1話
「蒼汰! 早く来なさいよ」
「えー良いじゃん。俺は一人で帰るよ……」
「皆待ってるよ」
「……」
俺は一条蒼汰、何処にでもいる普通の中学生だ。そして俺の事を呼んでいるこの女子は佐藤香織、俺の幼馴染で、いつも俺に構ってくる。香織は見た目がかわいいだけに、彼女に構われると他の男子からの視線が痛いので辞めてほしい所だが……
俺は香織に引き連れられて、校門の方へと向かう。俺は片腕を完全にロックされて引きずられているようだ。まるでイチャイチャカップルみたいだと周囲の視線は痛い。俺がズルズルと外へ引きずり出されるとそこには男子2人が香織を待っていた。
「待った? 山田くん、草薙くん」
「おぅ! 香織そこまで待ってねえよ」
「嘘つけ山田。まだかよってさっき言ってただろ」
「言ってねえし……それよりこの後何処に行く? ゲーセン?」
この二人は山田浩二と草薙一郎、中学に入ってから香織の友達になった男子。山田君はスポーツ刈りの筋肉で、草薙君はインテリイケメンだ。この二人どう見ても香織に気があるのだが、そこに呼ばれても居ない俺を引き連れるなんて……香織は子供の頃から頭も良くてスタイルバツグンだったが、こういう所が良くない。それはとにかく空気の読めない事だ。それにしてもこれは余りにも酷い。ほら……山田君、俺の事ずっと睨んでるよ。
「お前も行くのか一条」
「俺はパスかな、まっすぐ帰ってゲームをしたいんだよ」
「もー、蒼汰そんな事言わないで行くよ!」
香織は俺の腕を掴んで、自慢の大きな胸を押し付けてくる。やめろ! それ以上山田と草薙を煽るんじゃない。彼らの不興を買い続けながら俺はしぶしぶ着いて行く事にした。あー行きたくねーと思いながら俺は香織にされるがまま歩いて行く。
何をするのかは知らんが今向かっているゲームセンターの途中、突然辺りに霧が立ち込め不穏な空気が流れる。何だこれは? 町のど真ん中なのにも関わらず人の声が聞こえない。
「何これ? 蒼汰怖いよ」
「し……心配するな。なるようになるさ」
「それって何も励まされないんですけど」
「あ……ばれた?」
俺はそんなくだらない事を言いながら、香織の気を紛らさせた。別に特別メンタルが強い訳では無いがこれぐらいのささやか励ましくらい俺にだって出来る。だって男の子だもん!
「お前ら良くこんな時にそんな事いって……うあぁ、なんじゃこりゃ!」
山田がそう話した時、俺たちの下に巨大な魔法陣のような物が展開される。その魔法陣は霧の中でもはっきりと分かる程に不穏な青い光を放っている。
「おいおい、やばいんじゃないの?」
「だな」
山田と草薙が冷汗を流しながらそんな事を言っている。そしてまるで吸い込まれる様に徐々に魔法陣へと体が埋まっていったのであった。それは勿論、俺も香織も同じだ。そして俺達はどんどん魔法陣へと吸い込まれてしまい全員意識を失ったのである。