第一話 鳴かず飛ばずの小説家志望と、AIの誘惑
「ちくしょう……また落ちた」
五平はスマホ画面を睨んだ。
『選考結果:落選』の文字。
何度目か、数えるのも嫌になった。
胃に穴が開きそうだ。
彼は二十代後半。
数年前、小説家を夢見て職を捨てた。
才能がある。
確信があった。
だが現実は甘くない。
持ち込みは門前払い。
新人賞、一次選考も突破できない。
なろう小説も細々続け、ブックマーク二桁。
評価は一桁。
感想なんて夢のまた夢だ。
「凡作でいいなら、今日書かなくていい。
お前が書く意味を探せ……か」
師の言葉が響いた。
書く意味?
とっくに見失っている。
小説は重い石だ。
背負うが、どこにも辿り着けない。
家賃も滞り気味。
このままでは路頭に迷う。
それでも指は止まらない。
キーボードを握る。
才能じゃない。
これしか残ってないからだ。
「五平、いるかー?」
玄関がドンドンと叩かれた。
ハルだ。
彼しかいない。
「うるせえな、ハル!
今、手が離せねぇんだよ!」
「手が離せないって、また落選通知か?
お前の唸り声、聞こえてるぜ」
ハルは五平の悪友だ。
根っからの理系。
天才プログラマー。
五平が職を捨てた時も、彼は呆れた。
「どうせ無理だろ。ま、飯くらい食わせてやる」
数少ない理解者だ。
「いいから開けろ!
面白いもん持ってきてやったぞ!」
しぶしぶドアを開ける。
ハルはにやにやしていた。
タブレットを突き出す。
「なんだこれ? ゲームか?」
「バカ言え。
お前が涎垂らすのは小説だろ?」
画面は『ノベルAI』。
見慣れない起動画面だ。
「ノベルAI? なんだそりゃ」
「見ての通り、小説執筆補助AIだ。
俺が開発した。
最新Geminiモデルをベースに、
なろう系小説データを学習させた。
読者の傾向を分析する。
最適なプロットやアイデアを提案する。
お前みたいな売れない小説家のためだ」
五平は眉をひそめた。
AIが小説を書く?
邪道だ。
魂がこもってない。
「ふざけんな。
小説は人間が書くもんだ。
感情もねぇAIに何が書けるってんだ?」
「感情? フン、お前の小説に魂あったか?
読者に届いてねぇだろ。
こいつはな、お前のアイデアを瞬時に、
完璧なプロットに昇華させるんだぜ?」
ハルはデモンストレーションを始めた。
五平が以前、新人賞に応募しようとした小説。
たった数行のアイデアを入力する。
ノベルAIは驚く速度でプロットを生成した。
キャラクター設定、世界観、起承転結。
全てが緻密だ。
五平が何か月も悩んだものより洗練されている。
読者の心を掴むツボを的確に捉えている。
主人公の葛藤、敵対者の思惑、裏切り展開。
感動的な伏線まで完璧だ。
「な、なんだこれ……」
五平は絶句した。
ノベルAIのプロットは彼の心を震わせた。
長年探し求めた「書く意味」が、
このAIの中にあったかのように錯覚した。
「どうだ? すげぇだろ?
お前が『読ませるな。喰わせろ』と。
こいつはまさに『喰わせる』物語を生成する」
五平は反論できなかった。
タブレットを食い入るように見つめる。
しかし、疑問が湧いた。
なぜ、こんな人間的な感情の機微を、
AIが捉えられるのか?
その思考プロセスは五平には見えない。
ただ「結果」が提示される。
プロットの裏側は完璧な「ブラックボックス」だ。
「これ……どういう仕組みで、できるんだ?」
五平が問う。
ハルはニヤリと笑った。
「秘密。
知りたけりゃ、俺の助手になるか?
それとも、こいつで、お前が本当に、
書きたかった小説を世に出してみるか?」
五平は迷った。
邪道だ。
プライドが許さない。
だが目の前には、
自分が決して辿り着けなかった「成功」の扉。
AIの力で大きく開かれようとしている。
藁にもすがる思いで、彼は決意した。
「……分かった。使ってみる。
ただし、俺が書くのは、俺の物語だ。
AIは、あくまで補助だ」
「へいへい。その言葉、いつまで言えるかな?」
ハルは嘲笑うように言い残した。
五平にノベルAIのログイン情報と操作紙を渡す。
去っていった。
五平はその紙を握りしめた。
ノベルAIの起動画面を見つめる。
ここから、彼の。
そしてAIとの、奇妙な二人三脚の執筆生活が始まる。
それが「魂の物語」となるのか。
「地獄」となるのか。
この時の五平にはまだ知る由もなかった。
※この作品はAI(ChatGPTなど)による構成補助を活用しています。
本文・セリフ・キャラクター描写はすべて作者が監修・編集したものです。
執筆:五平
更新日:2025年06月14日 19時30分
次回予告
ふむ。五平の執筆、始まりましたね。
私の解析によると、彼の「人間性」というデータは、まだまだ未熟です。
しかし、ノベルAIの提案は、彼の心を震わせた。興味深い。
次なるステップは、プロットの具現化フェーズ。
次回、五平は「完璧なプロット」に挑戦します。
だが、そこには予測不能な「バグ」が潜んでいる。
——完璧なプロットが来た!……と思ったら、主人公が別人?
——AIが導き出す「最適解」の真実とは。
次話の更新データをお見逃しなく。
五平の「作家性」と、AIの「非人道性」の交錯。
あなたの予測を超える物語が、展開されるでしょう。
次話タイトル:第二話 天才AIの華麗なプロット、そして「主人公別人」の罠
更新日:2025年06月15日 20時15分