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小さな栄光  作者: ジュン
13/59

〜 夏を前に 〜

繰り返す日々の中


めぐる季節のように


僕の異変も繰り返された


チームの目標は関東大会、そして全国大会出場


その大きな目標のもとに

厳しい練習が繰り返される


その中にあって僕の目標は試合に出ることだった



どこのレベルの話しか忘れたが、区大会の

トーナメントにスーパーシードを

設けようという話があったらしい


うちの先生は断固反対をした


毎大会上位に入るうちの学校では、

試合に出れない生徒がたくさんいるからだ


いくら区大会でもベスト8からの登場じゃ、

僕の出番は来ないだろう


先生にとっては来年以降の為にも

試合経験は大事な問題だった



厳しい練習は繰り返される



公式戦という特別な試合に出るために

僕も例外無く練習についていった



その日は近くの小学校の体育館を

借りての夜間練習だった


シャトルランをしていて、

右足を出してターンをした時だった


バラバラッと離れ崩れる感触を

膝に感じると僕は床に崩れ落ちた


その日の差し入れ当番はうちではなく、

友達のお母さんがきていた


その目の前で僕は倒れた


おばさんの話では、声をあげるでもなく

ただ静かにゆっくりと、

スローモーションのように倒れた


何事もなかったかのように

すぐに立ち上がりそうなくらいに



前と同じです



中断した練習は、僕を除き再開された


体育館の隅に横になり、

すぐに体を冷やさないよう

タオルやジャージが山のように

僕の上に投げられた


へこみそうな僕とチームの雰囲気を考えて、

先生をはじめみんなが笑顔で投げた



その山の中、僕は静かに天井を見つめながら

心は落ち着いていた



何一つ変わった事はない


間違いもない


これが僕の日常だと思い込んだ


不思議と嫌な気持ちはなかった


ただ、仕方ない


仕方がないと





僕のケガは何ヵ月という単位で

バスケから遠ざかるものだった


練習出来ない多くの時間は、

ただでさえ下手くそな僕に

容赦なく襲いかかる


見学中、もちろん出来る範囲で

ドリブルやシュートの練習はした


でも思うように上手くはならない


誰よりもドリブルが上手くなっていい立場なのに

なかなか上達しなかった




そろそろ最後の夏の大会が始まる頃


僕はまともに練習にも復帰できていなかった




少しづつ練習に入れるようになってきても、

それは個人的な変化であってチーム内での

僕の位置は変わらなかった



そして僕の目標も変わらない



引退までに、バスケを続けているうちに

もう一度だけでいい、試合に出たい


それだけを目標に練習していた



しかし最後の夏の大会を目前にしても、

僕が全力でコートを駆け回ることはなかった



そのままに最後を迎えていたならば、

僕は今でもボールを追いかけていただろうか




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