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小さな栄光  作者: ジュン
16/59

〜 バッシュ 〜

母の優しさは


塞ぎ込みそうな


小さな背中を押した

あのファイナルショットを決めても、

幼い僕にバスケットを続ける自信はなかった



自分の運動能力の低さもセンスの無さも

知っていたから



バスケ部への入部当初、

続けるかもわからない活動に

大金は出せないので新入生はみんな

安目のコンバースの布バッシュを

親に買ってもらった


バスケ部に残る友達はすぐに

履き潰して新しいバッシュになる中

僕の布バッシュはなかなかに頑丈だった



それでも母親におねだりして

買ってもらったのは、

そのころ流行ったマジックテープでの

ラップタイプのもので


しかも他人とは違う物が欲しくて

アシックスでもニューバランス

でもなくアヴィアのバッシュを買ってもらった



すぐに怪我をした僕に

重すぎるんではないか?という先生のアドバイスで

またまったく履き潰さずに

新しいバッシュを買ってもらった



次に買ってもらったのは

ランバードのチカラ

「軽さが本当の力だ」

というのが謳い文句


それも誰かとかぶるのが嫌で

男子では珍しく白地に赤の

マークの入ったものにした


それは長く履いたけど

まったく履き潰せずに引退を迎えた



引退した僕は、他の控え組の話も聞いた


バスケを続ける人

やめる人


様々だった



レギュラー組のみんなはもうOBとして

後輩との練習に参加している



でも僕の気持ちは揺れていた



また新しく末席での三年間を過ごす事を考える


僕はバスケをやめようとしていた



気持ち揺れる日々が続く



僕は決断というプレッシャーを抱えていた



今、僕がおかれている環境では、

バスケを続ける意思のある生徒だけが

練習に参加しているから



一日が過ぎる度に、みんなに僕は

もうバスケしませんと言っているようで


協力的だった母に


もう気が済んだか?


と聞かれるのが怖かった




その頃の僕はまだ幼く自分のやりたい事を、

自分の判断だけで決める事が出来なかった



そんな押し潰されそうなあるとき、

ふと母が言った


「新しいバッシュ買おうか?」


僕は何も決められないままに、

母についてスポーツ用品店まで行った




うつむきかげんの僕を諭すように

母が手を引き、次に買ったのは


ランバード シグナルウィンク(だったような…)


デザインはチカラに似てシンプル、

白地に男の子らしくブルーのマーク



次の日、真新しいバッシュを持って僕は

体育館へ向かった




体育館にあったのは


遅かったな、という笑顔


暖かい雰囲気



自分に決断を迫っていたものは、

自信のない考えすぎの自分





母は重ねて言った


「卒業までだけでも

その新しいバッシュでやればいいじゃん」



中学校を卒業するその日まで


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