〜 更生 〜
スポーツを通してならず者は
更生していく
ゆっくりと
よくいう番長グループの中に新人が馴染んでいく
僕の小学生のときのクラスメイト、
札つきのやんちゃ坊主だ
たまにたむろっている時、すでに卒業したいわゆる
OBも席を共にする事がある
兄はそんなにつるむ事には興味はなかったが、
そういった連中と仲良くする事もあった
馴染み始めた新人はたまたま居合わせた兄に、
弟さんは来ないのですかと問いかける
なぜ?
弟さんはとんでもなくすげぇやつだから
いずれガッコをシメるはず
また一緒に暴れまわりたいと思っている
勝手な事を言うもんだ
僕はつるむ事も好きじゃないし、
揉め事なんて大嫌いだ
その頃は意味が分からなかったけど、
ただ自由でいたくて、
不条理に縛り付けられるのが嫌で、
納得出来ないものに反抗した
それを大人達は不良と呼んだのだろう
でも僕は素直と捉えていた
僕も大人になって思う、
もしかしたら間違っていたかもしれない
でもその時の僕にはただそれだけだったんだ
僕がバスケ部に入って、不良グループと
付き合わないからって
僕が優秀な人間になった訳じゃない
僕が更生するのには例に漏れず、
愛ある指導と鉄拳が必要だった
その中でも、思ったよりも僕が体罰を
受けなかった理由は、もちろんバスケを始めて
生活態度が少し良くなった事と、
なにかやると担任だけでなく顧問にも叱られ、
その方が怖かったこともある
あと、第一の理由は
三年間とも女性の先生が担任だった事だ
僕が良くない方向に行ってしまったのには・・・
いや、もともと良くなかったけれど
度を越して目立つようにひどくなったのには
小学校でも後半の時期に男性の教師が担任になり
その人が少し変わった人だったからかもしれない
父兄からも噂になっている
おかしな教師の周りでは不可解な体罰、
いき過ぎたお仕置きなどが
日常茶飯事だった
あきらかに女子生徒にはあまく
とくに容姿の整った子はなにかと例外とされた
僕の母親が苦情を言った時、
本人ではなく学校側から謝罪があった
この学年を受け持ったら定年なので
一応長く務めた人間に
悪い経歴を付けたくないので堪えてくださいと
そんなことが僕の生活態度に影響を
及ぼしたかはわからないが、なぜか中学校に
あがってからは、力に対し力で刃向かうことは
少なくなった
女性教師が担当するクラスに配属する
その考えはあっていたのかもしれない
女性の先生は体罰ではなく
根気強く理を詰めていった
理屈っぽい僕は会話に対し
幼稚な反抗はしなかったし
憤りをぶちまけるわけにもいかない
たしかに小学校では、あまり頭の良くない
定年間近の老男性教師の意味の解らぬ
威圧的な態度に多いに反抗したし
子ども社会の中では、腕力も使った
そういった中学校の新しい環境の中、
わりと物事を考える僕は、
自然と自分の位置や役割を理解していった
その環境設定については僕の理解者、
つまり顧問の先生の影の力が動いていた事は
容易に見当がつく
順応力があったのか、僕は叱られる内容を
理解しつつ、納得のいくものは受け入れながら、
ゆっくりと更生していった
性格までもが大人しくなるのには、理由があった
僕はバスケが下手くそで、周りの同級生よりも
体格的にもセンスも劣っていた
小学校での天狗になった鼻っ柱は
簡単にへし折られた