〜 新しい季節 〜
新しい季節をむかえ
僕はどこに向かうのか
高校生になった僕は
新しい環境への不安や期待で
少しだけ心踊らせながらも
なかなか生活プランを
たてられずにいた
やりたい事もはっきりしない
勉強は好きじゃない
人付き合いが得意でもない
日々をただ過ぎ去るものとしていた
僕の心に引っ掛かっていたのは
部屋にある
まだ新しさが残る
青いマークのランバードの
バッシュだった
OBとなった僕は先の事はあまり考えずに
いままでと変わらずに、でも現役としての
精神的なプレッシャーなく平凡な
バスケとの生活を過ごした
引退前から迎えていた遅い成長期に
背も少し伸びてきて、体もほんの
少しずつだが強く大きくなっていた
目をみはるレベルアップは無いものの、
虚弱なお荷物キャラを
脱け出し普通のプレーヤーの
仲間入りをしようとしていたが、
それだけで僕が苦手なバスケを
新しい環境で続けて行く理由にはならなかった
校内は新入生を迎え数々のイベントがあり、
活気に満ちていた
そのなかに、クラブ発表会があった
各クラブが新入部員獲得のため、
演説や実演で自分のクラブをアピールする
自由だった
真面目に説明するクラブは少なく
自分の学生ライフのひとつのイベントを
楽しむようにてきとうだった
サッカー部にいたっては、サッカーには触れず
とりあえず一曲歌って終わっていた
バスケ部は
なんか代表がひとり、
体育館の舞台上で机から身を乗り出すように
学生生活の中で、運動をして汗をかき
青春を謳歌しようではないかと力説していた
別にバスケでなくてもどうでもよかった
一通りの発表が終わったけれど、
気の引くものはなかった
教室へ戻るため振り返ると、
出口付近まで勧誘のブースが続いている
ちょっと歌うサッカーはどうかと
思いバスケ部のブースまで行く
活動の曜日と仮入部の手続きはどんなか聞いた
活動は週3日、土日は基本休み
仮入部の手続きなんてなし、
明日っからすぐ来てね
みたいな軽いノリで年上の
きれいなお姉さんが言っていた
練習は少ないけど、
ちょっと様子だけでも見てみるか
それから決めればいい
次の日、ランバードのバッシュと着替え
などの用意をカバンに積めて教室へ向かう
授業が進むににつれ疑問が浮かぶ
そういえば仮入部はどうすればできるのか
手続きはどうでもいいとして、
どこに行けばいいのか
部室はどこに
その前に職員室へ行き、顧問の先生に挨拶を
顧問て誰だ
今日はやめとくか
などと考えてるところに朗報が届く
その人は僕の前の前の席に座っていた
あきらかにヤンキーです
といった感じ
気に入らないやつの陰口では、
あいつ高校デビューのくせに
なんて言われてた
でもクラスでは武闘派で通っている
高校デビューでも武闘派でも僕には関係ない
陰気臭いやつよりはよっぽど付き合いやすい
その人がバスケ部に入ったという情報が入った
授業も終わりホームルームも終わり、僕は
今日、練習に行くかを聞いた
僕は小学校の頃からあまり良い子ではなく、
どちらかというと出来の悪い側の人間だった
だから不良グループとも仲が良かったし、
気に入らない事なら番格だろうが
なんだろうが楯突いた
そんな僕はやんちゃ側の人間と認識されていた
高校に入って少し経つ、僕はおとなしくしていた
見た目も普通
物腰も柔らかい
服装などは、興味がないのでノーマル
前から僕を知らない高校生は、
僕をおとなしい人ととらえていた
その武闘派はバスケ部の新しい仲間入りを喜んだ
俺が部室連れてって先輩にも
会わせてやるよと張り切っていた
とりあえず楽な入り口を見つけ、
僕も気楽に着いていった
部室の前に着くと
おとなしい弟分的なやつが同じバスケ部に
入るのが嬉しかったのか
おとなしいだけに見える僕の手を取り
本当に僕の手を引いて、部室のドアを開けた
高校生にもなって同い年に手を
引かれるなんて、とも思ったが
面倒見のよい、いいやつだった