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小さな栄光  作者: ジュン
55/59

〜 思い出は経験というなの宝物 〜


今後の僕の人生にどれだけの

影響を与えたか

どれだけの経験として身に付いたか



細かいことはわからない



ただとても楽しく


きっと忘れない

記憶になったことだけは

疑いようもない確かなことだ


片付けを終えた子供たちのもとに

駆け寄ったコーチが

大きな声で集合をかけた


そこに子供たちが一列に並んだ



そのコーチがロビーの方に来て


「 ジュンさん


 ちょっといいですか? 」


はい?


「 みんなに今日気付いたこととか


 なんでもいいんで


 締めの挨拶をお願いします 」



人前で挨拶をすることなんて

そうはない


ミーティングでみんなの前で意見を

言うのとは全然違う


みなが目上の僕の

先輩としてのアドバイスを

目を輝かせて待っている


最初にお願いされてたら僕は

断っていただろう

でももうみんな並んでるし



「 わかりました 」


僕はゆっくりとコートに向かう


偉そうにしているわけじゃない

考えを文章に置き換えるために

頭をフル回転させて

なるたけゆっくりと歩いた



頭を働かせ考えたが

子供たち一人ひとりに

意見を出来るほどの目で

僕は練習を見れていなかった


印象にあるのはキャプテンと

足首を捻った子

自分の未熟さを思い知らされる




「 今日は本当に


 ありがとうございました… 」


細かい技術なんてのはさておいて

みんなが楽しくバスケを

しているのが一番の印象です


怪我だけには気を付けて…

まぁ怪我しちゃった人もいますが

早くちゃんと治して

この楽しさをずっと忘れずに


ずっとずっと

バスケを続けてください


バスケを楽しんでください


また逢える日を楽しみにしています

ありがとうございました




ゆっくり考えたが

結局は平凡な挨拶に終わった




平凡な挨拶を終え

コーチ陣とも別れの挨拶をする


「 ジュンさん


 電車で来たんですか? 」


「 はい ちょっと


 わたらせ渓谷鉄道に


 乗りたくて 」


「 結構歩いたでしょ


 帰りは駅まで送りますよ 」



下り坂とは言え膝には負担になる

とてもありがたいことだ


アシスタントコーチの車に

保護者の方と一緒に乗り込む



まだ携帯電話で乗り換え案内を

見られない時代だ


車中 アシスタントコーチが言う


「 電車いつくるか


 わかんないくらい来ませんよ


 どっか出ましょうか? 」


「 だいじょぶです


 気にしないでください 」



駅まで送ってもらえるだけでも十分

それ以上なんてとんでもない



駅まで送ってもらい車を見送る


車が去ったあとの駅付近は

またも陸の孤島だ



「 だれもいないや


 ユウ 時刻表探そ 」



時刻表はすぐに見つかった


次の電車がくるまでは30分だ



「 あっちのホームだよね 」


そういえば駅では線路と

ホームが上りと下りに分かれていた


踏切もなにもない

ホームの端が階段になっていた


端まで歩いて反対ホームに上がり

荷物を置いた


「 さて どうしよっか? 」



ベンチもないので

ホームのふちに座り込む

普段なら電車の通るところに足を投げ出した



「 ジュン なんか飲も 」


買ってきてという目をしながら

ユウは言った


自販機は駅の入口

僕はホームの端まで歩くのが

面倒くさいので

線路に降り最短距離を進む



「 このまま歩いて行こうかな 」


僕は線路の真ん中に立ち

延々と続く線路の先を見渡す


「 あぶないから早くしなよ 」



「 スタンドバイミーだよ…


 …知らないか 」



僕はユウの答えを待たずに入口側の

ホームに上がって飲み物を買った




風、木々、鳥

自然の他に何も聞こえない

ホームに座り

ゆっくりと時を過ごし電車を待った



電車に乗りしばらく渓谷を進んで

朝に通りかかった

乗り換え駅に着いた


辺りは暗くなりはじめていた



「 ジュン…30分電車来ない… 」


ホントだ…

正直、僕もユウもかなり疲れている



「 その次の特急に乗ろう


 45分あるから


 ご飯でも食べて待とうよ 」



僕の提案はユウの顔に

笑みを取り戻した



山の中の駅よりは何とか栄えている

何より人の気配がする


乗り換え駅だけに

線路は多く敷地も広い


にもかかわらず改札を出たところに

古びた良い雰囲気をかもし

出す喫茶店がひとつ

ポツンと灯りを漏らしていた



夏の陽は長くはあったが

都会と違い落ちたあとの暗闇は

一瞬にして訪れた


駅の寂しい照明の他には

これといって街灯すらほとんどない



僕らは庶民的で人情味溢れる

喫茶店に入り食事をした



「 なんかいいね 」


ユウは食後のブラックコーヒーと

店の雰囲気を堪能していた


たしかに良い感じだ


けして会話はないけれど

店の人も他のお客さんも古くからの

知り合いみたいな感じだ


食したものはもちろん定番

スパゲティナポリタンだ




特急電車に乗り東京を目指す


「 うわぁ これ楽だぁ 」


ユウはウキウキして言う



進行方向を向いた個別の指定席のシート

ゆったりとしたスペースで

足は伸ばし放題

リクライニングをすれば

眠りの世界に誘われる



行きも特急に乗れば良かったなどと

言いながら二人ともすぐに眠りに落ちた



闇へと落ちる間際の回帰線

僕は今日を思っていた




練習を見ていて感じたことは

楽しくやっているということ


自由過ぎてはまとまりが

なくなってしまうが

楽しく練習出来なきゃ

上手くならないし

続けることも難しい

そういうことを再確認した


コーチ達の苦労は計り知れないが

みんなとバスケをすることには

それ以上のときめきが

あるのだと思った


これからのバスケ人生に

どうとかは関係なく

とても良い思い出になり、

またこういう機会を持てたら

いいなと思った



ミニバスのみなさん

どうもありがとう


この経験を生かし

もっと上手くなれるよう

これからもがんばります


そして年が変わることの

チーム編成は大変だとは思いますが

伝統と実績を重ねつつも

いつまでも子供たちが楽しく

バスケを出来るように

みなさんも頑張ってください



そう日記を締めくくり僕の

ミニバス合宿体験は終りを告げた




基礎の大切さも実感したが

やはり一番にはどれだけ

モチベーションを維持しながら

その練習を継続するかということ




今の僕にとってみれば

それはただ単に練習を継続して

頑張るというだけでなく


足の痛み、怪我の怖さに負けずに

バスケを続けること


思うような結束、成長が

見れないチーム

この環境でバスケを続けることに

モチベーションを維持していけるか


多くの問題を抱える僕にとって

楽しくひた向きになることの

大切さは僕のスタンスを痛烈に

考えさせるに値することだった




間を空けることなくもうひとつの

予定が僕にはあった



以前には試合出場、そして今でも

練習でお世話になっている

チーム n さんの夏期合宿があった



大手ゲームメーカーであるnさんの

会社の保養所を利用した

格安の軽井沢への旅


まぁ観光などは予定に

入っていないらしいが



ミニバス合宿ではお披露目

されなかった

買ったばかりの新車を駆り参加


ギアがハンドルの横にある車は

初めてで途中青空の下、

しばしばワイパーが動き出す


しかも全然エンジンが回らない

新車でいきなり遠出は

やはりまずかった



合宿といっても特別な練習は

なかったが通して人数がいたことや

環境の変化などから

真面目に練習に取り組めて

とても楽しいものになった



ゲーム形式の練習では二日間を通し

ほとんどシュートが入らなかった


頑張ってるつもりでも

集中力が足りなかった

楽しくできていたが

少し気の抜けたところもあったか


それでも有意義な時間を

過ごせたことに変わりはない




二日目、午前中で練習を切り上げて

早めに帰路につく


この日フェザーズでは

練習試合が組まれていた

今の僕は試合では当たり前のように

ゲームプランの構想外にいるため

めったにない合宿を選択していた


もちろん間に合えばベンチには

座るつもりで用意をしてある


ろくに走れもしなくても

参加するならば

ちゃんとユニフォームを着て

いかなる状況にもチームとして

対応していかなければいけない

と思っているからだ



帰りの行程は順調とは言えなくとも

新車の最新ナビにより渋滞を

迂回で回避しなんとか予定に

合わせて着くことができた


乗り合わせたnメンバーを前日の

朝に待ち合わせたnの事業所の

駐車場に送り届け


僕は試合会場の体育館の名前を

慣れない手付きでナビに入れた



急ぎアウェイコートのある

学校に向かう

時間はギリギリだ



学校に着き校門を確認すると

車の置けそうなところを探す


道幅がある程度あって塀や

フェンス際が通報もなさそうな

路駐ポイントだ



校門のすぐ近くに

車を停めるところを見つけ

荷物を抱えて体育館を目指す



合宿という遠出の疲れも見せず

僕の足は軽やかに

体育館に向いていた



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