微かに汗ばんだ髪
同棲しているとき、私は毛先までダメージを忘れるシャンプーを使っていた。奴も特にシャンプーに拘りはなかったから同じシャンプーを使っていた。
しかし、あの阿呆は家族になった証に髪のために地肌を洗うシャンプーに変えようとかほざいたので、私は人生初、地肌を洗おうのシャンプーを使い始めたのだった。
阿呆の髪は非常に細くて柔らかいため、シャンプーにかなり影響を受けるらしく、以前は艶のある髪の毛で指通りが良い絹のようなしっとりとした髪であったが、今は地肌がよくなったからか、根本からふわふわで、柔らかい髪になっていた。
残念ながら、私には合わなかったようで、たまに髪がぎしぎしするのだが、面倒だから地肌を洗おうのシャンプーで妥協してやっている。
前の晩は熱帯夜で、朝起きたら汗で寝間着が湿っていて気持ち悪かった。おねしょをした赤ちゃんの心持ちだった。隣を見たら、阿呆も気持ち悪そうにもぞもぞしていた。
取り敢えず、シャワーをして阿呆を起こすことにした。今日は日曜日。
起こす必要は特にないが、洗濯や朝食の後片付けが面倒になるから、今起こす。
肩に触れると、寝間着が湿っていて、視界でふわふわ揺れる、柔らかそうなクリーム色の髪に指を通すと、髪も微かに汗ばんでいた。
繰り返し、何度も指を通すと、気持ちいいのかぷっくりとした頬を緩ませた。
汗とシャンプーの匂いが私の鼻をかすめた。
(こいつイメージキャラクターにでもなればいいのに。)
微かに汗ばんだ髪
お題提供元「確かに恋だった」