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小さな栄光  作者: ジュン
43/59

〜 試合 〜



底辺でも末端でも


道は遥か頂上まで続く



それでいい それだけで



社会人チームと言っても

口コミで人は増えたりもする



その新しいパイプで

新たな人に出会う


僕は練習場所を探した

週に一回の練習では

コンディションの維持すら難しく

向上することは不可能に思えたからだ



僕は人と知り合う度にその人の

チームの練習に

参加しては一喜一憂していた



良い環境の練習場所はいくつかあり

時間のあるときには参加した



その中のひとつに家から車で

20分ほどの距離にある

区民プラザを本拠地とする

チームがあった


駐車場もあるし

更衣室、シャワー完備の

良い施設だった


ひとつ問題をあげるとすれば

床が硬く足腰にダメージがあり

僕の場合は

シンスプリントに悩まされた




そこは某大手ゲームメーカーnの

社員さんが福利厚生のために

活動しているチームだった


ここではチームnと呼ぼう



チームnは若手から年輩まで

豊富なタレントを要してはいたが

仕事の忙しさからなかなかメンツが

揃わなくて


僕らみたいなゲスト要員を

多く抱えていた


基本スタイルは身長も体格もある

ビッグマンがいるので

ゾーンで守って攻めは

ハーフコートバスケット



僕はいつでもバランサーの役割を

する癖があるので

ポジションがバラけていないと

インサイドをやることも多かった


小さく体もない僕にとっては

バリバリのビッグマンとの

マッチアップは

勉強になり楽しかった




ある日の練習後

更衣室でエースセンターである

代表が声をかけてきた


「 ジュンくん 試合出ない?


 助っ人お願いしたいんだけど 」



何の試合だろう?

試合なんて久しぶりだから

どんな試合でも行きたい

気持ちだった



「 区民大会の公式戦なんだけど 」



それは同じ区で活動している

我がフェザーズが社会教育関係団体

ならびにバスケットボール連盟に

登録参加したのちに


出場を目指している大会だった



少し戸惑った僕を見て


「 フェザーズまだ出てないよね?


 それまでのあいだだよ 」




「 よろしくお願いします 」


僕は深々と頭を下げた





フェザーズでの大会参加が

今の一番の目標だ


でもフェザーズは理想ばかりで

まだまだ人数が少なく

その日の練習にすら不安がある

くらいの未完成なチームだ


そのチームを一日でも早く

良いチームへの軌道に

乗せなくてはいけない


そのための努力を怠るわけでは

ないけれども

思うような成果が見てとれない今

僕が先にその世界を見てくることは

チームにとって僕が出来る役割

なのかもしれないと思う


そして僕自身に一番

必要な経験だとも思う




中学でバスケを始めて補欠を続け

高校に入ってレギュラーをとっても

それは弱小校であったからで


試合には勝てなかった


僕には絶対的に

試合経験が足りなかった




そんなフェザーズに

そして僕に


チームnからの誘いは

うれしいものだった



次の大会、一回戦まで日はない

練習は三回くらいだ



それだけの練習じゃ

ろくな準備は出来ない


今まで練習を見てきてスタイルは

わかっているつもりだけど

いざチームに入ってみて

どう出来るかかなり不安もある



とくにこれといった特化した

プレースタイルを持たない僕は

何を求められているかもわからない



ただなんとなくわかるのは

多少出来て走れて体力がある


それくらいでしか僕を見ていない



それくらいなら人数不足を補うのに

適当だろうと考えたんだと思う


偏ったプレースタイルの選手は

急に入れても使いづらいから




試合まで時間がない


nのチームに合流しての貴重な練習

この日は人数も集まり

3、4チーム組めた


チームnは僕を入れて六人

スタメンに入りゲーム練習



「 ジュンくん 1番やる? 」


ん~…


「 まだチームでやってないんで


 とりあえず遠慮しときます 」



ある程度チームを

分析していたとはいえ

自分の入った形はほとんど

意識していなかった



オフェンスはセカンドガード

ディフェンスは2-3ゾーン

下のサイド

を任された


僕は身長も体もないし

ポジションはガード


でもここではよく下を任される

体を張る仕事は鈍重でも頑丈な人が

するものだと思うが

こういう経験は楽しかった




ゲーム練習の結果は


普段の練習とあまり変わらず

これといった特別な

コミュニケーションもなく

普通に時間が過ぎていく


高さがあるのに体を張らなすぎで

ディフェンスリバウンドは

ギリギリだし

オフェンスに至っては諦め気味


そこから派生する

ディフェンスもなく

速い展開の反撃についていけない


僕もポジションを少し前目に

してたためセーフティに間に合わず


ジリジリ離される展開が続いた



頼みのインサイド攻撃も単発に

終わりディフェンスが収縮しても

インサイドアウトの外角も

ほとんどなかった



いつもは手強い相手だったのに

試合をイメージして分析すると

あまりに脆い




僕は思った


次からはもう少しガードよりの

仕事をしよう


僕の位置から見える

相手ディフェンスの

穴にうまくポジショニングするよう

指示を出そう


そして相手の速攻だって

僕が戻ればそう簡単にはやらせない


そんな感じでいこうと




次の練習


メンバーとゲストを合わせても

10人にならず

ゲームが出来たのも

練習終了間際だった


もちろん試合に向けた組み合わせ

なんてものはない



その次の練習は試合前の

最後の練習だったけど

内容は変わらず



クラブチームの


きっとちゃんと活動出来てるところ

もちろんたくさんあるだろうけれど


低レベルのクラブチームの

活動の難しさを思い知った




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