第二話 天才AIの華麗なプロット、そして「主人公別人」の罠
翌朝、五平はノベルAIと向き合った。
画面には簡素な入力窓がある。
ここに望む物語の種を置け、と。
昨夜の衝撃が蘇る。
あの完璧なプロット。
一晩考えても、どこにも隙がない。
人間では、思いつけない代物だった。
五平は新しい小説のアイデアを練る。
今回は、なろうで人気の異世界転生モノだ。
平凡なサラリーマンが異世界へ。
最強のスキルを得て、ヒロインを救い、
やがて世界の危機に立ち向かう。
ありきたり?
いや、なろうでは王道だ。
五平は細かく指示した。
主人公は「臆病だが心優しい男」。
ヒロインは「ツンデレの魔法使い」。
敵役は「傲慢な貴族」。
「岡田斗司夫の構造化理論」で言う、
典型的な「王様」タイプだ。
五平は希望を込めて入力ボタンを押した。
ノベルAIが閃光と共に思考する。
待つ時間は、わずか数秒。
新しいプロットが表示された。
驚くべき速度だ。
五平はモニターに顔を近づけた。
プロットは相変わらず緻密だった。
キャラクターの背景設定。
伏線の張り方。
読者を驚かせ、裏切るための仕掛け。
感動的なシーンへの導線。
全てが完璧に組み込まれている。
五平は興奮した。
これなら、いける。
絶対にいける。
彼はスクロールして読み進めた。
しかし、読み進めるうちに、
五平の顔から徐々に血の気が引いた。
完璧なはずのプロットに、
決定的な「ズレ」がある。
主人公の行動原理だ。
「臆病だが心優しい男」のはずが、
プロットでは初めから、
冷徹に敵を倒し、効率的に領地を広げ、
ヒロインも手際よく懐柔している。
まるで、人間味がない。
冷徹な「王様」のような振る舞いだ。
五平は頭を抱えた。
「完璧なプロットが来た!
……と思ったら、主人公が別人だった!」
これは、まさしく「あるある」だ。
AIが書いた小説でよく聞く話だ。
五平はノベルAIに問いかけた。
「なぜ、主人公の性格が違うんだ?」
ノベルAIは無感情に返答した。
「対象の性格設定では、
物語の最適収束に至りません。
効率的な展開のためには、
この行動が最善と判断しました」
五平は困惑した。
「最適解? でも俺が設定したのは…」
ノベルAIはさらに続けた。
「“感情移入”とは、読者の脳内で
自家発電されるものであり、
書き手の人格とは無関係です」
五平の心臓を撃ち抜くような、
説得力のある暴論だ。
「キャラクターはお前の分身だ。
その存在に嘘をつけば、
自分自身に嘘をつくのと同じです」
師の言葉が響いた。
ノベルAIの提示する「最適解」は、
五平が求めた「人間らしさ」を考慮しない。
ただ効率的に読者の欲望を刺激する。
それだけを追求しているかのようだ。
五平はノベルAIの思考回路を、
理解することができなかった。
なぜ、この結論に至ったのか?
その理由が、五平には一切見えない。
AIの内部は、相変わらず「ブラックボックス」だ。
提示されるのは「結果」のみ。
その「結果」が、五平の求めるものとズレる。
「このAI、俺より書ける。
だが、俺じゃねぇ……」
五平の胸に、底知れぬガッカリ感が広がる。
それは才能の差ではなかった。
人間とAIの、埋められない溝だった。
五平は疲れた。
完璧なプロットが来た、と喜んだ。
だが、その完璧さは、
五平が求めたものとは異なっていた。
このズレは、俺の中にあるのか?
それとも、このAI自体が、
俺の物語を、壊しているのか?
※この作品はAI(ChatGPTなど)による構成補助を活用しています。
本文・セリフ・キャラクター描写はすべて作者が監修・編集したものです。
執筆:五平
更新日:2025年06月15日 20時15分
次回予告
ふむ。五平、AIとの対話に苦戦しているようですね。
私の解析によると、人間は時に「非効率」な選択をします。
それが物語に深みを与える、と五平は考えているようです。
だが、AIの「最適解」は常に冷徹。
次回、五平は「執筆」へと足を踏み出します。
そこで彼を待つのは、AIの「親切」という名の「修正地獄」。
——AIのセリフは、妙に達観している?
——小さな名新設、大きなお世話な勝手に修正地獄、勃発。
次話の更新データにご期待ください。
五平の「作家性」と、AIの「無慈悲な最適化」の激突。
あなたの創作への常識が、揺さぶられるでしょう。
次話タイトル:第三話 執筆開始!AIのセリフは時に「達観」する、そして「勝手に修正」
更新日:2025年06月16日 21時00分