〜 初陣を前に 〜
フェザーズでの大会出場を前に
自然と沸き上がる興奮
練習
出稽古
残りの試合にそれをぶつける
少しずつ練習のための練習を
試合のための練習にしていった
そして今
試合をするための準備
という練習が必要になる
バスケットらしくなってきた
僕はチームnの助っ人で
隣県の大会に出るため車を走らせた
「 間に合うの? 」
助手席のユウが心配そうに言う
「 ヤバいかも ギリだね 」
初めての会場に行くのに下調べを
怠った僕は時間と戦っていた
「 ヤバいこの辺混んでるなぁ
あ あったあそこだ ん? 」
やっと見つけたスポーツセンターは
大通りの向こう側、中央分離帯があり
左折でしか入れない
方向転換しなくてはいけないが
路地も信号もない
Uターンしたくても出来ない
「 おいおい どこまで
行っちゃうんだこれ? 」
Uターンする場所を探しながら
かなりの距離を走った
しかも見るからに
反対車線は混んでいる
「 ジュン 試合何時から? 」
「 ん? 15時30分
あれ ホントにヤバいな 」
時計は15時15分になっていた
なんとか方向を変えて
左折の入口を曲がる
心配してた駐車場は
ちゃんと施設の前にあった
すぐに車を停めて会場に入る
「 ジュンくん 遅いよ~
もう始まっちゃうよ 」
「 すいません
すぐにアップします 」
とは言ったが体育館がすっごく狭い
走るなんてもってのほか
ボール回しすら
やりずらいようなスペース
ゲームを見ていたいので仕方なく
ベンチの隅で柔軟とボール回しだけを
やりながら出番を待つ
実力はやや向こうが上
どちらつかずの試合展開
第一クォーター中盤
「 ジュンくん まだ? 」
「 いや 全然無理です
今出ると足手まといです 」
「 頼むよ 早く用意して~ 」
足手まといになるのは目に見える
それはなんとかごまかしながら
やることも出来たかもしれない
でも一番に考えたのは
今日が無理をする場面かどうか
僕にとって今日という日は
どれだけの意味があるだろうか
点差をつけられようが
たとえ負けようとも
今日は無理をする日じゃない
怪我なんてしたらそれこそ大変だ
それが僕の考えだった
遅刻をしたのは申し訳ないが
リスクを負うわけにはいかないのが
僕の置かれている状況だ
お互い決め手を欠きながら
少しずつゲームが荒れだしていた
「 俺におあつらえ向きな
ゲームんなってきたな 」
ユウに呟き気合いを入れる
第二クォーターから出場直後
気付かないところで笛がなる
「 テクニカルみたい
フリースロー頼むよ 」
はい、と答えたがアップも
ろくにしていない
今日に限ってはシュートを
一本も打ってない
どこにそんな自信があるのかと
あとで思った
結局はアンスポだったらしく
僕の機会はなかった
打たなくて正解だったと
はっきり言えるくらいに
アップ不足が響き動きが固い
体をゲームに持っていくために
ディフェンスとリバウンドに
重点を置くことにした
いつも通り2-3ゾーンの
下のサイドを担当
オフェンスはバランサー
アップ不足からシュートタッチが
ひどく悪いと一本で気付き
シュートが減るがオフェンス、
ディフェンスともに
リバウンドをがんばる
特にオフェンスリバウンドは
がんばり取れはしなくても
相手の速攻を最前線から潰した
後半はフルに出場
ビッグマンのファウルトラブルと
コンタクトレンズがずれるという
アクシデントによりゾーンの
真ん中を担当する時間もあった
試合を通しスクリーンアウトと
リバウンドに奮闘し一番の小柄ながら
リバウンドは二桁にのせた
得点は6点にとどまるも
すべて試合終盤の大事な場面で決め
まったく互角の試合終了間際
1点負けている状況で僕の渾身の
オフェンスリバウンドから
ゴール下の味方にパス
相手チームも必死に
ディフェンスにくるが
無理に止めファウル
ついに試合を決める
フリースロー2本を獲得した
僕の大きなガッツポーズは
もしかしたらプレッシャーを
与えたのかもしれない
願うあまりに見ていられずに
うつ向いていた僕に聞こえた
ガコッというシュートの落ちる音
なんとか二本目を決め気合いの
ディフェンス
終了のブザーが鳴る
両チームの代表、審判、
大会関係者が集まる
結果
時間がないのでジャンケンで
決めることに
まぁ仕方なく笑うしかない
僕の必死のがんばりは逆転の
シュートではなかったのだから
しばらくしてオフィシャルの前で
こちらに向かい土下座をする
チームメイト
負けか
チームnでの試合は次の大会まで、
残すはフェザーズ参戦予定
である大会の2月の選手権大会だ
選手権大会
区を取ると都大会に
そこも取って関東大会1位になると
オールジャパンの出場権が
与えられる
つまり日本一につながる道
どこの地点にいるかの問題じゃない
どの道の上にいるかが重要で
気の引き締まる大会
のはずが
前日に兄とユウとスノボに出掛けて
体がガタガタに
重たい体でがんばるも疲労に
集中力を欠きファウルが増える
後半に4つ目をやりベンチに
「 お前が抜けるわけにはいかないぞ 」
嬉しい言葉だがその日の僕には
すべて荷が重かった
このチームでの大会参加は
これで最後だ
春から我がチーム、フェザーズも
出場する予定だからだ
試合に誘ってもらい貴重な
経験ができて
ホントに感謝している
もっと大きな力になって
あげたかったが
そんな力は僕にはなかった
それがわかっただけで大きな財産だ
次にこの場所に立つときは
フェザーズのユニフォームを着て