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小さな栄光  作者: ジュン
33/59

〜 ドロップアウト 〜


継続する事の大切さを



僕は見失っていた



その日、僕はまた部活をサボって


久しぶりに駅前にあるあの

ゲームセンターにいた



外も暗くなってきて、そろそろ

帰ろうかと思っていたころ


部活帰りの連中がやってきた



 「おっ! ジュンじゃん! 」



 「お前またバックレかよ 」



別に僕を責める奴はいなかった



 「試合までには来いよ


 ジュンがいなきゃキツいし 」


そう言ってもらえると

僕の居場所はあったと思い出す




その中でひとり、暗い顔を

しているやつがいる


シンジだ



 「 練習出てくださいよ 」


そうだね


と、軽く返事を返すが

シンジは引き下がらない



 「 もったいないですよ 」



もっと教えてもらいたいことが

たくさんあるんだ


あんたは自分の価値をわかっていない


散々まくし立てても

一向に生返事な僕を見て


 「 ここじゃ あれだから 」


近くの公園で話しましょう

とにかく来てください


シンジの勢いに僕は

断ることが出来なかった




ゲームセンター近くにある

公園のベンチに二人座った



最近よく声をかけてくれてたし

僕のことを気にかけて

くれているのは気付いていた


でも何故シンジがこうも

僕のことを心配してくれるのかは

わからなかった



 「 俺 尊敬してるんです 」


え?


 「 ジュンさんに憧れて


  目標にして頑張ってるんです 」



ジュンさんは自分の置かれている

立場に慢心せずにバスケ部の

ことを考えてくれてるし


後輩の面倒もよく見てくれた


俺にバスケット教えたのは

顧問じゃないですよ


俺のバスケはジュンさんが

教えたんですよ


俺がジュンさんのことを

目指して頑張っている限り

ジュンさんは自分だけの

存在じゃないんです


今はまだジュンさんの

背中を追いかけていたいんです




だから辞めないで





若者の悲痛な心の叫びは


僕の思いもよらぬ内容だった



 「 部室での事 覚えてます?」


練習試合にボロ負けしてあれだけ

みんな苛ついていたのに

片付けはやっておくよって


あんな優しい先輩見たことがない



 「 いや あれは… 」


ひとりになりたくて


 「 でも邪魔な俺に文句も


  言わなかったじゃないですか 」


でもそのあと、ロッカーと棚を壊したよ



あんなにバスケ上手いのに

負けてばっかでいつかは

やめちゃうんじゃないかなって

思ってましたよ


だから俺が上手くなって

チームを強くして


ジュンさんに

愛想つかされないように

頑張ろうって決めたんです




その日は電車がなくなる時間まで


公園での話しは続いた



ジュンさんが言うなら煙草だって


 「 やめますよ! 」


そう言ってシンジは煙草と

ライターを投げ捨てた



 「 とにかく次の練習には


  来てください 」



そこまで言われ僕も

練習に出ることを約束した




家に帰ってからも僕は寝付けずに

考え込んでいた



僕という存在…



他人に影響を与えていた



僕自身は気付かずに



今の僕には何が出来るんだろう



久しぶりというほど休んでいた訳では

ないが、次の日僕は練習に出た


膝の調子はそんなに悪くはない


少しの休養というか練習量の減少が

僕から膝の痛みを消し去っていた



このまま正式に復帰出来るくらいに




その日の練習ではいつも以上に

シンジが頑張って練習していた


ただいつもと違っていたのは

頑張ってるだけでなくシンジは

上手くなっていた


相変わらず不細工なシュートフォームや

レイアップだけれど確実に成長していた


強くなっていた




僕はそのシンジの成長ぶりに

正直びっくりした



シンジ


お前の言っていたことは

本当だったんだな


本当にチームを強くして


僕が辞めないでいいように

僕の居場所をなくさないように


そしてまた一緒にボールを

追いかけようと




でも僕が部活から遠ざかろうと

している原因は全然別な

ところにあるんだ


シンジの言うような人間ならば

僕はずっとチームを引っ張って

いったはずだ



でも僕にはそれが出来なかったんだ




シンジ


 「俺はそれほどの人間じゃない」


そしてバスケをやめるわけじゃ

ないのだけれど


部活に対する情熱は

もう薄れてしまったんだ



もしお前がまだここでやることが

あるのならば精一杯頑張ってくれ



自惚れるわけじゃないが俺は

他人のためにバスケをすること

なんて出来やしない


もちろんそんなこと

お前も望んではいないだろう




わかりました


 「俺 ジュンさんを尊敬してます」


それに変わりはないです



ジュンさんが自分の信念で

部活でのバスケをやらなく

なるのは勝手です


俺がジュンさんを尊敬するのも


俺の勝手です



誰にも文句は言わせない


たとえジュンさんでもね




母親がアメリカに行った時の

お土産でくれた


僕の大好きな

マジックジョンソンのTシャツ


お気に入りでよく着てた


少し色も落ちてきてるがそれほど

気に入って着てた



僕の宝物だ



それをシンジに渡した


僕の宝物であることを知っていて

シンジは躊躇ったが

貰ってほしくて渡した


僕の高校バスケのすべてはここに



シンジにはシンジの戦いが

ここにある


僕は自分の宝物でシンジに

想いを託した



お前はここで


俺が手に出来なかったものを


勝ち取ってくれ



俺もお前に負けないように

頑張って生きるから



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