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孤児院

二話目です。読んで頂けると嬉しいです(´艸`*)

 テランス様が師匠の家を訪れた翌日。私は久しぶりに街へ出る事になった。馬車に揺られながら、私は外の景色を眺める。


 市場で客の相手をする果物屋のおかみさん。馬車の中まで届くパンの匂い。どれもこれも懐かしい。そして、懐かしさと同時に嫌な記憶も呼び起こしてしまい、私はブンブンと首を横に振った。


 しっかりしなさい、クロエ! 私は今日、テランス様のお体の状態を確認する為にここに来たんだから!




 しばらく街を走った後、馬車はとある屋敷の前で停まった。黒くて大きな門。白くて綺麗な壁。ここが、テランス様達の暮らす屋敷なのだ。


 馬車を降りた私がドアベルを鳴らすと、すぐに使用人が出てきて、私を応接室へと案内してくれた。



 私が応接室でしばらく待っていると、テランス様とシルヴィ様が部屋に入ってくる。


「テランス様、シルヴィ様。こんにちは」


 ソファーから立ち上がった私が頭を下げると、シルヴィ様が微笑んで言う。


「畏まらなくて良いわ。座って頂戴」


 座った私は、チラリと向かいに座ったテランス様に視線を向ける。やっぱり、首から上は見えないままだ。


 呪いを解く薬が効くには時間が掛かると聞いていたけれど、顔が見えるようになるまでどれくらいかかるんだろう。師匠は、一週間あれば解呪されるだろうと言っていたけれど。


 気を取り直して、私はテランス様の体調を聞いた。テランス様は、紙にサラサラと書いて私に見せる。


『大丈夫だ。副作用らしき症状は何も無い』


 私は、ホッと胸を撫で下ろした。そして、持ってきた大きなトランクからいくつかのガラス瓶を取り出す。

 それをテーブルに置くと、私はテランス様の方を向いて言う。


「これは、副作用を抑える薬です。テランス様から見て右から、胃を保護する薬、眩暈を抑える薬、お腹の調子を整える薬となります。これをこの屋敷に置いて行きますので、もし副作用の症状が出たらお飲み下さい。それと、もしこの薬で対処出来ないような副作用が現れるようでしたら、なるべく早く町医者に診てもらって下さい」


 テランス様は、紙に『分かった』と書いて私に見せた。私は頷くと、トランクを閉めて笑顔で言う。


「では、私はこれで失礼しますね。明日またこちらに伺います」


 すると、シルヴィ様がティーカップから顔を上げて聞いてきた。


「あら、もう森の屋敷に帰るの? 街で買い物とかはしていかないのかしら? この辺りには有名な仕立て屋もあるのに」


 私は、片手を振りながら苦笑して答える。


「買い物は遠慮します。お給金も高くないですし、私みたいな地味な女にはお高い服は似合いませんよ」


 すると、シルヴィ様は私をジッと見て言う。


「あら……あなた、顔立ちは良いじゃない。三つ編みにしたダークブラウンの髪もエメラルドグリーンの瞳も魅力的よ。その紺色のワンピースをやめてオシャレな緑色のワンピースでも着れば、街で殿方の視線を独り占めできるんじゃないかしら」

「え……そ、そうでしょうか?」


 私が照れて俯くと、テランス様がサラサラと紙に書いて私に見せる。


『ああ、君は魅力的だと思う』


 私は、顔が真っ赤になるのを感じた。今まで、男の人に魅力的だなんて言ってもらった事が無かった。以前町で暮らしていた時に笑い合った『あの人』にすら、容姿を褒められた事なんて無かった。



 私が嬉しさを噛み締めていると、不意に応接室のドアがノックされた。「失礼致します」と言って部屋の中に入って来たのは、執事らしき初老の男性。


 その男性は、テランス様の側に近付くと、何事か囁いた。テランス様の耳は見えないはずなのに、ちゃんと耳打ちをしているように見える。


 執事の言葉を聞いたテランス様が、驚いたようにバッと身体を執事の方に向ける。シルヴィ様が、眉根を寄せて聞く。


「どうなさったの、お兄様、セザール?」


 セザールというのが執事の名前なのだろう。セザールさんは、困ったような顔をして告げた。


「それが……旦那様が支援をしている孤児院の子供達が流行り病に罹ったようでして……。複数の子供が寝込んでいるようなのです」

「何ですって!?」


 シルヴィ様が大きな声を出す。テランス様は、紙にサラサラと書いてセザールさんに見せた。


『今から孤児院に様子を見に行きたい。セザール、準備を頼む』


 それを見たセザールさんは、恭しく頭を下げる。


「承知致しました、旦那様」


 私は、思わず立ち上がって言った。


「あの、私も孤児院に連れて行って下さい! 見習いとはいえ、私も魔法薬師の端くれ。病人がいると聞いて放っておけません!」


 テランス様は、少し考えた後、立ち上がって紙を見せた。


『では、同行をお願い致します、クロエ殿。何か私達に出来る事があれば遠慮なくおっしゃって下さい』


 私は、力強く頷いた。

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