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転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!  作者: 雪見クレープ
第2部 魔法が最強すぎてラスボスにも面白い女認定される悪役令嬢
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第40話 王国第零研究機関

「当然、行くわ」


 力強く返答すると、ライアンは静かに佇み、私たちを見つめていた。


「よろしい、ならば導こう。この黒い霧の真相へ、そして……王国が隠し続けてきた“封印された技術”の存在へ」

「封印された技術……?」


 私はその言葉に反応し、ライアンの顔をじっと見つめた。


(技術? それが黒い霧とどう関係するの?)


 カイル様が静かに前に出て、鋭い目でライアンを見据えた。


「……お前の言う“封印された技術”とは何だ?」


 ライアンは微かに笑い、霧の奥を指さした。


「その答えを知りたければ、ついて来るといい」


「リリアナ?」


 クラリスが不安そうに私の顔を覗き込む。


「……大丈夫」


 私は決意を込めて頷いた。


(王国の未来に関わる何かが隠されているなら、知るべきでしょ!)


 カイル様も少しの沈黙の後、低く息を吐いた。


「……よし、行こう」


 ――――――――――


 ライアンの後を追い、黒い霧の中を進む。


 霧はゆらゆらと揺れ、まるで生き物のように絡みつく。足元の石畳は湿っており、不安定な道を歩くたびに、靴の裏がじっとりと濡れた。


「……魔力が濃い」


 クラリスが眉をひそめる。


「気を抜くな。これは普通の霧じゃない」


 カイル様も警戒しながら進む。


 そして、街の外れあたりまで歩いた――


 すると目の前に、半ば崩れかけた巨大な工房が現れた。


「これは……?」


 私は思わず息を呑んだ。


 巨大なアーチ状の入口は、ひび割れ、崩れかけている。そこに刻まれた文字の数々は、かすれて読めないものもあったが、一部はまだ残っていた。


 《王国第零研究機関》


(研究機関……!?)


「王国が建国された当初、この地には“魔法技術の研究施設”があった」


 ライアンが静かに言う。


「研究施設?」


 クラリスが驚きの声を上げる。

 ライアンは頷きながら、工房の奥を見つめる。


「そう。王国は長い間、魔法と技術を発展させるためにさまざまな魔道具を作ってきた。だが、その中にはあまりにも強大な力を持つものがあった」


「それが“禁忌の魔道具”だ」


 それを聞き、私は言葉がでなかった。


(研究機関も禁忌の魔道具もゲームには出てきてない。世界観の設定として存在するのか、この世界だから存在するのか……もう、わかんないことだらけだよ!)


「……禁忌?」


 カイル様が眉をひそめる。


「そうだ。王国が生まれたばかりの時代、この工房では『膨大な魔力を供給し続ける装置』が開発されていた」

「………………」


 カイル様は険しい顔をして考え込んでいる。

 王子であるカイル様でもこの研究施設のことは聞かされていなかったみたい。


「まあ、ついてこい。案内してやろう」


 ライアンはこの研究施設の構造を知っているのか、奥まで先導してくれた。


 そしてある大きな部屋にたどり着く。


「あれを見ろ」


 ライアンが指さした先に、巨大な石柱がそびえ立っていた。


「これは、かつて“魔力炉”と呼ばれたものだ」

「魔力炉……?」


 クラリスがじっくりと石柱を眺める。


「膨大な魔力を供給することで、都市の発展や結界の強化が可能になる。だが、問題があった」


 ライアンは静かに言う。


「この魔力炉は、膨大な魔力の供給が出来る代わりに制御が難しく、暴走する危険があった」

「だから……封印された……!?」

「そして、“代わりに”別の技術が開発された」


 ライアンは私を見つめながら言った。


「それが、“蒼穹のルーンストーン”だ」

「!!」


 私は驚いた。


(蒼穹のルーンストーン……私たちがルーンフォレストで守った、あの聖遺物)


「王国の魔力供給を安定させるために、魔力炉の代替として作られたのが蒼穹のルーンストーンだ。それと引き換えに、この研究施設の存在は完全に封印された」


 ライアンの言葉を聞き、私は理解した。


(王国は新しい技術を取り入れることで、古い技術を封印した……)


「じゃあ、この黒い霧は……?」


 私は核心に迫るようにライアンを見た。

 ライアンは静かに答える。


「この魔力炉には古代魔法が使われている。そして今、封印が弱まってきて中の魔力が漏れ出してきている」

「……っ!」


 私は背筋に寒気を感じた。


(じゃあ……この黒い霧は……ヴァレンティスが使っていた魔法と同じ力が封印されているから?)


「じゃあ、この封印が解けたらどうなるの?」


 私はライアンを見上げて尋ねる。


 ライアンは少しの沈黙の後、静かに答えた。


「……王都全体が“魔力の嵐”に飲み込まれるだろう」

「っ……!!」


 私たちは言葉を失った。


「待て!」


 シモンが前に出る。


「つまり、このまま放っておいたら王都がヤバいってことか!? どうすりゃいいんだよ!」

「方法は一つ」


 ライアンは工房の封印を指さした。


「封印を“完全に修復”することだ」

「そんなことが、可能なの?」


 クラリスが不安そうに尋ねる。


「可能かどうかは、お前たち次第だ」


 ライアンは私の方を見た。


「特に、お前の魔力があれば……」

「……?」

「リリアナ、お前の魔法力は、封印魔法の強化にも利用できるはずだ」

「……っ!」


 私は驚いた。


(私の魔力で……封印を?)


「選べ、リリアナ」


 ライアンが静かに私を見た。


「この場で封印を修復するか、それとも王宮に戻って別の方法を探るか――どちらだ?」


 私は迷った。

 ライアンの言っていることが真実とは限らない。


 でも――選ばなきゃいけない。


 これは、王国の未来に関わることなのだから。

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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