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転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!  作者: 雪見クレープ
第1部 転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!
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第6話 天才魔法使い、無表情で無茶振り

 ある日、午後の授業が終わり、私は訓練場に向かっていた。今日はエリオット先生に魔法の特訓を受けることになっている。彼は学院で「天才魔法使い」と呼ばれてはいるが、私の魔法力に興味津々で、正直言って彼に魔法を教わるのってちょっと怖い……。


「はぁ……また何かやらかしそうな予感がする……」


 重い足取りで訓練場の扉を開けると、そこには既にエリオット先生が待っていた。黒髪をさらりと整え、無表情のまま静かに立っている彼を見て、私はさらに緊張が高まった。


「リリアナ様、遅いですよ」


 彼の冷静な声が訓練場に響く。私は思わず背筋を伸ばして、「す、すみません!」と謝る。どうしてこの人、何もしてないのにこんなにプレッシャーを感じさせるんだろう……。


「それでは、さっそく始めましょう」


 エリオット先生は特に前置きもなく、私を訓練場の中央に立たせる。彼の態度はいつも通り、どこか淡々としているけど……なんだろう、この冷静さの中に潜む「計画的」な感じは。


「リリアナ様、今回は火の魔法を使った『応用』を教えます」


「応用って……何をやるんですか?」


「簡単です。炎を自在に形に変えていただきます」


「形……ですか?」


「はい。例えば……そうですね、動物の形を作ってみましょうか」


 ――え、何それ!? 私はただ火の玉を出すだけでも毎回爆発してるんですよ!? いきなり炎で動物を作るって、どういう難易度なの!?


「そ、そんなの無理ですよ! いきなり動物なんて!」


 私は慌てて反論したが、エリオット先生は微動だにしない。相変わらず冷静で無表情なまま、私に指示を出し続ける。


「大丈夫です。リリアナ様ならできます。では、まず猫を作ってください」


「猫……!? そもそも炎で猫ってどういう……えぇぇ?」


 私は戸惑いながらも、魔力を集中して炎を出そうとする。カイル様に言われたように力を抑え過ぎないように注意する。すると火の玉が手のひらに浮かぶ。

 ……そこから猫? どうやってそんなものを作ればいいの??


「ふぅ……いくしかない!」


 私は覚悟を決め、炎を少しずつ形にしてみることにした。

 ……んん、まずは耳? 次はしっぽ? いやいや、全然猫っぽくならないんだけど!?


「えーっと、これでいいのかな……」


 私はどうにか頑張って、炎でそれっぽい形を作り上げた。だが――


「リリアナ様、それは……猫、ですか?」

「えっ……どう見ても、猫……じゃない?」


 エリオット先生の表情が、少しだけ……ほんの少しだけ困惑しているように見える。確かに、炎で猫を作ったつもりだったけど、どう見ても「タヌキ」にしか見えない……。しかも、炎の形があっちこっち崩れてて、しっぽはぐにゃぐにゃ、耳も左右非対称。


「あっ、失敗したかも……」

「いえ、リリアナ様。それは……新しいなにか、別パターンの成功とも言えます」


 ――新しい何か!? いやいや、猫じゃないんだから失敗でしょ!? さすがにそれはフォローになってないよ!


 私は炎のタヌキ(?)をそっと消し、肩を落とした。これ以上の無理難題を押し付けられたら、私は完全にお手上げだ……。


「リリアナ様、大丈夫です」

「えっ?」


 不意に、エリオット先生が優しげな声で言った。あれ? この人、こんなに優しい声も出せるんだ。いつも冷静沈着で表情も硬いのに、少しだけ柔らかい笑顔を浮かべている……ような気がする。


「リリアナ様には、まだ自信が足りないだけです。魔法は繰り返し練習すれば、必ず形になります」

「でも……私、本当に上手くできるんでしょうか……?」


 私は不安を口にしてしまった。だって、今まで何をやっても暴走するばっかりで、成功のイメージが全然湧かない。


「私が保証します」

「え?」

「リリアナ様には非常に強力な魔力があります。その力を完全に引き出すには時間が必要ですが、必ずその力を制御できる日が来ます。ですから、自信を持ってください」


 エリオット先生の言葉は、いつもより少しだけ温かかった。私に対して本気で励ましてくれている。もしかして、私のことを少しは認めてくれてるのかな?


「そ、そうでしょうか?」

「ええ。私はリリアナ様の潜在能力を信じています。私自身も、その力に興味があります」


 エリオット先生は淡々と言ったけど、最後の「興味があります」はちょっと怖いんですけど……。


「じゃあ、もう一度やってみます」


 少し勇気が湧いてきた私は、再び魔力を集中し、今度こそ猫を作ろうとした。火の玉を手に浮かべ、少しずつ耳やしっぽを形作る。今度は、さっきよりもマシな気がする。……けど――


「うわっ!?」


 突然、炎の形が暴走し、猫っぽい獣に変わってしまった! しかも、私の手元から離れて、訓練場をウロウロし始めた!


「エリオット先生! なんか炎の猫が勝手に動き出したんですけど!?」

「ふむ、面白いですね」


 面白いじゃなくて、止めてくださいよ!!


 私は炎の猫をなんとか制御しようとするけれど、炎はぐんぐん膨れ上がり、あっという間に訓練場の端まで歩いて行ってしまった。


「ま、待って……!」


 必死で追いかける私を見ながら、エリオット先生は相変わらず無表情のまま、冷静に観察している。


「リリアナ様、その猫は貴女の感情の影響を受けているようです。もっとリラックスして、心を落ち着けてください」

「そんなこと言われても……!?」


 追いかける私の気持ちなんてお構いなしに、炎の猫はさらに暴れ始め、今度は訓練場の壁に向かって突進し始めた。結界があるとはいえ、これはまずい!


「きゃぁぁぁ、エリオット先生、助けて!!」

「リリアナ様、もう少し魔力の流れに集中してください」


 えっ、魔力の流れっ!? どういうことっ!!


 結局、炎の猫は壁に激突し、巨大な爆発音とともに、訓練場が火の海に包まれた。


 ………………。


「や、やっちゃった……」


 私は顔を覆いながらその場にへたり込んだ。もう、これはダメだ。大失敗もいいところ……。


 しかし、エリオット先生はそんな状況でも冷静そのもの。少し埃まみれになりながらも、ゆっくりと歩み寄ってきた。


「リリアナ様、今のは中々興味深い結果でした」

「興味深いじゃなくて、大失敗じゃないですか!?」

「失敗から学ぶこともあります。今の爆発で、いくつかの課題が見えてきました」

「確かに課題だらけだと思いますが……」

「次はもっと上手くいくと思いますよ」


 エリオット先生は、淡々としながらもそう言って励ましてくれた。……励まされてるんだよね?


「次はもう少し簡単な形にしましょう。例えば……小鳥とか」


「小鳥!? それって、さらに難易度上がってませんっ!?」


 私の苦労はまだまだ続くようだ……。

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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