エレナの涙
「さてと、我が家についたなアイス」
いくら気を使って走っていたとしても多少の揺れはあっただろうに。
あの村で拾った少女は、俺にお姫様抱っこされた状態で健やかに寝息を縦ながら寝っている。
「……」
ふむ、可愛いものだな。
「変なこと考えてないわよね?」
アイスが何か失礼なことを言っているが一体俺が何歳だと思っているんだ。
身体年齢だけならとうに数千歳だぞ。
ただし、童貞だがな!!
我ながら悲しい事実である。
なんて、下らないことを考えながら俺は自分で作ったログハウスに入る。
「ちょっと、無視しないでよ」
おっといけない、考えごとをしていたからアイスに返答しわすれてしまった。
「どうしたものかね?とりあえずソファーにでも寝せておくか」
俺は少女を起こさないように気を付けながら、ソファーへとおろす。
「細かい傷が目立つわね」
「あぁ、そうだな」
「回復魔術をかけて上げたらどうかしら?」
「そうか、このくらいの傷なら自然に治癒すると思うんだか?」
アイスは少し怒った顔をしながら。
「はぁ、全くもうアレンはわかって無いわね。自然治癒だと傷痕が残ってしまうかもしれないでしょ。女にとって肌の傷は大敵なのよ!」
そうなのか?まあ、アイスがそう言うならそうなのだろう。男の俺にはよくわからない感覚だ。
「回復魔法でこのくらいなら十分だろう」
「ヒール」
寝ている少女のお腹に手をおきながら、俺は回復魔法を発動させる。そうすると、少女の傷が淡い緑色の光を放ちながら徐々に消えていく。
ちなみに、魔法は魔術を劣化させて、一般的に使えるようにしたものだそうだ。
情報源は50年程前に来た知り合いの魔術士だ。
「……うん、ううん」
「おはよう、すまないな起こしてしまって」
どうやら起こしてしまったようだ。
少女はしばらくの間俺を見て、いきなり起き上がる。
「きゃ、あなたはだれ!?」
少女は、両手で身をかばうようにしながら怯えた目で俺を見てくる。
「落ち着いてくれ、俺はお前の敵じゃない」
できるだけ、怖がらせないようにしながら喋りかける。ついでに、アイスに目配せをして、安心させてやれないか?と頼む。
「……」
「落ち着いて大丈夫よ、ここにはあなたを攻撃する人はいないわ」
アイスが俺の意識を正しく汲み取ったのか少女に話かける。
「……ほん、本当に?」
「えぇ、本当よ。だから安心して」
やはり、男の俺より。女のアイスの方が話しやすいようだ。
アイスが普段のキャラと違う。
そして、しばしの沈黙の後。
「……うん」
少しうつむきながらも答えてくれたようだ。
「信じてくれてありがとう、そう言えばあなたの名前は?」
「……私の名前は、……エレナ」
「エレナちゃん?」
「うん」
「エレナちゃん、お腹空いてないかしら?」
「大丈夫……」
ぐぅ~
可愛らしくお腹がなる音がした。
「……」
顔を赤くしながらエレナがうつむいている。
「お腹空いてるのね?エレナちゃん」
アイスが優しく微笑みながらエレナにもう1度聞く。
ちなみに俺はアイスが説得してくれている間に、キッチンで料理の準備をしていた。
「うん」
「それじゃ、少し待っててね。私の主人のアレンが料理を作ってくれるから」
「主人?あの人」
「そうよ」
「じゃ、アイスさんは奴隷なの?」
「いいえ、違うわよ」
「?」
「ふふ、そのうちね」
「うん」
なんだか盛り上がっているようだな。
というか、なぜエレナはこっちを見てくるんだ?
アイスが俺のこと主人と言っていたことが気になるからか。
あ、なぜ料理を作っていた俺が少女の名前を知っているかと言うと。
アイスがテレパスで教えてくれたからだ。
「アイス、料理を運ぶの手伝ってくれないか?」
「えぇ、わかったわ」
そして、料理をソファーの近くにある木製のテーブルに運んでいく。
「よし、運び終わったな。アイス頼む」
「はいはい」
アイスがエレナを呼びにいく。
「エレナちゃん、料理が出来たから食べましょう?ついてきて」
「え、私も食べていいの?」
「えぇ、いいのよ」
「そんな、悪いですよ……」
「いいから、こっちに来て」
そう言ってアイスはテーブルの右側に2つある椅子のうちの片方を進めた。
「はい」
「それじゃ、座って料理を食べましょう」
「……」
「食べましょう」
「はい」
アイスは満足したのか、微笑みを浮かべながら横のイス座る。
なんだか微笑ましいな。
とりあえず、俺もアイスから見て目の前の椅子に座る。
「遠慮しなくていいからな」
「うん」
「大丈夫よ、エレナちゃん」
やはり、アイスになついているな。
「美味しい!美味しいよ……う」
あらら、泣いちゃったか。
あんなことがあったのだ、辛かったのだろう。
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