14話
剣術の訓練が一通り終わり、タイミング良くバイフォンは資材を大量に引きずって現れたのだ。ズルズルと引きずっているその資材は一つの大きな袋の中に入れられて袋からは長い棒の様な物が飛び出していたのである。そんなバイフォンが俺達を視界に入れると、下品な世紀末スマイルを浮かべてこっちに声を掛けて来たのだ。
「おう、お前らやってるな」
「バイフォン帰って来たのか。おれはぁこいつが気に入ったぜ。ガキの割にはよくやってるぜ。」
「そうか、まあ依頼人のボロボロな姿をみたら頑張ったのはわかるぜ」
「だろ!俺は出来る奴なんだぜ」
俺が調子に乗った発言をした瞬間、ゲイザーの拳が俺の頭へと振り下ろされた。
「調子にのるんじゃねぇ!」
「ハハハ、バイフォンとはすっかり打ち解けたようだな」
「この調子だぜ。それで例の物は用意出来たか?」
「俺を誰だと思ってる、買い物くらいお手の物よ。それで、目的地はどこだ」
「明日、勇者が訓練すると言われているダンジョンだ。名前は確か……」
「多分それは『いざなぎの洞窟』だな。冒険の初心者は皆そこへ行く。それにギルドで明日封鎖されると通達されてたからな」
「侵入出来るか?」
「俺達を誰だと思っている。ここら辺ではちょっとは名の知れた冒険者なんだぜ。城勤めのザル警備なんて、あってないようなもんだ」
「時間がない。お前達さっさと行くか」
「おう、ゲイザー支度しろ!」
俺たちはいざなぎの洞窟へと足早に向かった。洞窟へとたどり着いた時には日が山の影へと隠れようとしている頃であった。洞窟の入り口では、警備の兵士と罠を仕掛けている兵士がごったがえしていた。工作兵は荷物を持って引き上げる所だからもう少し待てば、兵士の数は減るだろうし、しばらく待機だろう。そう俺は思っていたが、ゲイザー、ヴァイフォンの動きは違った。
「バイフォン、3人兵士を捕まえろ。勿論、素性はばれるようなヘマすんなよ」
「する訳ねぇだろ。殺しは無しか」
ゲイザーは俺に向かってそう聞いてくる。お前がそんな事言うと本当に世紀末だからやめろ。
「殺しは無しだ。俺のせいで人死には出したくない」
「わかったぜ。お前のそういうとこ嫌いじゃないぜ」
そう言うとゲイザーは草むらの中へと音も無く消えていく。そして数分後、兵士の鎧を3人分持ってきたゲイザーがいた。あぁまたあの臭い鎧を着るのかと思うと少し鬱な気分になってくる。だが時間がない。ゲイザーは俺に向かって装備一式を手渡してきた。
「ほら着替えるぞ」
「お、おぅ……」
皆その場で兵士の服に着替える。早々に着替えたバイフォンが作戦について説明する。
「じゃあ説明するぞ。まずゲイザーと、あんたが」
「蒼汰だ。これからそう呼んでくれていい」
「そ、そうかじゃあこれからそう呼ばして貰うぜ」
「それで続きは?」
「作戦はこうだ。お前たちは無言で資材を運んでくれ。兵士から話しかけられたら俺が全て対応するからお前たちは一言も話すんじゃねえぞ。時間がない、さっさと行くぞ」
俺とゲイザーは荷物を二人で持ち、入り口の兵士の所へと歩いていく。資材が多すぎて怪しまれないかと冷や冷やしながらも俺達は言われた通り洞窟の中へと向かうのであった。