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小さな栄光  作者: ジュン
21/59

〜 高校デビュー 〜


遅咲きの


バスケットマン


部室で用意を済ませ体育館に行く



部室にも体育館にもお偉い先輩方は

まだ姿を表していない


誰かが一人シュートを打っている


髪を染めピアスをして、見るからにチャラい


ジャージは同じ一年生


経験者だ



先に部に入っていた同学年に僕は挨拶をする



「ん?入部?俺も今日から


バスケやってたのぉ?」


なんだか嫌な雰囲気だが、

まぁ一応


と答え準備をする



今思えばチャラ男にクラスのやんちゃ君、

発表会のふざけた主将

少ない情報量でここがどういうところか

もっと早く気付いてもよかったかもしれない



雑草のくせに、その特有の生命力もなく

打たれ弱い僕は


距離を置くべく、テンション低めに準備を進める



その雰囲気を感じもせずに声をかけてくる


「経験者でしょ~?


 1対1やろうよ~」



ん?アップしてないし


下手だし

1対1苦手だし



まだアップしてな…


「いいじゃん、いいじゃん


 軽~くやろうよ」



自分の力を誇示したいんだな


入部初日にへこまされるのか…


まぁこういうのには角が立つより

付き合っといた方がましだろう




まだアップもしていないし、

あんまりへこみたくもない


本気ではなくアップがてらに、

軽くてきとうにやろうと思った



「あれっ?」




「うまいねぇ」



衝撃を受けた


同い年で僕より下手な人がいた



「中学、レギュラーだったでしょ?」


まさかいま負かした相手に、僕は一番

下手っぴで下級生よりも下手だったとは言えず


いや、レギュラーではないとだけ


「中学、強かったんだね」



それには、うんと答えたが僕が上手いとは?



その後、二人の先輩と何人かの新入部員が集まり

僕は次第に事態を把握していった




二人しかいない先輩

一応顧問の体育教師

何人かの新入部員、その中で何人かの経験者



すべて含めて、


僕が一番上手にバスケットをプレーした



体が出来上がってない事を差し引いても

一番上手にバスケをした


そして僕が体現できる少しのテクニックは

たしかに一番であったが、それ以外の

技術的、戦術的な知識や質、

ファンダメンタルやフィロソフィーなどは

次元の違うものを感じた



体育館中の注目が僕に集まっていた



僕は違った世界にやって来たような気持ちだった




見違えるほど急に素晴らしいプレーを

するようになったわけではない


普通に一生懸命やっていた数週間前と

同じプレーをしているだけ



僕は下手っぴで後輩にも追い越され

でもせっかくやり始めて好きになったバスケ


他にやることもなく、このままただただ

日々を過ごしていたらろくな人間にならない


目は出ずともけなげにがんばっている



それだけのプレーヤー





僕が変わったのか


世界が変わったのか



答えはすぐそこ


目の前に




周りの人が僕より下手…?


他に納得のしようがない




僕の戸惑いをよそに

みんなの僕を見る目は変わらなかった



「バスケうまいね」


「スタメン?」



僕が正直に答えると



「その中学、どんだけ強いんだよ!」


「スポーツ推薦とかなかったの?」


されたけど男子校だったし、

第一こんなに下手なのでバスケを続けるか

なんてわからなかった



中学校は強かった


でも全国区レベルでないし、超有名でもない



その中でまったく着いていけてなかった自分


なかなか信じてもらえない




何故か先輩は二人


二年生、

三年生はいない



しかもスクールライフが忙しいのか、

あまり練習にもこない


来ても遅くに来て軽く偉そうにして帰る



ろくな練習もしない




やらなきゃいいのに、

恒例だからかなんなのか練習試合があった


スタメンの発表

上級生の次に僕の名前が呼ばれた


上級生は二人、そのほかは

たいしたレベルでない部員たち

順当ではあるが違和感は大きかった




試合開始前に名前を呼ばれるなんて


下級生だけの練習試合に試合経験を

積むために年をごまかして出た


あのとき以来の出来事だった



試合はバスケとも言えないような、

球技大会以下の内容だったが、

僕には大きな意味を持つものだった


これからこのチームでやっていく上で


僕は主力候補だ




そう心踊らせはしたが、

その先のビジョンは見えてこなかった



僕はスタメンのうれしさに、

何も見えていなかった




特にこれといった練習もなく

ゲームでただ汗をかくだけの時間が続いた



僕は先輩がやって来るまでの間に、

もっと練習をしようと同級生に提案した


やる気はあるけど何をしていいか

わからない部員達


僕は練習メニューを考えた


着いてこれずに練習に来なくなった

同級生もいた


でもだいたいの人達は、

体育でないバスケをする事に

楽しさを感じていたと思う




日々が落ち着きを取り戻すまもなく、

変化が訪れる



片手間な部員が増えたり


減ったり



先輩が増えたりもした




一番の大きな変化は、バスケ経験者の

若い新任教師が顧問になった事だった




その新任教師は、お世辞にも

良い指導者ではなかったがプレーヤーと

しては僕よりもとても上手で強かった


練習では顧問の先生と対戦するのが楽しかった



何もなかった部にとって、

経験者の指導は劇的な進歩だった


僕の回りの男子だけでなく部全体が

バスケットをしはじめた


あらゆる基礎練習が取り込まれ、

部員達は悪戦苦闘する



が、練習の進行速度は落ちずに

身に付く間もなく

次のメニューが追加される



僕がいたから



繰り返される新しい練習


繰り返される顧問の見本


自分のものでないテクニックを前に

目を輝かせ真似をしようとする部員達


一巡目ですべてこなす僕



メニューの応用や追加は

とどまることがなかった


いつしか顧問の提案するメニューの種類と

僕の技術の一騎討ちになっていた


顧問はムキになって見本を見せる


僕は負けずにこなす




その頃の僕は中学バスケのおさらいしていた



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