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初日

 不動産屋で見つけた安いアパートだった。風呂、トイレありのワンルーム。地方とはいえ格安であることは一目瞭然だった。家賃2000円の部屋なんて目に付かない方がおかしい。不動産のオヤジは一番にいわくつき物件であることをオレに説明した。オレは気にしなかった。フリーターであり、金のないオレは就職活動に本腰を入れるために生活費を削る必要があった。どうせ長く住むなわけじゃない。多分。

 子どものころから幽霊を信じていた。というより霊感は強い方らしい。度々目撃するのだ。子供の頃から。幽霊の存在を知っているからこそ怖いという感情は失われていた。存在を知っている立場から言わせてもらえば居てもしょうがないものとして位置づけている。蚊のように鬱陶しいと思えば失礼な話だが、そこまで気にならないものだ。見えない人からしたら写真に写りこんだだけで騒ぐものらしいが。

 今までこの部屋には6人の入居者がいたという。オヤジが言うには二週間とその部屋に住めた人はいないらしい。だいたいの人間が一週間のうちに出ていき、二週間後の14日目には原因不明の窒息死している状態で発見されるそうだ。最初の一週間のうちにまず部屋で怪奇現象が起き、一週間を過ぎると息苦しさを部屋の中で感じるそうだ。以前、14日目に友人宅に避難した若者が15日目に帰宅し16日目の朝に窒息死していたという。つまり14日目がタイムリミットだそうだ。

 その部屋に入居した最初の住人が自殺したらしい。20代後半の女だったそうだ。自殺の原因は明らかになっていない。部屋にロープを垂らし首をつっており、床に黒の油性マジックで「私の居場所」と書いてあったという。

 「私の居場所」と書くぐらいならいっそのこと生きてずっとそこに住んでいればいいのになぁ。オレには人生の中で唯一決めていることがある。それが自殺をしないことだ。そんなオレにとって自殺をする人間の神経が分からない。金を失ったのならまた稼げばいいし、愛を失ったのならまた探せばいい、失った気力など時間とともに回復していくものだと思っている。世の中に絶望したのならば希望が持てる地にでも逃げてしまえばいいのだ。しかし、失った命は取り返しがつかない。これだけは26歳までフリーターとしてダラダラと過ごし、就職できるか不安でいっぱいのオレでも分別がついている。本当にすぐ決まればいいなぁ。

 死亡者が続出する話を聞いてもオレはひるむことがなかった。話を聞く限り、原因はどう考えても最初の入居者である女の霊の仕業だとおもうから。もし、これが女の霊の仕業にみせつけた連続殺人犯の仕業だとすれば原因不明というところが引っかかる。それに、アパートの管理者であるオヤジに恨みがあるのならば、一つの部屋に絞らずに全体的に殺人を行った方が得策だしね。

 幽霊の仕業であるのならば、交渉次第だ。もし、2週間以内に交渉が成立しなかったのならばオレは部屋を出ていけばいい。というよりも、2週間以内に就職先を決めてしまえばいい。決まればいいなぁ。

 不動産屋のオヤジは最後に何があっても知らないよと忠告してきた。


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