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小さな栄光  作者: ジュン
58/59

〜 長い助走 〜


無駄ともととれる時間の中

少しずつ整理してきた


ひとつの答え


ひとつの考えを明確にするためだけに



答えはずっと前に出ていたはずだ




この助走の時間をどう過ごしたかじゃない


この時間を経て、どう変わるかだ


長い時間をかけて少しずつ


ほんの少しずつ

自分の気持ちを整理してきた



しかし結論というものがない

現状ではその時間に僕は

何の意味も見い出せない




肉体的にも精神的にも

人の日々にも四季があるように

常にうつろい変化している


調子が良ければただ動けた、

ただ汗をかいたと

気分が晴れ、やる気も出る


やる気があれば一時は

コンディションが

ついていかなくとも

それを乗り越えれると

自然とコンディションはついてくる




毎日、毎日を

ただ闇雲に無関心に近い状態で生きてきた


ただそこにバスケがあった



それだけだ



フェザーズは相変わらず

精力的に活動することを忘れない


練習試合も頻繁に行う





膝の手術から一年と少し



多くのことを考えながら

過ごした一年間が

薄っぺらなものになった理由は

今まで見えなかった、

見ていなかった

大切なものを見つめ直しながら

暮らしていたからかもしれない


その分僕は自分が置かれている環境

それ以上に自分自身に

失望していたはずだ




このころフェザーズは

練習試合に連勝していた



良い評価もあれば

課題もたくさんある


その消化の仕方に僕は警鐘を鳴らす



勝ちは勝ちと言っても

あれくらいのチームに

勝って満足してもらっても困る


まったくチームとして

成り立っていないようなチーム


良いプレーヤーはいたけれども

それがどれだけ得点をしたか

自分の仕事が出来ていたか



フェザーズにしてもそう


ホームコートでの得点力であること

それに気を良くし

かなりオフェンシブになり

失点が増えたこと


しっかりと自覚しなければいけない



メンバーの起用方など

ベンチワークの悪さも目についた




自分勝手にやることと

個性を出すことは違うことだけど

個性を自分勝手と見てしまうのは

チーム全体の意識だと思う


決して自分がプレーの面で

浮いているとは思わないが、

機能しているとも思えない


少しずつ、

チームの中での自分の限界が

見えてきたような


そんな気もする



いつものように練習試合を

ただ消化したあとの

いつもと同じような練習


だがこのむさ苦しい夏の暑さのなか

だらけることなく

頑張るチームも珍しい



この分だと確実に個人能力は

少しづつでも上がっていく


しかし能力のパラメータに

チームワークや連携といった

項目があるとすれば

その伸びは期待できるものではない


もちろん弱小チームにとっては

チームコンセプトやゲームや練習の

プランなどは一番難しい

問題であることはわかってはいるが



それとフェザーズは個人プレーが

目立ってしまうことも多いが

それ以上に、いやそれ故にか

型にとらわれがちなところも多い


おそらく練習量が足りなくて

臨機応変な対応力に

欠けるものだと思う


だから僕は練習の意識を高め

プレーのクオリティを上げることを

考えた方がいいと思う


だがチームの雰囲気に修正はきかず

さらに輪をかけるように

これからの練習でオフェンスに

フォーメーションを

取り入れる案が可決した



大会前のこの時期に何故かとも

やるなら何事も早い方が良いとも

どちらともとれる


大きな成果は期待できないが

どんな考えも平均してみれば

やらないよりはマシと言ったところ


チームに小さな何かでも芽生えれば

それは成果と呼べるものかもしれないが

その成果を待てるかどうかは疑問だ



ここまで原稿を書き終えた時点で

今大会の組み合わせが決まった



一回戦までチーム練習はあと一回

今書いていたようなことを

無理にやって大事な調整を

怠ることのないようにしたい


調整とは平常心、

肉体的にも精神的にも

普段通りの状態を保つこと


新しい試みにバランスを崩し

空中分解はバカらしい




この日程は余計なことを考えずに

ぶつかっていきたかった

僕にとってはよかった


チームにとっても

そうではないだろうか



練習試合を連勝したが、次の練習試合の

相手はかなりの強敵でおそらく

目も当てられない試合になることが

予想されている


そのちょうど間に公式戦が入った


連勝のあとボロ負けし

モチベーションを落とし

新しい練習に困惑しながら公式戦を

迎えたくはないからだ




金曜日に麹会の練習に行き日曜日の

フェザーズの練習は仕事で出れない


そして水曜日に公式戦がある



土曜日にむしょうにバスケがしたくなり

タカを誘って練習場所を探す


一つ目のチーム、練習なし


二つ目をネットで調べる、あった


要連絡とあったが何度かお邪魔して

顔見知りだし、確実な練習参加のために

アポなしでの参戦


予想通り練習に参加させてもらう




タカにしつこく試合前だから

気を付けろと繰り返す


自分は特別だとでもいうのか

人の心配ばかり



ストレッチもそこそこにボールの

感触を確かめる


ミニゲームも三本目、体も動くので

何も考えずにプレーをしていた


レイアップのチェックに跳んだ着地の際

後ろにいたプレーヤーの足を踏む


伸ばしていなかった足首の靭帯は

捻った角度に耐えられずに悲鳴を上げた



軽く捻ったことは数知れず

歩けないほどの捻挫はやはりキツイ


普段は痛さのために少しの間

うずくまって動けないでいるが

今回は捻った痛さに倒れこんだ瞬間

沸き上がる感情に身を起こした



自己管理を怠った情けなさと

大会出場が絶望的になった自分への

怒りの感情だった


足を押さえて倒れ込み、

次の瞬間には床を殴りつけ

立ち上がっていた


怒りの感情に多量に分泌された

アドレナリンは僕から痛みを

消し去っていた



「 クソッ! 」


と大きな声を上げながら

コートを出て練習の見えない

階段のところまで歩いて

気付いた痛さに座り込んだ



とにかくうまくいかない事ばかり

退屈のしない日々だ



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