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予期せぬ再会

不穏な気配が……。

 私が孤児院を訪れた日から、約一週間経った。私は今日も、ルメール家の屋敷を訪れている。


 昼下がりの応接室で、シルヴィ様が溜息を吐いて言う。


「副作用は出ていないけれど、なかなかお兄様の首が見えるようにならないわねえ……」


 私も、紅茶を一口飲んだ後にポツリと呟く。


「効果が出るまでの時間に個人差があるとは言え、そろそろ呪いが解けてほしいですよねえ……」


 師匠は「焦らず様子を見ろ」と言っていたけれど、テランス様は公爵家の当主。そろそろ首から上が見えないと、社交に支障が出るだろう。


 テランス様が、サラサラと紙に書いて私に見せる。


『確かに困るな。ここ一週間公の場に出ていないから、私が疚しい事をしているのではないかと言う噂も出ているくらいだ』


 私は、思わず立ち上がって叫んだ。


「そんな……! テランス様は被害者じゃないですか! なんでそんな噂が……たった一週間顔を見せていないだけなのに!」


 すると、シルヴィ様が一口紅茶を飲んで言った。


「自分の懐具合しか気にしていない貴族にとって、お兄様は目の上のたん瘤。何でも良いから理由をこじつけて、お兄様を追い落としたいのよ」


 私はギュッと拳を握る。先日孤児院に同行した時に私は知った。テランス様が、本当に子供達の事を、この国の民の事を考えてくれている事を。

 それなのに、追い落とされようとしているなんて……。


「テランス様、何か私に出来る事があれば言って下さいね! 私はテランス様の味方です!」


 力強く言う私に答えるように、テランス様は身体を傾けた。頷いたのだろう。

 その時テランス様がどんな表情をしていたのか、私は知らない。


       ◆ ◆ ◆


 その日の夕方、私は真っ直ぐ森に帰らずに街の大通りを歩いていた。たまには師匠にお土産でも買って行こうかと思ったのだ。


 そして私は、ある露店の前で足を止める。そこでは丸い形のクッキーが売られていて、甘い香りが辺りに漂っていた。


 このクッキー、師匠に買って行こうかな。そう思った時、不意に背後から声を掛けられた。


「お前……もしかして、クロエか?」


 聞き覚えのある声。私がゆっくり振り向くと、そこにいたのはライトブラウンの髪を短く刈った私と同じ年くらいの青年。彼は、こちらに近付くとニヤニヤしながら言った。


「相変わらず地味だなあ。今も独身なんだろう?」


 私は、震える声で言った。


「……お久しぶりです、ナルシス様」


 彼はナルシス・アルチュセール。侯爵家の息子で、私の元婚約者。そして、私が街を離れるきっかけとなった男性だ。

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