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2話

 意識を失った俺は目を開くと、視線の先には城に存在する謁見の間のような場所が広がっている。中央にそびえ立つ玉座、中央に引かれた赤い絨毯。更に天井からは豪華なシャンデリアが吊り下げられていた。周りには全身に鎧を着た兵士が何人も立っており。金の刺繍だろうか豪華なマントを羽織り、金の王冠を頭に乗せた男が玉座に座っている。


 山田、草薙、香織は辺りをきょろきょろして「映画のセット?」とか動揺しながら言っている。俺は不審がられない程度に状況を把握していると、玉座に座っている小太りの男が口を開く。


「急にお主達を異世界から呼び出して申し訳ない。私はこの国、つまりザンガール王国の王である。お主達には我が国を救ってもらいたくて呼び出した」

「あ? ザンガール王国? そんな国聞いた事ないぞ。異世界? 何言ってるんだこのおっさんは?」

「無礼者! 王よ、こんな品の無い奴らなんぞに頼らなくてはならないのですか?」

「よい、彼の者は突然の事に動揺しておるだけじゃ」


草薙が王と呼ばれていた人に返事をしていた。その王の横に控えていた老人に怒鳴られてしまった。こんな訳分からない状態になってるのに良くそんな態度取れるなと俺は能天気な草薙に関心する。仕方ない、俺が話をするか……


「王様、我々は今どういう状況なのかさっぱり分からないのです。どうか我々に詳しく説明して頂けませんか? あと僕達の世界と違うなら何か証明できる者はありませんか?」

「ふむ、お主は話が分かるようだな。まずはこれを見るがよい。ファイア!」


そう言い王様は人差し指を伸ばし前へビシッと腕を伸ばした。すると指からまるでライターの様に炎を出してみせた。その魔法の様な物を見て、俺以外の皆はここが異世界だと納得したみたいだ。王様の指からは徐々に炎が消えていく。パフォーマンスは十分だろうと言う表情を見せながら王様は再び話し出す。


「この世界には魔王と呼ばれる者がおる。魔王は自らの配下の魔物を使ってこの国を……いや世界を支配しようとしておる。そこで我らはある秘術を用いて異世界から呼ばれる勇者達を召喚する儀式を行った。そして我らの呼びかけに答えてくれたのがお主達じゃ。そしてお主達にはどうか我が国を救って欲しいのじゃ」

「そんな事言ったって俺達は普通の人間ですよ。今まで戦いなんてやった事ないんで、倒せる訳がないじゃないですか」

「それは心配せんでよい。お主達はこの世界に来た時に、強力な力を得ているはずじゃ。この水晶に手を触れてみれば己の能力を図る事ができる」


 そう言って王は部屋の隅に置かれた巨大な水晶へ指を指す。その水晶の中には白い煙が渦巻いていた。そんな不思議な水晶を目の当たりにした山田、草薙は気持ちが落ち着いたのか「何? 俺強くなったの?」と言いながら大きな水晶の方へと向かっていた。


 異世界に来たと言う雰囲気は二人を酔わすのには十分だったようだ。何の考えも無しに二人は水晶に触れに行ったのだからそう思っても仕方ないだろう。水晶に触れたその時、中に渦巻く煙がまるで生き物の様に動きだし文字を形成していった。


山田 浩二

職業:勇者

スキル:全属性魔法、剣術LV10、体術LV10、身体能力強化LV10、全属性耐性、異常状態軽減、異世界言語、アイテムボックス、鑑定、勇者の加護


草薙 一郎

職業:勇者

スキル:全属性魔法、斧術LV10、盾術LV10、身体能力強化LV10、全属性耐性、異常状態軽減、異世界言語、アイテムボックス、鑑定、勇者の加護


周りにいた兵士達は、二人のステータスを見て、おぉと歓声を上げる。二人は周りの評価を見て大変満足そうであった。どうやら相当良い能力であったのだろう。だが俺にとっては、この世界の基準がどうなってるのか分からないのでどうすごいのかさっぱりだ。


 そして周りからの勧めで香織と俺も続いて水晶に触れる。


佐藤 香織

職業:勇者

スキル:全属性魔法、回復魔法強化LV10、防御力強化LV10、身体能力強化LV10、全属性耐性、異常状態軽減、乙女の怒り、異世界言語、アイテムボックス、鑑定、勇者の加護


 香織が手を触れると、ステータスが表示された。それを見て周りの兵士達が再び歓声を上げる。そしてついに俺の番が来た。


 俺は恐る恐る水晶に手を触れると水晶の中に文字が浮かび上がる。


一条蒼汰

職業:村人

スキル:異世界言語


シークレット

職業:セーブポイント

スキル:セーブポイント設置、転移、クロノリカバリー、瞬歩、パーフェクトシールド、ガイド精霊


何だこれは、シークレットってなんだ? そして周りの視線が何か痛い。もしかして……


「香織、俺のステータスってどう見えてる?」

「ん? 村人でスキルは異世界言語って書いてあるよ」

「やっぱりか……嫌な予感がしたんだよ」


つまりあれか、皆には、このシークレットと言う所が見えてないって事か……俺には隠された力があると言っても、誰も信じないだろうな。それに俺のスキルを見て王様、大臣と呼ばれる人物の目が変わる。どうやら良くない事を企んでるようだ。どうせ無駄飯喰らいは要らないって所だろう。これは、こいつらと一緒にいると危険になるな、そう思った俺は王様に向かって口を開く。


「王様、私はどうやら戦う力は無かったようですので、彼らと同じ道を歩めそうにございません。私はこのまま、国民として暮らして行きたいと思うのですかどうでしょうか?」

「ふむ、確かにあのスキルでは戦う力は無いようだ……大臣、少し金をくれてやれ、そしてどこへなりと、行くが良い」

「ありがとうございます。それと最後に聞きたい事なんですか。我々は元の世界へは帰れるのですか?」

「それは無理じゃ。この世界から元の世界に帰ったものなど一人も居ない、だからこそ勇者様方には本当に申し訳ない事をしたと思っておる」


王は3人に向かって異世界から戻る術はないと説明し、謝罪を行った。そう3人に向かってだ。俺の事など眼中に無かったようだ。だかそれでも良いと思った。どうせこの王様と二度とあう事はないだろうから。


「モーテル大臣、この者にしばらく生活出来るだけの金銭をくれてやれ」


王様がモーテルと呼ばれる大臣に指示を出す。大臣は何処からか出した麻の袋を手に持つと、俺の元へとゆっくりと歩き出した。取り敢えず膝をついて受け取ればいいのか? えーい当たって砕けろだ! 俺は大臣が来るまでに膝をつき頭を下げ声がかかるのを待つ。


「ほほぅ、中々分かっているではないか、王からのお慈悲だありがたく受けとれ」


俺は麻袋を受けとると中を改める。軽く見て金貨が100枚程だろう。この世界の相場は分からないが金貨が安いと言う事は無いだろうと踏んだ俺は、うっすらとニヤケ面になってしまう。そしてキリッとした表情で山田と草薙の元へと歩き出す。何故二人の元に向かったか、それはこの城を出る前にやらねばならない事があるからだ。お前らにしか頼めない事だ。そしてお前らなら喜んで俺の頼みを聞いてくれるはずだ。そう思いながら口を開く。


「山田、草薙……頼みがある。見ての通り俺はお前達三人と共にいること出来ない。もうお前らに合うことも出来ないかもしれない。だから香織の事はお前ら二人に任せても良いか。お前らなら香織を幸せに出きるはずだ!」


俺は全く根拠は無いがそんなことを二人に伝えた。さぁのってこい、お前らは香織に気があるのだろ。異世界でくらい幸せになろうぜ。そんなことを考えていると、山田が口を開く。


「あぁ、任せろ! 何があっても佐藤さんの事を守って見せる。なぁ草薙!」

「おぅ! 俺達は盾となってでも守ってやる」


俺は山田、草薙とガッチリと握手をして、そのまま部屋の出口へと足早に向かおうとした。そう行こうしたんだ……


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