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ロンフェロー伯一行との決闘(一)

 話は夜更けまで続いた。四人の話は自然と、八人の弟子の内こうして再会していない残りの四人のことに及んだ。もしかしたらこの勇者の武具を封印する旅路で、残りの弟子たちに会えないとも限らない。それぞれ武具を身につけたままベッドにつき、亭主を驚かせたイリアムたちであったが、信頼し合う強力な仲間たちが集合しているという頼もしさのためか、深く安らかな眠りに落ちた。

 

 そして翌日。


 太陽が高々と昇り、清涼な気が草原の植物を撫でる朝。一行は朝食の後、さっそく払いを済ませて宿屋を出た。亭主はそれぞれから十テラスはもらえるものと思い、


 「お一人四十テラスになりますが、へい」


 とあえて言い値をつり上げたのであるが、四人は別段値切ることもなく四十テラスを渡してやった。イリアムとロンバロンは武人として、値段交渉などといったはしたないことはやらない主義であり、ニンバスとホセは金というものに無頓着である。


 亭主が雇っている厩番の男によって飼い葉と水を与えられた四人の馬は、この気持ちのいい気候の中、出発するのにやぶさかではないようだった。主人の意志をすぐに汲み取って、いちいち見事な走りを示した。ロンバロンは感心してこう言った。


 「さすが近衛隊の馬、黒々と太って、ホセのように見事な筋肉をしている。軍馬としても申し分がないな。こうした馬に跨る旅なら、何の不満も生じようがないわい」

 

 さてひとまず都から離れるためにずっと東に馬を走らせて、目指すはパタロンダの街ということに道中決められた。パタロンダは大規模な商業都市で、そこに紛れ込んでしまえば宰相の放った追っ手も四人を発見しづらいのである。とはいえ、豪奢な勇者の武具をそれぞれ一つずつ装備した珍妙な姿はどこへ行っても目立つもの。むしろ人のいない田舎へでも行ったほうが良いのかもしれないが、もとより四人は追っ手から完全に逃げ延びようなどとは考えていなかった。それよりも、パタロンダのような多くの人間が集まる舞台で、勇者の弟子としての力を示し、何らかの情報――勇者マホローンの存否や弟子たちの行方、武具の封印に最適な人跡未踏の地について――が集まってくるのを待つ。それが最善の策だ、とニンバスが提案し、それを他の三人ともが承諾したのであった。


 草原を疾駆する一行。宿屋を出て二時間程度経った頃だろうか、地平線のむこうからこちらと同様、四名ほどの男たちが馬に乗って走り向かってくるのが見え始めた。


 「貴公たち、あれが見えるか。拙僧は目がよく効くからあの前方の者たちが騎士だと分かった。あの騎士の者にアザモン神の子らへの喜捨を依頼しようと思うがどうか」


 「いやホセよ今はどちらかと言えば、貴公の身体はアザモンの神よりも皇帝陛下の物だ。皇帝陛下の命をわれわれは受けているんだから。無闇に仕事を難しくするような行動をするもんじゃないぞ。とは言うものの、まずあの騎士たちとすれ違ったならば聞いてみよう、『貴公らが忠誠を誓うのは一体誰に対してか』と。それでもしも陛下ではなく宰相殿にこそ命を捧げても惜しまない連中だと分かった際には、どうにでも、ホセ、貴公の望むようにしてよろしい」


 ホセの敬虔な習慣に対するロンバロンの提案を承諾した四人は、さっそく馬の腹を蹴って、いち早く前方の男たちとはち合おうと走った。果たしてすぐに声が届くほどに距離は縮まった。互いに馬の速度を落とし、まずイリアムが開口一番、


 「失礼ながらそこで馬の足をお止め頂きたい。そしてわれわれの質問にお答え頂きたいのだ。諸君らは一体どういう主人に対して忠誠を誓う者であるか?」


 四人の見知らぬ男たちの中で、もっとも年長と思われる銀甲冑の騎士が馬上から答えた。


 「あなた方は騎士のようだが、貴族にしては不躾なことを言いなさる。珍妙な装備の方々、まずはそちらから名乗って頂こう。しかるべき後、そのご質問にもお答えいたそう」


 「わたしは放浪の剣士イリアム。そこの宝石にまみれた兜をかぶり、魔力銀ミリストリルのすね当てや籠手で全身を守っているのが騎士ロンバロン。きらびやかな盾を背負っているのは魔法学者ニンバス。僧服の上から豪華な鎧を着ている奇妙な男は唯一神アザモンの下僕、ホセ」


 「よろしい。わたしはロンフェロー伯爵というもの。後ろに続くのはビカオリ男爵、ミンデラ子爵、ポロロポール子爵。それぞれ甲冑で身を固めておるのは他でもない、これから帝都ピロにおいて、盾と剣による奉公をするため」


 「して、そのご奉公はどういった方の為に?」


 「決まっておろう、帝国の支配者、貴族の中の貴族、文武に通じ、政治を掌握し、国家と貴族社会の安寧の化身とでも言ったような卓越したあのお方、宰相ブレンドロス殿」


 宰相の名が語られた瞬間、ホセは目を輝かせ、叫ぶようにして言い放った。


 「これから宰相殿の盾となり剣となろうという心づもりのロンフェロー伯以下計四人の方々、神アザモンの名の下においてここでご奉仕の相手を俗世の人間から天にまします神に変更なされてはいかがかな。拙僧の見る限り、手持ちの金品の他にもその鎧や馬を売って喜捨なされば、少なからぬ数の貧しい人々の辛き命を長らえさすことが出来、大きな功徳を得られることと思うが」


 ロンフェロー伯はどうにも僧侶らしからぬホセの物言いと態度に面食らいつつ仲間に向かって言った、


 「なんとまあ追い剥ぎのようなことを言う坊主がいたものだ。もしかしたら本当に追い剥ぎかも知れないぞ。あの王侯の家系に代々伝わるような宝石だらけの武具も、どこで盗んできたことやら。貴公たち、馬を下りて剣を抜くんだ。この者たちを斬り殺してしまおう。騎士や僧に扮して追い剥ぎをするとは許せない男たちだ。まずピロに入るにあたって一つ賊の首を持っていくことが不利に働くことはあるまい。むしろ宰相殿への良いみやげとなる。あの宮殿ですら買えそうな高価な武具を持ち帰れば」


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