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転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!  作者: 雪見クレープ
第2部 魔法が最強すぎてラスボスにも面白い女認定される悪役令嬢
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第35話 魔将VS最強令嬢

「双方、構え! 始め!」


 訓練場に響き渡る騎士隊長の声。

 その合図とともに、私とライアン・ランツァの模擬戦が始まった。


「……君から来るか?」


 ライアンは剣を片手に持ち、余裕の表情を崩さない。

 まるでこの勝負が「遊び」かのような余裕が滲んでいた。


(ほんとにこの人、油断ならない……)


 対する私は杖を構え、魔法の発動準備を整えながら、彼の動きを観察する。


 私の目的は、力を誇示することではない。

 ライアンは私の実力を測りたいだろうし、私は彼がどこまで本気なのか知りたい。


 ――だから、ここでは本気を出しすぎてはいけない。


「では……」


 私は静かに息を整え、手を前にかざす。


「まずは、挨拶代わりに――」


 シュバッ!


 次の瞬間、炎の刃を生成し、一気にライアンへと振るった。


 ――ゴォッ!


「……ふむ」


 ライアンはそれを見て、軽やかに一歩後退し、紙一重でかわす。

 まるで、すべての動きを見透かしているかのような身のこなしだった。


(さすがに、一撃では当たらないか)


「それが君の攻撃か?」

「いえ、まだまだ……これならっ!」


 私はすぐさま足元の地面に炎を放ち、爆風を利用して距離を詰める。


「――ッ!」


 ライアンの表情が一瞬、わずかに変わる。


(読めなかった!?)


 今度は魔力を圧縮し、槍のように変化させる。


「フレイムランス!」


 燃え盛る炎の刃が、一直線にライアンを襲った。


 しかし――


「……悪くない」


 ライアンは寸前で剣を横に振り、炎を切り裂く。


 ズバッ!!


「!!」


 剣圧で炎が二つに分かれ、まったくの無傷で立っている。


(この人、やっぱり……!)


 単なる防御ではない。

 まるで炎が当たる前提で、その軌道を変えたような動きだった。


「君の攻撃は大胆だな」


 ライアンは微笑を浮かべる。


「だが、それが“見えやすい”という弱点にもなっている」

「……ッ!」


 確かに、私の魔法は威力が強い分、派手すぎる。

 故に、相手に読まれるリスクも高くなる。


「つまり、速さが足りないと?」

「いや、発想だ」


 ライアンは剣を肩に乗せ、じっと私を見つめる。


「君の強さは魔法の威力にある。ならば、それをどう活かすべきか――考えてみろ」

「………………」


 あんなやつに教わるのはシャクだけど、彼の言葉が、頭の中に深く染み込んでいく。


(私は確かに魔法が強い……なら、それをもっと“違う形”で使えれば?)


 私は拳を握りしめる。


(そうだ……!)


 ――次に、私は魔法を“見えない”ように放った。


「……ッ!?」


 ライアンの目がわずかに見開かれる。

 次に私は炎を放つ構えをした。


「ッ!」


 ライアンが直感で横に跳ぶ。


 だが――


 ドンッ!!


 突如、彼の背後の地面が爆ぜた。


(やった……!)


 私は魔法を使う“フリ”をして、別の場所に熱を集め、時間差で爆発を起こしたのだ。


 炎を飛ばすよりも、もっと単純な爆発攻撃。

 けれど、それを読ませなかったことで、ライアンは一瞬の遅れを生んだ。


「なるほど……」


 ライアンは冷静に立ち上がると、息を吐いた。


「これは……私の負けだな」


 ――勝った!?


 訓練場にいた騎士たちがどよめく。


「ランツァ卿が……?」

「リリアナ様が勝った……?」


 私は軽く息を整えながら、ライアンを見つめる。


「……本当に負けを認めるんですか?」

「もちろんだ」


 ライアンは微笑を浮かべ、剣を鞘に収めた。


「君の力を見誤っていた。……正直、君がここまで考えて戦うとは思っていなかった」


(なんかすごく馬鹿にされてる気がする……!)


 そのままライアンは微笑を崩さない。


「ただの火力だけではなく、発想力もある。君は想像以上に厄介な相手だ」

「お褒めいただき光栄です」


 私は皮肉っぽく言いながら、わずかに肩の力を抜いた。


(ふう……よかった……)


 手の内を見せないまま、それでいて確実に勝利する方法を探る。

 それはうまくいったかな……。


 ライアンはふっと笑いながら、私に近づいた。


「戦いとは、戦力だけでは決まらない。時には、交渉や駆け引きも必要だ」

「それは理解しています」


 私はライアンをじっと見つめた。

 すると、彼はわずかに口角を上げる。


「ならば、次に君がどう動くか……楽しみにしているよ」


 そう言い残し、彼はその場を去っていった。


 こうして、私とライアンの模擬戦は幕を閉じた。


「……はぁ」


 私は軽くため息をつきながら、訓練場を後にした。


(ライアン・ランツァ……)


 彼は確かに強かった。

 でも、それ以上に「底が見えない」。


(何を企んでいるの……?)


 私は拳を握りしめる。


 次に彼と相対する時は、正面からの戦いではなく別の形になるかもしれない。

 けれど――私は、私たちは勝つ。

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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