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転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!  作者: 雪見クレープ
第2部 魔法が最強すぎてラスボスにも面白い女認定される悪役令嬢
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第38話 忍び寄る闇

「リリアナ、やっぱりお前がいたほうが楽しいな、ちょっとしたトラブルも起こしてくれるし」


 朝の学院の廊下をシモン、クラリスと歩く。


「そのほうが刺激的でしょ?」


 私は苦笑しながら歩く。


「久しぶりの学院生活はどう?」


 隣にいたクラリスが微笑みながら尋ねる。


「楽しいよ! ……けど、やっぱりちょっと落ち着かないかも」

「やっぱり、王国北部の異変が気になる?」


 クラリスは察しがいい。

 私は小さく頷いた。


「王宮で聞いた報告では、魔物の目撃情報が増えているって話だったわ。

 それに、ライアンも頻繁に北部へ向かっているらしいし……」

「ライアン・ランツァか」


 シモンが渋い顔をする。


「アイツは本当に何を考えてるかわかんねぇよな」

「ええ……彼が王国のために動いているならいいけど、どうも腑に落ちないのよね」


(ライアンの動き、黒い霧、ルーンストーンの存在……)


 繋がっているはずなのに、まだ核心には辿り着けていない。


「お前、また考え込んでるな?」

「……そんなことないわ」


 シモンにじっと見られて、私は慌てて誤魔化した。


「授業中もボーッとしてたものね」


 クラリスがクスクス笑う。


「もう、二人とも!」


 気になることもあるけど、やっぱりみんなといると楽しいし、気が晴れる。


「……君が学院にいると、やはり賑やかになるな」


 静かに響いた声に、私はハッとする。


「カイル様……」


 振り向くと、カイル様がいつもの優雅な笑みを浮かべていた。心なしか、視線が優しく感じる。


「……最近の君は少し無理をしているように見える」

「……っ」


 カイル様の言葉に、私は一瞬言葉を詰まらせた。


「王宮での任務、北部の異変、ライアン・ランツァの動向……色々と考えていることはわかる」

「カイル様……」

「でも、君は一人で背負い込みすぎだ」


 彼の言葉は、心の奥にすっと入り込んできた。


「君には僕がいる。クラリスやシモンもいる。……一人で抱え込むな」

「……はい」


 私は小さく頷く。


「ほらな、やっぱり悩んでたんじゃねぇか」


 シモンが笑いながら私の肩を叩く。


「私たちは仲間でしょう? もっと頼ってくれていいのよ」


 クラリスも微笑んだ。


(そうよね……私は一人じゃない)


 仲間たちの温かい言葉に、私はようやく肩の力を抜いた。


 ――――――――――


 平和な時間は、突如届いた報せによって終わりを告げる――

 授業中、学院の門の方でざわめきが起こった。


「な、なんだ?」


 私たちが顔を上げると、学院の入り口を駆け抜けてくる使者の姿が目に入った。


「急報だ! 王宮からの緊急命令!」


 教員たちが慌ただしく使者を迎え、何やら深刻そうな顔をしている。


「……これはただ事ではないな」


 カイル様が立ち上がり、その場へと向かう。


「なんだか嫌な予感しかしないわね……」

「まあ、ここはカイル様にお任せして私たちは待ちましょう」


 クラリスの言う通り、今私たちが慌ててもしょうがない。


(でも、なにがあってもいいように心構えだけはしておこうかな……)


 そして、使者の報告を聞いたカイル様が落ち着いた声で内容を知らせてくれる。


「黒い霧が発生したそうだ。リリアナ、僕たちに王宮から緊急の呼び出しがかかった」

「――! わかったわ……!」


 カイル様の言葉に、私は反射的に立ち上がった。


「俺も行くぞ!」

「私も王宮に行きます!」


 シモンとクラリスもすぐに身支度を整える。


 私たちは急ぎ王宮へ向かった。


 ――――――――――


「待っていた、リリアナ」


 王宮に到着すると、先に来ていたエリオット先生が待ち構えていた。


「何が起こったんですか?」

「王都の近郊で、黒い霧が発生した」

「――!!」


 王宮軍務局――


「発生場所は南部の貿易都市ラルフタイン。霧とともに、魔物が目撃されている」

「王都の近くにまで……!?」


 私は信じられない思いで地図を見つめる。


「すでにラルフタインでは霧が広がり、住民の避難が始まっている。しかし、霧の発生源が特定できていない以上、根本的な対処は難しい」

「これは、もはや小規模な異変ではない。王都そのものが狙われている可能性がある」


 エリオット先生が低く言い放つ。

 騎士隊長がそれに続く。


「王宮はすでにラルフタインの調査のため、ライアン・ランツァ率いる偵察隊を派遣した」

「!!」


 思わず息を呑む。


「ライアンが……?」

「軍務局の判断だ。彼の戦闘能力を考えれば、適任だろう」


 カイル様が静かに言う。


「……ですが、彼は信用できません」


 私ははっきりと言い切った。


「彼が本当に王国のために動いているのならそれでいい。でも、もし何かを企んでいるのなら……そこでライアンの動向を確認しよう」


 カイル様も王子としての立場がある。

 なにが優先なのかの難しい判断をしなければならない。


「もちろん、私も行くわ! 黒い霧の発生源を探るために、私の魔法の知識が役に立つかもしれない」


 クラリスが力強く頷く。


「俺も行くぜ! 霧の中で魔物が出るなら、剣士が必要だろ?」


 シモンが拳を握りしめる。


「それに、ライアンが敵か味方か、見極めてやる!」

「……ありがとう、みんな」


 私は改めて仲間たちに感謝し、深く頷いた。


(王都の近郊にまで黒い霧が迫っている……。誰の仕業であろうと、この平和を守ってみせる)

読んでいただきありがとうございます!


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