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小さな栄光  作者: ジュン
19/59

〜 卒業 〜

密度濃いひとつの季節がいま


過ぎようとしていた


次の季節の始まり


それは新たな世界

高校にあがってバスケットを続ける自信も

実力もない僕は、スポーツ推薦を断っていた



そんなとき担任に、去年からコース制を

取り入れ変わろうとする

都立高への推薦を持ち掛けられた


推薦での受験項目は、面接と作文だけだった


家から近く自転車通学が可能だし、

勉強が苦手だった僕には魅力的な条件だった




その高校へ推薦入学する事に少しの抵抗があった



ひとつはこの学区では最低レベルの偏差値


隣接する工業高校と合わせて

地元では悪い意味で有名だった



ふたつ目に、兄は僕と同じく頭は悪くないのに

勉強が嫌いで、高校進学に苦労しやっとの事で

この学校に入っていた


兄は中学では、スポーツ万能ながら

どのクラブにも属さなかった


勉強もしない、優秀な先生の指導も受けていない


そんな兄に対し僕は、三年間バスケを

通し学んだ事がある



勉強はしなかったが兄より良い高校に

入りたいと思っていた



近さと試験の無さに、結局はその学校に

推薦してもらう事になった


僕は受験勉強でなくバスケをして

卒業まで過ごし、見事かどうかはわからないが

作文と面接でその高校に合格した




入学準備のために高校に登校したとき


それぞれの中学校の制服で並んでいる

新入生の中に僕を見つけると

兄は大きな声であいさつをしてくる


僕も返すが、兄の回りはいつも通り恐そうな人達


それだけでも目立つのに兄は気の弱い

先生に、春には俺の弟が入学してくる、

やつはヤバイから気を付けないといじめられるぞ


などと言っていたずらをした



僕は出来るだけおとなしくしようと思った




なんとなく進路も決まり、

中学生活もクールダウンに入っていた



僕には進路も進学もどうでもよかった



僕の思春期を彩りつつも花咲かすことのなかった

バスケットボールを続けるか


小さい頃からやりたかったサッカーをやるか




新しい何かに立ち向かう勇気も、

もう三年間このまま雑草を続ける

ひたむきさも持っていない


何より自分の人生の一部を委ねられるほどの

指導者や環境はもうない


僕の先生は、高校にはいない


その代わりも、きっといない





卒業にあたり、部でセレモニーがあった


もらった記念品の中に先生からの

メッセージカードが入っていた




『 背も伸びて

ワンハンドスリーポイントが


うてるようになってよかったね



スリーポイントを武器に

何でも食べて


小さな巨人と呼ばれるように

がんばろう 』





僕の心は揺れた




揺れた


と思っていたのはその当時の感覚で


今にして思えば


そのときすでに僕の行く道を

指し示してくれたようで





僕は中学校を卒業した




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