレから出てくると周りには誰も居なかった。勇者でないものには興味は無いとそう言っているようであるが俺にとっては好都合だ。そう思いながら一人でこっそりと水晶の元へと向かう。
なぜ水晶の元へと行くか?それはスキルの名前は覚えたがよく分からない効果だったからだ。どうやらあの水晶はスキルの内容まで見れるらしい。これは晩餐会での情報収集の賜物である。情報こそ戦力とは言わないが、あって損はするものでは無いなと実感した瞬間である。
誰も居ない謁見の間へと辿りついた俺は水晶を見つけ、そこにむってトコトコと歩き出したのであった。そして水晶に手をかざすと水晶には文字が浮かびだす。
セーブポイント設置…光る球状の物質を設置する。光る球状の物質は勇者のみ視認可能。
転移…目標の地点へと移動 (勇者が瀕死時に強制的に発動。それ以外は使用不可)
クロノリカバリー…時を戻し、どんな怪我も直す。死者にも適応可 (勇者が瀕死時のみ勇者を対象に使用可。ただしセーブポイントに効果対象勇者を配置しない限り、その勇者は目覚めることは無い)
瞬歩…視認不可能な速度で移動が可能 (勇者が瀕死時のみ使用可)
パーフェクトシールド…全ての攻撃を受けない (勇者が瀕死時のみ使用可。スキル発動時攻撃不可)
ガイド精霊…主人を導く光の精霊。精霊自身には攻撃力は無い(勇者が瀕死時のみ使用可)
強そう……どれをとってもチートだ。スキルの最後にある注意書きがなければな。スキル使用できる時が限定的すぎるわ! 自分の能力ながら思わず突っ込んでしまったではないか。俺に与えられた称号、そしてこの能力、余り考え無くても何をさせよう何てのはすぐに分かる。
この説明文から考察し俺の能力はどうなるのかと言うと。勇者がやられた時、俺は強制的に勇者の元に転送されて、その時だけ力をやるから勇者を回復させてセーブポイントまで運んで、捨てていけって事だった。おまけに回復させたら、瀕死状態の勇者を設置したセーブポイントにおかないと目覚める事ない睡眠状態になるって書いてある。
まじかよ。人力セーブポイントかよ! あー夢壊れるわー。勇者が倒れた後は精霊的な何かがセーブポイントまで優しく運んでくれるんじゃないのかよ。回復させて運んでるだけって……そして現実を突きつけられた俺は悲しみに打ちひしがれながらトボトボと自ら割り振られた部屋へと帰るのであった。