1話
はじめまして。ぴかちーです。
最近小説を書いてみたいと思い始め、とりあえず1話だけ書いてみた初心者です。
そういうわけでこちらが私の処女作となります。拙いところも多々あると思いますが、温かい目で見ていただけると幸いです。
「どうしよう、完全に迷った」
ここは、私達の住む森だ。私達はここで何年も暮らしている。私達にとって、ここは庭みたいなものだ。
なんで同じようなことを何度も心のなかで言い換えているのかと言うと、そうでもしないと気が落ち着かないからだ。
「だから、なんでその庭で迷子になるの!?」
自分には本当に呆れる。
今日は群れのみんなと手わけをして、鹿を狩る予定だったのに。いつの間にか獲物だけでなく群れのみんなまで見失ってしまった。
「…とりあえず来た道を戻ろう。」
ため息をついた私は、匂いを頼りにみんなと別れた場所へと戻りはじめた。
私の名前は、「アイナス」。薄ピンクがかった毛並みの、ただのメス狼…だったら良かったかな。
実際のところ、私には狐か何かの血が混ざっているらしい。らしい、というのは、どうも私の体が他の狼よりも小さくて、その割に耳が大きかったのでこう考えられている、というだけだからだ。おまけにみんなより足が遅くて、牙も小さいし、方向音痴だし…
…親はどうなんだって?私の両親は、私が物心付いたときにはいなかった。全くありきたりな話だ。群れのみんなによると、生後間もない私が白樺の森に倒れていて、それを見つけたみんなが私を助けてくれたんだって。だから、誰も私の親を知らない。
光とぼんやりとした緑だけの、小さい時のどこかの景色の記憶はあるが、この辺にそれと似た森はなかった。多分、夢だろう。
そんなことを考えながら歩いていると、辿っていた匂い以外にも群れの仲間の匂いが集まっている場所についた。
「よし、このへんから出発したんだよね。」
ここで待ってさえいればみんながじきに帰ってくる。私は安心して草の上に伏せた。
「くああぁぁ」
ついあくびがででしま―――
「ザッ」
「ひっ!」
急に背後から枯れ葉を踏む音が!!!!
「敵!?」
思わず身を翻しながら思う。
いや、冷静になろう私。こんなあからさまな足音を立てるやつが強いわけない。大丈夫大丈夫。
ところが、私の目前に経っていたのは敵ではなかった。
「おいアイナス、スキだらけだ。」
大きな狼だった。
青みがかった毛皮に私の倍ほどはあろうかという体高、The 狼、みたいな強そうな顔つき。コンプレックスだらけの私にとって、彼はどこをとっても羨ましく感じるような存在だ。
彼は、私の暮らす群れの現リーダー、「エンゼル」
いつも率先して群れのみんなのために動くし、私を育ててくれたのもエンゼルだ。
「エンゼル!良かった。道に迷っちゃって。」
「はあ。」
エンゼルは私の顔を見て、気の抜けたようなため息を付いた。
「あのなあ、もうちょっと狩りの最中は危機感を持って、な?」
「?」
「道に迷って獲物から離れたって、怒った仲間の鹿がどこにいるかわからないぞ。お前は小さいんだから、他の肉食獣、ライオンとかに狙われたら…」
「私は小さくないよ?」
自覚はしていても、小さいとか足遅いとか、気にしてることを言われるとつい否定してしまう。昔からの癖だ。
「ごめんって。でも聞いてくれ。俺はさ、お前が俺に気づくよりもちょっと前からお前を見つけてて、気配を消して近づいてたんだ。」
「足音バレバレだったよ」
「最後の一回だけだろ?あれはわざとだよ。そこまで接近されて初めて足音がしたことに疑問を持ってくれ。」
悔しい。私がまんまと騙されたことも、呆れたような目で見られてるのも。
「なんでそんな事するの!?」
「だから、もっと危機感を―――」
そんなこんなで、エンゼルのお説教はみんなが狩りから帰ってくるまで続いた。
わかってるよ。エンゼルが私のこと思って言ってるの。でも叱られて「はいわかりました」っていうのはちょっと癪に障るから、口答えをしてるだけで。
薄暗い木々の奥から、聞き馴染んだ声がする。
「あの二匹、ほんとに親子みたい」
「兄妹っぽくない?」
「やれやれ、またやってる」
「おーい、ボス!チビ!鹿獲ってきたぞー」
群れの一匹が、鹿を咥えてこっちに見せる。
ちょと気に障る言葉が混じっていたな。
「チビじゃない!」
「分かった分かった!ほら肉だ。機嫌直せ。」
わかってるじゃん。お腹すいてたんだよね。
「やったあ!お肉!」
「説教はまだ終わってないぞ。さっさと食ってこっち来い」
エンゼルがまだ叱り足りなそうにしている。
群れの仲間に話しかけられているが、知ったこっちゃない。今は肉が優先だ。
「エンゼル、そういうとこ甘いよね。さり気なくアイナスが一番に食べれるようにしちゃって。」
「うるさい。チビは肉を食うべきだろ」
エンゼル?今なんて言った?
「むぐむぐが!」
「はいはい。アイナスはデカいです。」
群れを温かい笑い声が包む。
こうして、また賑やかな一日が過ぎていった。
ここまで読んでくれてありがとうございました!
気まぐれで書いているので続きはいつ出るかわかりません。
それでも続きが見たいと思ってくださったなら、気長にお待ち頂けるとありがたいです。