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100円玉と人生

作者: 星 辺斗

作者の倫理観が反映されています。

古書に原典がある訳ではございません。

そしてストーリー性を気にしてないです。

『昔々、ある小さな村に一人の男がいた。


彼はお金を愛し、あらゆる散財行為を嫌った。


彼はかなりの大金を集めた。しかし彼は生涯誰よりも貧乏であった。


友人は彼に言った、「貯蓄をするのはいいことだ。だが、


まっとうな生活ができるはずなのに、なぜそこまでして銭を守るのか。」


彼は答えた、「銭は万能である。薪にも肉にも布にも、


宝玉や印紙にも、棺にさえ代えられる。それなのに


一度使った銭はもう他の物には代えられない。


どうして私が銭を使うだろうか、いや使う訳がない」』



話を聞いて、ボクはセンセイへたずねる


「センセイ、『彼』は何を間違えているのでしょうか?

『彼』が何かを間違えていることはボクにも分かりますが、

いったいどこが間違っているのか分かりません」


センセイは答える


「そうだね、たとえばここに100円玉がある。

君ならこの100円玉の使い道はどれほど思いつくかね?」


「えっと、水や食べ物、包み紙とかを買うとか……」


センセイは笑う


「ははは、通貨としてでもそれだけの使い道があるが、

硬貨であることを利用して、シールなどを削りはがしたり、

缶を開けたりもできるね。」


そしてまたセンセイは言う


「『彼』の言った通りだね、100円玉には100円以上の

使い道があり、つまり100円以上の価値があることになる。

しかし、通貨として使うならこれは100円でしかない。」


ボクは頭を傾ける。それを見てセンセイは言う


「ならばこうしてみたらどうだろうか」


そう言うと、センセイは100円玉を箱の中に入れて鍵をかけ、

鍵を川へ投げ捨てた


ボクは声を上げた


「ああ、もったいないことを!」


それを聞き、センセイは満足そうな表情を浮かべて言う


「こうすればこの100円玉はもう使えない。価値は0円も同然だ。

さて、『彼』は決してお金を使おうとしなかったけど、それは

今やったのと同じようなことだ。

使い道のある100円玉は、使ってこそ価値が発揮されるのに、

『彼』はその価値を全て放棄してしまったのだよ」


「ああ、なるほど」


ボクはそこでようやく納得した


「『彼』の友人は、貯蓄をするのはいいことだと言ったけど、

貯蓄は将来の自分が使うことを想定している。

未来の自分に払っているからこそ価値があるんですね」


「まさしくその通りだよ」


センセイは満足そうに言うと、言葉を続けた


「さて、このことは人生にも言うことができる。

とは言っても金銭と人生には大きな違いがあるけどね。

その違い、言えるかな?」


僕は考える


「えーっと、お金は自分で手に入れるものだけど

人生は誰しも初めから持っている、そういう違いでしょうか」


「それも違うけど、重要な違いは別のところにある。」


センセイは続けた


「お金の単位が『円』や『ドル』なら、人生の単位は『時間』だ。

我々はそれを貯めることができず、初めから持っているそれを

常に使いながら人生を生きているんだよ。

さあ、充実した人生を送るにはどうしたらいい?もう分かるよね?」


センセイのその問いに、僕は自信を持って答える


「人生の中で色々なことを経験して知識を得たり、

働いてこの世に形あるものを遺すことですね!?」


センセイは付け加える


「うーん、ちょっと違うな。人生を価値のある物に使った結果ではなくて

人生を価値のある物に使うことそれ自体、一番価値のある使い方なんだよ。

つまり、働くことだね。自分の満足いくまでに働く、

そういうことで人生は充実するんだよ」


「はい、分かりました」

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