第39話 霧に包まれた街
私たちは先行部隊のひとつとしてラルフタインへ馬車を走らせる。
シモンが手綱を握り、その馬車に乗っているのは私、カイル様、クラリスだけ。エリオット先生は別動隊を任された。
先生がいないのはちょっと不安ではある。まあ、先生は強力な魔法使いだから仕方ないよね……。
しばらくして――
霧が見え始めたのは、街まであと少しという地点だった。
「……っ、何この霧……!」
クラリスが窓の外を見ながら息を呑む。
「まるで……“生きている”みたいな動きだな」
シモンが慎重な口調で言う。
確かに、黒い霧はただ漂っているのではなく、まるで意思を持つかのように街を覆っていた。
「霧の中に何かいる……?」
私は目を凝らし、霧の奥を覗き込んだ。
すると――
ガルルルル……!!
「――っ!!」
突然、霧の中から巨大な影が飛び出してきた!
「魔物だ!」
カイル様が馬車から飛び降り剣を抜く。
霧の中から現れたのは、黒い毛並みを持つ狼型の魔物だった。
「……っ、これは“黒狼”!」
私は驚いた。
(ゲームの終盤に登場した強めの魔物だ……!)
そんな魔物が10体、私たちを取り囲むようにジリジリと距離を詰めてくる。
「リリアナ、やれるか?」
カイル様が私の方を見る。
「もちろんです!」
私は魔力を集中し、手をかざした。
「――燃え盛れ、爆炎!」
ゴオオオオオッ!!
紅蓮の炎が狼たちを包み込む。
「うわっ、相変わらず派手だな……!」
シモンが目を丸くする。
「……待って、この霧、魔法を阻害する作用があるみたい」
クラリスが霧を分析しながら呟く。
「長引かせると不利になるわ、早く倒さないと!」
「了解!」
カイル様が素早く間合いを詰め、一撃で魔物を切り伏せる。
「私も援護する!」
クラリスが水の魔法で霧を押しのけ、シモンがその隙に敵を斬る。
私たちの連携で、魔物は次々と倒れていった。
「……ひとまず、落ち着いたか?」
シモンが息を整える。
「ええ。でも、この霧はまだ晴れていない」
私は空を見上げた。
(この霧の発生源はどこなの?)
「とにかく、街まで行こう。ライアンもいるはずだ」
カイル様の言葉に、私たちは頷き、さらに霧の奥へ進むことにした。
――――――――――
街の中央に近づくと、霧がさらに濃くなった。
「誰かいる……!」
私は人影を見つけた。
「……来たか」
赤い鎧をまとった長身の男――ライアン・ランツァが、霧の中に立っていた。
「ライアン……!」
「君たちも来ると思っていたよ」
彼は静かに微笑む。
「この霧、貴方の仕業ですか?」
私は迷わず問いかける。
ライアンはゆっくりと首を振った。
「いいや、これは“俺の仕業ではない”」
「であれば、誰がこんなことを……!」
カイル様がライアンを鋭く睨む。
「……俺と共に来るか?」
ライアンは私に手を差し出した。
「俺が導こう。黒い霧の真相を、そして……この王国の真実を」
「黒い霧の真相……? 王国の真実……?」
彼の言うことは正直わかんないことばかりだけど……前に進むしかない!
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